喧嘩をふっかけられた
学校にも大分慣れてきて、何処になんの教室があるのか把握できてきた。
と言っても、これまで使ったことのない教室は知らないわけで、特に他学年の教室とか、廊下にはあまり行く機会がない。
今の所、上級生に関わる授業はないから。
その日、僕はメリアとリゼのお馴染みの顔ぶれと共に、廊下を歩いていた。
入学して友達も増えた。
当然男友達もいるのだけど、やはり仲が良いのはこの二人だ。
今では気兼ねなく話せる仲になっているし、二人とも僕の家に遊びに来ることもある。
そう言えば、まだリゼの家には遊びに行ったことがない。
そのうちお呼ばれすることもあるかもしれないが。
「それにしても、下位のポーションの素材で上級並みのポーションを作ってしまうのは凄いね」
話題は僕がこの間作ったポーションに関するものだ。
このポーションをどうするかは伯父さんも頭を悩ませているらしく、実用化の目処は立っていない。
せっかく作ったのだからなんとか有効活用してほしい。
「だけど、自分で自分を怪我させて実験するなんて、ホント無茶よ。お腹なんて紫色に腫れてるし、顔色真っ青だし、心配したんだから」
「その節は大変お世話になりました」
僕は頭を下げてメリアにお礼を言った。
母さんにあのことを黙っていてくれたことにも感謝だ。
僕はなんだかんだあって母さんには頭が上がらないから。
「アルフは話題には事欠かないね」
リゼはクスリと笑うが、僕はトラブルメーカーみたいになっているのではなかろうか?
今世では平穏に過ごしたいのに、僕はどうも目立ってしまうようだ。
僕の性分が原因なので自業自得ではあるのだけれど、望んでトラブルを呼び込んでいるわけではないのだが。
歩いていると、ある生徒と目が合った。
この学校は学年によってつけているネクタイの色が違って、僕達の学年は緑色。
目が合った生徒のネクタイは赤。
これは二年生の色だ。
つまり、この人は二年生ってことなんだけど、目が合ったのは偶然だろうと思った。
相手は上級生なので、軽く会釈をしてそのままスルーしようとした。
すると、この上級生は位置をずらし、僕達の進路を故意に妨害した。
僕は首を捻る。
「なんですか?」
「お前がアルベルトだな?」
んん?
僕を知ってるのか。
上級生がなんで一年の廊下にいるのかと思ったらこの人、もしかして僕に会いに来たのだろうか。
改めて見ると、背も高くてかなりの筋肉質。
魔術師と言うよりも剣士が似合いそうな体形をしている。
顔は・・・厳ついな。
僕を睨んでいる。
僕に対してあまり、良い印象は持ってないようだけど、僕この人に会ったことないよな?
なんで睨まれてるんだろう。
「アルベルトは確かに僕ですけど、何か御用ですか先輩」
取り敢えず、上級生なわけだし、敬語を使って下手に出ておいた方がいいかな。
「入学初日からあれこれと派手にやって調子に乗ってるらしいじゃあねーかよ、おい!」
「はい?」
何を言っているんでしょうかこの人は?
入学初日ってあれか、クラウスと揉めた件だな。
それ以外にもあれこれあった気がするけど、調子に乗ったつもりは・・・。
まあ、そう見えちゃったのかも知れないけど、この人は僕がいい気になってると思って釘を刺しに来たのかな?
「いい気になってはいませんが、目立ってしまっていたかも知れません。気をつけます」
僕は背筋を伸ばして頭を下げた。
先輩は気をよくしたのか、口元を緩めてニヤついた後で口元を引き締める。
「わかってるじゃねーか。だが、お前みたいのは一度キッチリとシメておかないといけねえ」
危険な言葉を帯びてきた。
メリアが咄嗟に前に出て僕を庇う。
「アルフに何をするつもりですか?」
先輩は面倒くさそうにした後で、僕を嘲笑う。
「はん! おいおい、女に庇われてお可愛い奴だな」
「彼女は僕の大事な友達です。変な言い掛かりはやめて下さい」
「ふん」
先輩はメリアに向けていた視線を僕に移す。
だが、それはメリアを油断させる罠だった。
外した視線をすぐにメリアに戻し、いきなりメリアのスカートをめくった。
「あ! きゃ!?」
「はっ! 気取ってんじゃねー」
僕はさっと顔を背ける。
しかし、バッチリと見てしまった。メリアの下着。
ぼ、僕は紳士だ。
見てない、何も見てないぞ。
それにしてもこの先輩ちょっとやり過ぎだから、これはメリアがやられた仕返しも兼ねて、お灸をすえないといけないな。




