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異世界で俺は諦めない  作者: カミサキハル
異世界導入編(六日目、VS粛清機械)
74/90

VS機械(人型)

「……なぁ、蜘蛛型はなんか武器が多くないか?」

「……そう、ですね」


 実物を見て言葉を失う。さっき見た画像と比較をする。

 八つの足と目。それは変わっていない。異なっているのは装備されている武器数。足やら胴体の側面にアクセサリーのごとく銃器を取り付けている。

 銃器を取り付けたためか、足が心なしか太くなっているように見えなくもない。


「ナオヤも気をつけた方がいいですよ。人型も違っています」


 言われて人型を見る。一見何が違っているのか分からない。


「手の武器です」


 もう一度見る。画像では確かハンドガンを握っていた。目の前の人型は手を含めた腕と剣が同化している。

 二体の剣の色に違いがある。片方は白色の剣、もう一体は黒色の剣。

 二体とも完全に近接特化型になったようだ。

 遠距離攻撃が消えた分、戦いやすくなったか?


(いやいや)


 楽観視しすぎだ。そんな自分に有利になるようなことを考えていたら駄目だ。

 侮って、最後には死ぬ。

 それに今、奴らは俺たちを敵と認識し、視線をこちらに向けている。

 いつ仕掛けられてもおかしくはない。俺とムツミ、どちらかに目標を定められる前にこっちから動かないと。


「行きますっ」


 声をかけられ、ムツミが蜘蛛型に向けて駆け出す。先に動いた彼女に反応して人型、蜘蛛型の両方が行ってしまったら俺の出番がないどころか、彼女の命が危なくなる。

 すぐに俺もオハバリを構えて二体並んで立つ人型へと接近する。

 刃の届く範囲まで近づくが、人型に動きはない。俺は躊躇わずに一体の頭に向けてオハバリを振り下ろす。

 だけど直前で両腕を頭上で交錯させ、受け止められる。


――魔剣を検知……しばらく接触を継続してください。


 魔剣を検知だと?

 どうしてそんなものが反応しているんだ?


「何だよこれって……うおっ!?」


 唐突な通知に意識を向けていたせいで、もう一体の動きを見ていなかった。

 視界の端で俺の胴に横薙ぎで剣を振っているのが辛うじて見え、つばぜり合いを止めとっさに身を屈めた。

 頭上を通り過ぎる剣。それを確認してから俺は人型から距離を取る。

 危なかった。一歩遅かったら真っ二つされていた。

 頬を伝う汗。手の甲で拭い、集中し直す。

 気を抜いたら駄目だ。気を抜いたり油断したりすれば、それは死に直結する。

 敵の位置を確認する。並んで腕の剣を俺に向けている。

 すぐに襲ってこないのは、俺の行動パターンが分からないからか?

 様子見といったところだろう。


(とりあえず……)


