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異世界で俺は諦めない  作者: カミサキハル
異世界導入編(六日目、地下)
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魔剣の魔法

 オハバリを正眼に構え直す。今回ムツミと勝負する目的は、オハバリを上手く扱えるかどうかを確認するためだ。

 漢字をイメージして魔力を込めると魔法が使える、とは説明があったけど実際にやってみないと分からない。

 ……勝負して試すとムツミは言ったけど、その前に使えるかどうか確認したいなぁ。


「ムツミ」

「はい」

「勝負の前にちょっと魔法を使ってみるから、受け止めてくれ」

「私は実験動物か何かですか……まあ、分かりました。どんな属性の魔法を使うのですか?」

「水」

「……私をさらに濡らす気ですか?」


 言われて気づく。さっきアゾットに対して使った魔法も水だったな。ムツミは全身を濡らしている。アゾットと同じ体を共有する彼女が濡れていることは当然だ。

 そういえば、ムツミに対しては水の魔法しか攻撃をしたことがない気がする。


「じゃあ火の魔法にしようか? もしくは雷」

「決まった属性はないのですか?」


 そういえば魔剣は所有者によって属性とかが決まってるんだったっけ?


「ないな。俺が想像した漢字の魔法が発動するらしい」

「なんですか、その魔法を使うことに特化した魔剣は?」

「便利だろ」

「自慢しないでください……」


 頬を膨らます。羨ましいらしい。固定された魔法しか使うことができない魔剣と比べたら、便利で使い勝手が良く見えるのか。

 羨ましく思われてもな。俺の魔剣の特徴だし、どうすることもできない。


「で、どうする? 今ならムツミが受けたい魔法を使うことができると思うぞ」

「私はそこまで自虐思考ではありませんよ……水魔法でお願いします。一番安全な魔法になる気がします」


 安全……まぁ、水なら火傷や感電はしない。そう考えると怪我をすることはない。

 俺が加減を誤ることがなければ、顔を覆って窒息することもないはず。


 たぶん。


「不安そうな顔はやめてください」

「大丈夫、大丈夫」

「……軽いですね」


 ため息を吐いてムツミもクルタナを構える。彼女も準備はよさそうだ。

 俺は頭の中で漢字を思い浮かべる。強い攻撃をする訳ではないから「淼」ではなく「水」で十分だ。

 けどこれだと何かが足りない。物足りないというより、何か欠けている。


(ああ、そうか)


 少し考えて気づく。魔法は火、水などの属性を表す漢字だけではない。剣や槍などの物資漢字、斬や射などの動作漢字があった。その他方向などを示す漢字も。

 それらを含めて魔法だ。

 単にイメージする漢字が少ないから、欠けていると感じるのだ。

 だったら思い浮かべる漢字を増やせばいい。

 とりあえず「水」「斬」「前」か。思い浮かべる漢字の順番も意識する。

 漢字をイメージするだけと言えど、順番を間違えたら何が起きるか分からないし。

 基本に忠実な方法で魔法を使おう。


「ムツミ、行くぞ」

「いつでもどうぞ」


 俺は漢字を想像しながら魔力をオハバリに込める。


――漢字「水」「斬」「前」を検知しました。魔法が使用可能です。発動させてください。


 頭に響く。なるほど、魔法を発動したらこういう風に通知が来るのか。

 だけどこれ、どうやって発動するんだ?

 とりあえず「発動」って念じてみるか。


(お?)


 ミズカネを使って魔法を発動した時と似た感覚。魔力が体からオハバリに流れていき、続いてオハバリの剣身が水を纏っていく。

 十分に水を纏い、俺はオハバリをムツミ向けて袈裟懸けに振るう。剣身の形をした水の刃が彼女を襲う。

 彼女は難なく水の刃をクルタナで弾いた。威力が弱かったか。でも試しで使った魔法だから発動できたことだけで十分な結果。


「思っていたよりも攻撃が重いですね」


 弾いたときに痺れたらしく、手を振って治している。そんなに重い攻撃だったのか。


「もう少し魔力量を減らすか」

「いえ、これぐらいの強さで問題ないです。これぐらいの攻撃なら十分防ぐことができます」

「なるほど」

「それでナオヤ、魔剣の魔法を初めて使った感覚はどうですか?」

「ミズカネを使わない分楽だな」


 イメージしたことがそのまま魔法となる。これはかなり便利だ。ミズカネで描くか時間も短縮できているから、魔法の発動までの時間も短い。

 後ろを向き、違う漢字を思い浮かべる。今度は「火」と「柱」。魔力を込め、魔剣を振るう。

 うん。火柱が出来上がった。そのまま真っ直ぐと進み、壁に衝突して霧散した。


「連続で異なる魔法はできるのですか?」

「そうだな……」


 今の二つを連続して使ってみるか。魔剣を振り下ろす時に「火」の魔法、振り上げる時に「水」の魔法を考えることを決める。


「ふっ、はっ」


 漢字をイメージし、魔力を込め、魔剣を振るう。想像通り振り下ろした時に火柱ができ、振り上げた時に水の斬線が飛んだ。

 発動し移動する速度は「水」の魔法のほうが早かった。「火」の魔法が壁にたどり着く前に二つの魔法が衝突し、火柱は上下に二分した。


「お見事」

「想像通りだ」

「本当に羨ましいです……では剣技を交えて行いましょうか」


 振っていた手を止め、ムツミは柄を握る。


「まだ「魔剣破壊」の条件が分かっていないんだけど」

「条件を確認するために、魔剣同士をぶつけるのですよ」

「壊れるかもしれないぞ」

「貰い物ですし、仮に壊されても構いません」


 ムツミが言うのなら、問題ないか。

 オハバリの柄を耳の横に寄せ、剣先を下に向ける。慣れた「屋根」の型。


「私は防御に徹しますので、物理攻撃なり魔法攻撃なりしてきてください」

「了解」


 とりあえずはいつも通り戦ってみるか。

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