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異世界で俺は諦めない  作者: カミサキハル
異世界導入編(三日目)
36/90

お話し

 部屋に戻ると私はベッドの上に仰向けに倒れた。左腕で視線を塞ぐように覆い、大きく息を吐く。


(セタさん……)


 本当に怪我をさせてしまったのかな。セタさんはわざとらしかったけど、ナナミ様は本気で起こっていたし。

 どこまでが嘘でどこまでが本気なのだろう。


 もう一度息を吐く。

 もし指がなくなっていたら、セタさんは剣を握ることができない。ナナミ様との勝負もできなくなってしまう。

 本当のことを聞きたいけど晩御飯の途中で出てきたから、今から戻って聞くのもおかしい。


「残り時間は少ないのに……」

――残り時間? それは、おまえの残り時間か?


 心の声がする。私はその声に首を縦に振る。


「そうです。私には時間がありません」

――薬の副作用だろう。薬を飲まなければ残り時間を長くすることができるぞ?


 確かにそれはできる。だけど、それでも長くできるのは一週間ほどだろう。

 それは長くなったとは思えない。

 それに……


「私は薬を飲まなければなりません。飲んで安全を確認しないといけません」

――安全なんてあの男に飲ませて確認すればいいだろう。部外者だから何かあっても問題ない。


 セタさんのことを言っている。それだけは駄目。あの人は絶対。

 あの人を死なせてはいけない。


――私の所有者が駄目だと言うのならば、否定はしないさ。だが、教えろ。

「なんでしょうか」

――私もおまえの指示で手伝っているが、なぜおまえはあの男を鍛えている?


 なぜかって? それは……


「ナナミ様が連れてきたからですよ」


 ナナミ様が連れてきた人。彼がイジンだということを含めてもあり得ないことだった。

 ナナミ様がフヨウで見つけた人間は、研究所に到着するまでに死んでしまうことがほとんどだからだ。

 彼女の手によって。


「ナナミ様が人を連れてくることはヒゴにいた時以来です。それも重要な人が連れて来られるのです」

――ほう。

「もしあの時、ナナミ様が連れてきた人がいなかったら、ナナミ様も私もここにはいません」


 おそらく死んでいる。

 私はナナミ様に、ナナミ様は国の軍隊によって殺されていたはず。

 それがナナミ様が連れてきた人の計らいで生き残った。

 だからこそ今回もセタさんが連れてこられた理由がある。

 ナナミ様が自覚しているかどうかは分からないけど。


「セタさん自身の身を守るために、私は彼を鍛えているのですよ」

――身を守る……おまえの主人からか?

「はい」


 今のナナミ様は魔剣に支配されることがあり、不安定な状態。

 突然ナナミ様がセタさんを襲い、死なれても困る。


――だが、それだけではないだろう?

「……」


 心の中の問いかけには答えない。

 今は答えるべきではないから。

 まだどうなるか分からない。

 答えるのはセタさんとナナミ様の勝負の結果が分かった時だろう。

 それぐらいの時間は私に残っている。

 でも指がなくなっているのならば、その勝負さえ……


 コンコン。

 扉を叩く音がした。


「ムツミ、中にいるのか?」


 セタさんだ。


※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※


 ノックをしてしばらく待っていると、扉が開いた。


「なんでしょうか。私のせいで指がなくなったことを責めにきたのですか?」

「違うって。事実を説明しにきた」

「……事実?」


 首をかしげるムツミに俺は包帯を解いた右手を見せる。

 そこには少し血で滲んだ絆創膏が貼ってある指。

 その指を見てムツミはホッと息を吐いた。


「驚かさないでください」

「悪かったって。でもこれは言わせてくれ」

「なんでしょう?」

「からかいすぎたら、今後も仕返しをするから」


 そう言うと、ムツミはムッとした表情になった。


「分かりました。心しておきます」

「覚悟しておけよ……それで、大丈夫か?」


 俺がムツミの部屋に来たのは、彼女が心配だったからだ。

 ナナミに強い口調で言われ、傷ついていないかと。

 俺の質問に彼女は首をかしげた。


「何がです?」

「ナナミに咎めるというか、傷つけるような口調で言ったじゃないか」

「……傷ついてますよ。ナナミは本気で怒っていましたし」


 はぁとため息を吐いて、ムツミは言う。


「悪かった。俺が少し懲らしめようと言ったら、ナナミが本気になった」

「……はぁ、もういいですよ。過ぎたことですし……あの、指を治すついでにお話ししませんか?」

「あ、ああ」


 ムツミに続いて俺は部屋へと入る。

 部屋の中は整然としていた。床の上は不要なものは一切置かれていないし、机の上も綺麗に整頓されていた。ベッドの上は寝転んでいたのか一部分にシワが寄っている。

 ナナミとは大違いだな。


「今、ナナミと比べましたよね?」

「バレた?」

「部屋の中を見渡して、何かと比べているように見えましたから……椅子に座ってください」


 言われた通り椅子に座る。

 ムツミは壁に立て掛けていた杖を手に取り、俺の指に杖先を当てた。


「皮膚が破けて出血しているのと、骨にヒビが入っていますね」

「ヒビも入っていたのかよ……絆創膏だけじゃダメじゃないか」

「そうですよ。それで噛まれた感想は?」

「ナナミの噛む力は強かった」

「食べることに関しては貪欲ですよ」


 食べ物を食べるだけで作った人が分かるし、お代わりしていたときもムツミと残りを奪い合っていたな。

 そういえば、初めて出会ったときも狩った魔物の肉の取り分を交渉をしたっけ?


「下手に食べ物で釣ってはダメです」

「そんな事を言っているけど、おにぎりでナナミに俺の指を食べさせたのはムツミだからな」

「すみませんでした」


 ムツミは素直に謝る。

 俺も根に持ちすぎだな。これ以上は言わないでおこう。

 怪我も治ることだし、怒る必要もないからな。

 淡い光が俺の指を包み、治療していく。


「……はい、終わりです」


 杖が指から離れる。俺は指を動かしてみた。

 うん、全く痛くない。


「ありがとう」

「どういたしまして」


 ムツミは杖を壁に立て掛け、ベッドに座る。


「それで、話ってのは?」

「そうですね……今後、セタさんは何がしたいのですか?」

「今後?」

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