アルフ十五歳
そうか、そういうことだったのか。
なんでこんなにも魔術を知りたいと思っているのか。
どうして、頭がいいのか。
それは僕が転生して、前世の影響を受けていたから。
そして今、記憶が戻った。
でもまだ、完全じゃない。
思い出したのは、お父さんが死んだ時、お母さんを助ける為に記憶を代償に魔力を使った為に、前世の記憶を忘れたってこと。
前世の僕は(多分)凄い魔術師だったってこと。
だから、今僕が凄いのは前世の知能と知識が影響しているからで、自惚れるなって頭痛という形で警告してたってこと。
それに簡単な魔術だけだ。
前世でどんな生涯を送ったとか、そもそも名前も思い出せない。
思い出したきっかけはこの魔法陣だ。
魔術に触れて、それをスルーして帰ろうとしたから僕の中の前世の想いが、『行くな!』って叫んだんだ。
「とすると、この魔法陣の効果じゃないってことなんだよな?」
うーん。
中途半端に思い出した知識だけじゃ、これが何なのか、さっぱり解らないや。
「よし、ここにはまた来よう。何時でも来れるんだし」
また出ようとしたら、あの頭痛がするかな?
うう~、あれ嫌だなぁ。
でも、それでまた思い出すなら悪くは・・・いや、やっぱり嫌だ。
でもこれ以上遅くなるとお母さんがなぁ。
「あ、そうだ!」
これだけは試そう。
思い出した簡単な魔術式。
そして、五歳の僕の小さな魔力。
これを使って、強く念じる。
「出ろ!!」
ぽっ。
指先から火が出現した。
「や、やったぁーーー!!」
マッチの火くらいの小さな火だけど、出来たぞ、魔術が使えたぞ!
「やった、やったやったやった! うひょーーー!」
喜びのあまり、ぴょんぴょんと飛び上がっていると、いつの間にか魔法陣の外へと出ていた。
「で、出てしまった。でも、頭痛はないな?」
一応少しは思い出したから前世の僕も満足したのかな?
それとも、魔術を使えたからかな?
「まあ、どっちでもいいや。早く帰ろう」
こうして僕は今度こそ家へと帰った。
帰ったら勿論、お母さんは凄く心配してて、滅茶苦茶怒られた。
それから僕は、何度もこっそりと遺跡に足を運び、この遺跡が何なのか、独自で研究を始めた。
残念ながら広間の奥には新たな通路はなく、この魔法陣も何なのか、今の僕には解らなかった。
同時に魔術の訓練も始めた。
最初は何にも役に立たない(火はマッチの代わりになるけど)魔術しか使えなかったけど、試行錯誤と歳を重ねるごとに、魔力のキャパシティーが増えて、使える魔術も威力も増えて行った。
そして、十年が経った。
漆黒といっていいほどの黒髪に、年の割に童顔で低めの身長なくせにどこか達観したようは雰囲気のイケメン。
それが僕、現在十五歳。
「ふぅ~~」
僕は例の遺跡の近くの開けた広場で、魔術の練習をしていた。
ゆっくりと魔力を集め、魔術を制御、そして、その力に色(属性)を付けて、外へと放出。
ザザザザ!
辺りの木々が激しく揺さぶられ、強い強風が僕を中心に吹き荒れた。
「よし」
突風を起こす風の魔法。
どうやらうまくいったみたいだ。
「次」
僕は大きな岩に向き直ると、手を上にあげて、それを大きく振り下ろした。
シュっと風切り音がして、風の刃が岩に命中。
剣で斬りつけたくらいの傷が出来た。
「いい感じだな」
中途半端に記憶が戻って十年。
魔術の威力も制御も大分上手くなった。
狩りに出かけるいう理由付けをして、僕はちょくちょく遺跡へと向かい、コツコツと訓練を続けている。
記憶が戻ってくれればいいと思うけれど、ただ待つ時間は勿体ないし、僕自身も魔術に対する思いは強い。
これが、僕自身なのか前世の記憶なのかは判らないけど、半々といったところかな。
ガサリと音がしてそちらを見ると、ウサギがぴょんと姿を現した。
さっきの強風でびっくりして出て来たのかな?
僕は魔力を手に集中させる。
「悪いね。外に出た言い訳と、僕の夕飯になってくれよ」