 敵の動きに注意しつつ、さっきの通知について考える。内容から推測して、人型自体もしくは同化している剣が魔剣だということになる。

 目の端に表示された項目を見る。検知は中断されたけど、五パーセントほどプログレスバーが進んでいた。これが百パーセントになれば何かが起きる。

 似ているのはクルタナを破壊した時。情報を読み込んでいる時のオハバリの動きだ。

 これと同じ可能性がある。


 だとしたら、これは使える。


 剣を壊すことができれば攻撃範囲が狭まるし、胴体を一部でも壊すことができれば行動を制限させることができる。

 そのためには白兵戦を続けることが重要だ。

 二体の人型も識別するか。剣の色で呼ぶのが分かりやすいな。

 魔剣を検知したほうを黒型、残りを白型と呼ぼう。


 黒型に剣先を向ける。こっちを先に戦闘不能にさせる。

 剣先を向けたことに反応したのか、黒型が俺に接近してきた。その背後には白型が続いている。

 見えにくい白型の動きには注意。不意を突かれたらそれは致命的なことだ。見えないからといって油断はしない。


 考えている間に黒型が刃が届く範囲まで接近し、俺に剣を振り下ろす。俺はその剣に対してオハバリを振り上げる。攻撃は軽い。簡単に弾き返すことができた。

 そしてその場から離れる。直後俺がいた場所に黒型の背後から現れた白型の剣が通過した。想定していた動き。その場に留まるような行動は控えたほうがいい。


 視線を下に向ける。視界の端に表示されているパーセンテージは「十」となっている。まだ先は長いな。

 動きは止めず、続いて頭に魔法をイメージ。相手は機械だから雷撃を考える。


――漢字「雷」「球」を検知しました。魔法が使用可能です。


 即座に魔法を発動する。オハバリの切先に丸い電気を帯びた塊。


「はっ!」


 オハバリを振い、雷の球を飛ばす。攻撃対象は俺に対して背を向けている白型。

 背後からなら攻撃が見えないし、当てることができるはず。


「!」

「ちっ」


 だけどそう簡単にはいかなかった。魔法を感知したのか振り向きざまに剣で球を分断した。視覚の外からの攻撃も反応できるのか。これは厄介だな。人型だから頭があるけど、人間と同じように「目」で周囲を把握していない。


(そもそも機械だから人間と同じ構造にする必要がない、か)


 人間の形を模しているだけ。中身は全く違うことを改めて認識。魔法の感知のための何かが備わっていると考える。そして黒型も同様の構造だと推測。便利な機能を片方だけに備わっているとは思えない。


(だけど)


 魔法は牽制に使うことができるか。一瞬でも動きを止めることは可能だ。それに数的不利な状況なら、遠近ともに攻撃のバリエーションを増やすべきか。

 一体は接近戦で、残りは距離を取るように意識をして。

 同時に二体と戦うなんて無理だからな。


――スキル「一撃離脱」より、派生スキル「乱戦(孤軍)」を習得しました。


 乱戦(孤軍)。これはナナミが持っていたスキルだ。確か一対多で戦うことで習得する、一撃離脱の上位スキル。


――習得スキルより多数の相手と戦う際、思考判断、行動が早くなります。また魔法の威力も上昇します。


 若干だけど敵の動きが遅く見える。俺の動体視力が速くなったからか。「背水」が使えない今、俺にとってありがたいスキルだ。

 詳細は確認しない。敵が待ってくれるはずもない。

 現に今も二体が並走して接近してきているし。


(魔法を使う余裕はあるか)


 頭に漢字を思い浮かべる。


――漢字「土」「槍」「上」「数」「六」を検知しました。魔法が使用可能です。地面にオハバリを突き立ててください。


 言われた通りに行動。オハバリを突き立て、魔力を込める。目標は白型の進路上。土の槍だから刺すことは叶わないだろうから、あくまでも突き上げるように地面から突出させ、妨害するだけ。

 目先の地面に赤い円。計六ヶ所。三つずつ二列で表示されている。あそこに槍が出るのか。白型が俺に一番近い列の赤い円を踏むのに合わせ、俺は魔法を発動。


「!?」


 地面からの魔法はすぐに感知できなかったのか、白型は急ブレーキし後退する。しかしそこにも俺が仕掛けた土の槍。白型はさらに後ろに下がる。

 これで白型との距離はできた。しかも警戒しているのか、すぐに襲ってこない。

 一方で黒型。白型に起きたことには構わず俺に接近している。俺よりも向こうが仕掛けるほうが早いか。地面からオハバリを抜き、黒型に対して構える。

 黒型が剣を振り下ろす。俺はその剣をオハバリを水平にし受け止める。受け止めた瞬間に火花。弾き返すことはしない。今は検知しているパーセンテージを上昇させることが先だ。想定通り、プログレスバーが一気に進んでいく。


――検知率九十……百。魔剣を特定。魔剣「クラウ・ソラス」です。魔剣破壊を実行しますか?

「当然っ」


 オハバリの問いかけに頷く。オハバリからは「実行許可を確認……」と頭の中で流れる。

 黒型の装備する剣に亀裂が走った。


「!!」


 亀裂を検知したらしく鍔迫り合いを止め、黒型は距離を取った。黒型の剣はオハバリの刃が交わっていた箇所が欠けている。

 惜しい。あと少しで剣を壊すことができたのに。

 まあ、あと一度触れさせることができれば問題ないか。

 畳み掛けるため、俺は黒型に向けて一歩踏み出す。

 直後、背後から背後から空気を振動させる雷鳴が轟いた。驚いて振り向くと、そこには倒れた蜘蛛型の機械の上に立つムツミの姿。

 そしてその足元の蜘蛛型の砲身は光り輝き、俺の方を向いている。


「ナオヤっ! 避けてっ!」

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