遺跡
「さて、お母さんが心配しないように早く帰るか」
ゼクスとの密約を済ませ、僕は岐路に就く。
急いで帰ろうと思って、近道である獣道を通ることにした。
いつもは危ないからって止められているんだけど、いいよね?
ガサリ。
何かがいる。
僕はドキリとして、音がした方を見ると、藪からウサギが現れた。
「なんだウサギかぁ」
ん、このウサギ、獲って帰ればお母さん喜ぶかな?
僕でもウサギくらいならなんとかなるかも?
よし、捕まえるぞ!
「よーしよし。動くなよー?」
僕は腰を落としてじりじりとウサギに近づいた。
ただならぬ気配を感じたのか、ウサギはぴょんと跳ねて行ってしまう。
「あ、待て!」
くそ、やっぱりウサギは足が速いな。
僕じゃ追いつけないか?
頑張れ、頑張れ僕!
そう自分に言い聞かせ、走り続けたけど、結局ウサギには逃げられた。
僕は息を切らせ、その場に座り込んだ。
「はぁはぁ。やっぱり無理かぁー」
もうちょっと大人にならないと無理かな。
その時はやっぱり弓か魔術を習わないと。
「ん? ここ何処だ?」
戻ろうとして、辺りを見渡すと、そこは知っている景色じゃなかった。
あれ、僕もしかして迷子になった?
うああ、大変だ。
遅くなったらお母さんに怒られる。
僕は自分の足跡を探した。
落ち着け、石畳を歩いて来たわけじゃない。
見つかるはずだ。
「あった!」
僕の足跡だ。
これで帰れる。
ほっと胸を撫で下ろし、僕は足跡を辿った。
それにしても、随分森の奥の方に来ちゃったんだな。
この辺りの景色、全然見覚えないや。
しばらく歩いていたら、あるものが僕の視界に入った。
「なんだこれ? 遺跡、かな」
そう。
それは石で出来た建造物。
そびえ立っているわけじゃなく、門として建てられたみたいだ。
「この先に、何かあるのかな?」
いやいや、帰った方がいい。
お母さんが心配するぞ。
で、でも。
僕の探求心がどうしようもなくこの遺跡に惹かれてしまう。
少し、ほんのちょっとだけ。
絶対不味いと思いながらも、僕は遺跡の中に足を踏み入れた。
洞窟の中だっていうのに、そんなに暗くないぞ。
「なんだよぉ。すぐに帰るつもりでいたのに、これじゃあ進めちゃうじゃあないか。はは!」
誰に言い訳しているんだ(自分です)僕は先に進む。
それにしても、なんでうっすらと明るいんだろう?
そうか。
この壁か。
この壁自体が光を発しているんだ。
僕はさわさわと壁を触る。
触っても、手に何かが付着しているわけじゃないな。
なんなんだこれは?
王都だとこういう壁も珍しくないのかな?
僕はおっかなびっくりといった感じで奥へと進む。
そうするとずっと通路だったのに、開けた場所に出た。
「お、お邪魔しま~す」
もし誰かいたらどうしよう?
胸がドキドキと高鳴る中で、僕は恐る恐る広間へと入る。
するとそこには巨大な魔法陣があった。
「ま、魔法陣? ってことはこれって魔術!?」
凄い凄い凄い!
本物の魔術だ。
初めて見た。
僕はかつて無いほどに興奮していた。
「い、一体なんの魔術なんだろう?」
この魔法陣の中に入っても大丈夫かな?
つんつんと、端っこの魔法円をつつき、何もないことを確認すると、僕はゆっくりと中へと入り、真ん中まで来た。
「特に、何も起きないか・・・」
ふ~。
拍子抜けというか、安心したというか。
でもなんなんだろうこれ?
既に起動した後なんだろうな。
今では意味のないものなのか。
「あああ! しまった。帰らないと!」
やばいやばいやばい。
お母さんに怒られる!
僕は魔法陣から出ようとすると、これまでに無い程の頭痛が襲ってきた。
「ぐああああああああああああああああああああ!!」
い、痛い!
なんだこれ、何が起こったんだ?
魔法陣の効果?
いや、多分違う。
今までにもあった頭痛だ。
でも、今は自惚れているわけでもないし、頭痛になる要因がない。
それとも本当に神様が頭痛を起こしてるのか?
この遺跡に入ったからお仕置きをしているのか?
そんな馬鹿な。
「ぐあ、あぁ。い、痛いよぉ」
痛すぎる。
死ぬ。
死んじゃう!!
バシュンといった音が、頭の中でした気がして、視界が真っ白になった。
そして、
頭痛が治まり、僕はゆっくりと顔を上げた。
頭痛の治まった瞬間、理解した。
解った。
解ってしまった。
「僕は、前世の記憶がある。あったんだ」




