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異世界で俺は諦めない  作者: カミサキハル
異世界導入編(六日目、VS粛清機械)
78/90

幕間(模擬戦場までの路上)

 ムツミを実験室に寝かせ、模擬戦場へと向かいながら俺は考える。

 これから始まるナナミとの勝負のこと。

 自分自身のスキルは当てにできない。

 発動できるのは「成長する力(刀剣)」のスキル「ヴュルテン剣術(基本)」のみ。ナナミとの勝負に「背水」は発動しない。

 ムツミ――アゾットと戦った時に発動していた、条件付きの「ヴュルテン剣術(中級)」も確認してみたけど、グレーアウトでの表示となっていた。

 発動できないということだろう。


 スキルについて、機械との戦いでは「背水」は発動していなかったけど、思った以上に楽に戦えた。

 それはたぶん機械が単純に最短で殺しにかかる攻撃だったから。迷いのない攻撃を避けるのは簡単だった。


 ナナミとの勝負(今回の勝負)は違う。

 朝に鍛練をしていたし、手の内を知っている相手。戦いづらい。

 それにナナミは全力で戦ってはいなかった。師範と生徒みたいな立場で剣術を教えてもらっていた。

 ということは俺にとって知らない攻撃が必ずある。

 魔法についても魔剣フルンティングの「鎌鼬(かまいたち)」しか知らない。他にも魔法があると考えた方がいい。


 まだ時間がある。頭の中を整理しよう。


 彼女の動きを振り返る。

 朝の鍛練で剣を交えた時、彼女の動きはどんなものだったか。

 勝負を想像する。俺が彼女に合わせ、どのように動けばいいのか。

 魔法を使った時、俺は何を考えて対応すればいいのか。

 オハバリを使って魔法を発動し、防御か回避をするべきか?


(……いや)


 否定する。ナナミは俺がオハバリを持っていることを知らないはず。

 奥の手として使った方が不意を突けるか?

 驚いて手を止めるかもしれないし。

 その間、魔法はミズカネを用いて描かないと使えないけど、もともと描く魔法には慣れていないから使うことはないだろう。

 ムツミから借りているトツカのツルギを使おう。


(そういえば)


 脳内でシュミレートし、ある程度形になった時ふと思う。

 どうしてそこまで考える?

 ナナミを助けたいからか?

 違う気がする。その気持ちはムツミの「ナナミ様を助けたい」という言葉に感化されたからだ。

 俺自身の根底の気持ちではない。


(……ああ)


 少し考え、思い出す。ナナミと魔物を狩りに行った時のこと。

 気持ちにスイッチが入って躊躇わず魔物を殺した。

 あの時は「死にたくない」という一心だった。今の気持ちはそれに近い。

 負けたらムツミに殺されるからか。そのために一心不乱になろうとしている。


 単に自分自身の思いのために戦う。死なないために勝つ。そしてそれはムツミの望んでいることに繋がる。勝つことが最善な結果になると思う。


 俺もバッドエンドにはなりたくない。全てをハッピーエンドで終わらせるために、ナナミに勝つ。


 それだけだ。

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