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異世界で俺は諦めない  作者: カミサキハル
異世界導入編(三日目)
37/90

これから

 今後か。


「それって研究所を出てからのことか?」

「はい。何をしたいのかな、と」


 前も聞かれた気がするけど、様々な国に行ってみたいな。

 新鮮味があって面白そうだ。

 大国主の願いの「少女」を捜すにも色々な場所に行かないと駄目だろう。


「とりあえずは下山したらアキツを見て回りたい」

「いいかもしれないですね。まずは首都に行くことをお勧めします」


 首都か。

 どんな場所なのだろうか。


「ムツミは行ったことあるのか?」

「武器の注文をしに行くためにですね」

「武器?」

「トツカのツルギです。注文すれば手に入ります」


 大量生産武器だったっけ。

 注文すれば簡単に手に入るのか。


「ただし、所有制限はありますよ。トツカのツルギは五本まで」

「魔剣になると?」

「同じく五本までです。なので最大トツカのツルギ五本、魔剣五本まで所有できます……っと、話が逸れました」


 コホン、とムツミは咳をして続ける。


「アキツを見て回るのなら、お勧めの場所を厳選して教えてあげます」

「ありがとう」

「アキツの次は世界ですか?」

「そうだなぁ」


 たぶんそうなる。

 けど何が起きるのか分からないから、不安はある。


「世界を周遊する前に短期的に学院に入るのはどうでしょうか?」

「学院?」

「セタさんはここで本を使って知識を得ていますが、専門的な本も多いです。学院に入って基礎から学ぶのもいいかもしれないですよ」


 それは考えていなかった。確かに短期入学でもして色々学ぶこともいいな。


「セタさんがイジンであることを宣言したらすぐにでも入れると思います」

「イジンってことはそういう風には使いたくないな……」


 好奇の目で見られたくない。


「でしたら、推薦状を書きましょうか?」

「書けるのか?」

「捏造は得意です。任せてください」

「おい」

「冗談です。所長の名前を書きます」


 それは許可を取るんだよな。

 取らずに書いたらそれこそ捏造だ。


「アキツの選りすぐりの観光地と推薦状を一緒に渡しますね」

「ありがとう。でも、どうしてそこまでしてくれるんだ?」

「一期一会ですよ。それは大切にしないと、です」


 なるほどね。

 これは感謝しかないな。


「俺も何かできたらいいんだけどな」

「私は知らない漢字を教えてもらっているので、十分ですよ。あとはナナミに勝っていただければ」

「勝てるのか、俺?」

「戦う前から負けるとか思わないでください……ああ、そういえば勝負は真剣でやりますけど、持っていましたっけ?」


 さらっと真剣で勝負するって言ったか?

 死なないようにしないと。


「真剣は研究中のオハバリしかないな」

「勝負の前日までにオハバリへの答えは出そうですか?」

「前日?」

「勝負の時に初めて真剣を持つつもりですか? そんな馬鹿げたことはやめてくださいよ」

「そうだよなぁ」


 正直答えは出そうにない。

 安易に答えたら駄目だろうし。

 というか、安易に答えたら後悔するだろ。

 こういう手の問いかけは。

 俺の悩んでいる顔を見て、ムツミは息を吐いた。


「私が保持しているトツカのツルギを貸しますね」

「いいのか? さっき所有制限とか言っていたけど」

「少しの間、貸すだけなら問題ありません。所有制限にも引っ掛かりませんよ」


 誰が使ったという痕跡は残りませんし、とムツミは付け加える。

 なら、問題ないか。


「じゃあ、お願いしようかな」

「では明日から練習でも使ってもらうために、今渡しておきますね」


 手元にメニュー画面を展開し、彼女が何か操作をする。しばらくして俺にメールが届いた。

 中身を見る。差出人はムツミ。トツカのツルギが添付としてつけられていた。

 添付を開き、トツカのツルギを出現させる。

 拳を十個ほど並べた両刃の剣が右手の中に現れた。

 重量感がある。

 俺は両手で握り直した。


「魔力制限をつけています」

「魔力制限?」

「練習や勝負中に魔剣に変化されても困りますし」


 そうだった。

 一定量の魔力をトツカのツルギに流すと魔剣に変化するんだった。

 魔力量の制御が苦手な俺がトツカのツルギを使うと、魔剣になってしまう恐れがある。


「気をつけて使う」

「お願いします」

「それで、鞘とかないのか? 抜き身の剣なんて持ち歩きたくないんだけど」

「……はぁ。「認証言語」を呟くと格納できますよ」


 認証言語?

 初めて聞く言葉だ。


「最初に「認証」と呟いて、続いて「対象物名」「動作」を言えば認証言語が成立します。今回は「認証 トツカのツルギ 格納」です」

「どこに格納するんだ?」

「現実と虚空の狭間と言われています」


 実際ははっきりと分かっていないということか。

 とりあえず呟いてみる。


「認証 トツカのツルギ 格納」


 両手からトツカのツルギが消えた。


「出すときは?」

「「格納」を「取り出し」に変えればいいですよ」


 言われた通りに呟いてみる。すると今度は手の中にトツカのツルギが現れた。

 便利だな、これ。

 青い猫型ロボットのポケットみたいだ。

 もう一度「格納」で呟いて剣を格納する。


「色々教えてくれてありがとう」

「何も知らない子供に教えているようでした」

「そうかも」

「セタさんを子供呼ばわりているのに不満はないのですか……」


 ムツミがからかっていることが分かるからな。

 軽く流した方がいい。

 それに文句を言って、歯向かう方が子供だろ。

 大人の対処をしないと。


「じゃあ、俺は部屋に戻るわ」


 立ち上がり、俺は伸びをする。

 だいぶ眠くなってきた。


「はい。ではまた明日」

「おう」


 俺はムツミに見送られ部屋を出る。俺はふと思って部屋に到着する前にメールを作成。

 宛先はナナミ。

 内容は「明日ムツミに言いすぎたことを謝ること」


 送信ししばらくして返信が届く。短く「うん」の一言。


 よし、これで気持ちよく寝れそうだ。

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