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異世界で俺は諦めない  作者: カミサキハル
異世界導入編(三日目)
28/90

三日目、朝の鍛錬

――敵意、殺意を察知。「背水」を発動し――


 昨日の朝と同様、頭にアラートが鳴り響く。

 俺はとっさに体を反転。後頭部のすぐ近くでベッドに何かが刺さる音が聞こえた。

 ゆっくりと視線を後ろに向けると、真っ赤な刀身が見えた。

 体を起こし、攻撃してきた張本人のほうを向く。


「っおい、ナナミ! 死ぬだろうがっ!」

「何度も起こしたのに、寝るのが悪い」

「殺したら、一生寝たままだろうがっ!」

「……むう」


 今気づいたのか。

 全く、殺る前に気づいてほしい。

 何度俺は死にかけるんだ。


「朝の鍛練に行くわよ」


 ナナミは剣をベッドから引き抜き、鞘に収める。


「その前に」

「なに?」

「薬を飲め」


 ナナミは殺気立っているせいか、目付きが怖い。

 明らかにフルンティングに支配されかけている。

 彼女は俺の言葉に文句を言いたそうな表情をしていたが、ポケットから薬を取り出して飲む。

 しばらくすると、彼女の目付きが柔らかくなった。

 スキル「背水」が同時に解除される。


「おはよう、ナナミ」

「……おはよう」

「じゃあ、行くか」

「……怒らないのね」


 ナナミが聞きたいのは、俺を殺そうとしたことだろうな。


「もう慣れた。一昨日、昨日と同じ状態を見てるし」

「適応力高いわよ」

「自分の命がかかっているからな」


 適応できなかったら、すでに死んでいる。


「あ、セタ。これ替えの服」


 服を渡された。昨日貰っているんだけど……って、これは普段着か。

 学生服風のブレザー。

 俺の日常の服になりつつある。


「どこか行くのか?」

「昨日言ったでしょ。朝の鍛錬よ」


 そうだった。約束をしていた。


「おお、頼む」


 俺はベッドから立ち上がり、部屋を出ようとする。

 すると、ナナミに肩をつかまれた。


「部屋着で行くつもり?」

「……まさか」

「何よ、その間は?」

「何でもない。先に行っといてくれ」


 ナナミを部屋から追い出し、さっさと着替える。

 外に出るとナナミが待っていた。


「先に行かなかったのか?」

「行っても待つだけだし」


 ナナミは歩みを模擬戦場へと向ける。俺は彼女の横に並びついていく。

 模擬戦場まではすぐだった。ナナミに続いて中に入る。


「軽く打ち込みをしようか」


 壁に立てかけていた木剣を渡される。俺はそれを昨日ムツミに言われた通りに握る。

 両手はスペースを空けて、持つ……と。

 ナナミのほうを見る。剣を扱うのが得意と言っていただけにあって、自然と木剣を持っている。

 握り具合を確認するかのように上段から下段に向けて数回振るう。

 その度にシュッシュッと空気を切る音が聞こえた。

 見事なものだった。俺も頑張ればできるのだろうか?

 見よう見まねで木剣を振るう。するとナナミが近づいてきた。


「肩に力が入りすぎよ。力を抜いて」

「こうか?」

「そう」


 彼女は俺を見て、次いで考えるように天井を見上げる。


「うーん。打ち込みをする前に、型の練習をしようか」

「型?」

「ええ。セタは外国の剣術……ヴュルテンの剣術がいいかも」

「ヴュルテン?」


 西の帝国だったか。

 兵器で発展した国と昨日勉強した気がする。


「剣術自体は古いけど、セタに向いてそう」

「どうして?」

「勘」


 勘かぁ。


「信じられない?」

「いや、そうじゃないけど……」

「持ち方が変わるけど、やってみて」

「あ、ああ」


 持ち方が変わるのか。

 昨日から始めたから、まだ変な癖はついていないから問題はないはずだ。


「剣の握り方は変わらないわ。変わるのは剣を持つ位置」


 ナナミが手本を見せてくれる。

 剣は右耳の横で刃を上にして垂直に持ち上げる。

 そして右足を下げ、左足を前に出して半身の格好になる。


 野球のバッターみたいだ。


 これが基本の型なのか。


「これが『屋根』の構えよ」

「ほかにもあるのか?」

「あるけど、今はこの構えから。攻撃と防御の両方に適しているのよ」

「へぇ」


 真似して俺も構える。

 不思議としっくりときた。


――「成長する力(刀剣)」のスキル「ヴュルテン剣術(基本)」を習得しました。基本的な歩法を使うことができます。またこのスキルは「上級」まで成長させることができます。成長条件は詳細を確認してください。


 お、スキルを習得した。


「この構えからどうしたらいいんだ?」

「振り下ろすのが基本の攻撃よ」


 ナナミは右足を前に出しながら右耳横に構えていた剣を左下へと振り下ろす。風を切る音が聞こえた。


「簡単かつ単純だけど強力な攻撃なの」

「へぇ」


 俺も剣を振り下ろす。ナナミのように風を切る音はしなかったが、上手く振り下ろすことができた。


「初めてにしては上手ね」

「ああ。持っただけでスキルも習得したし、俺に合っているみたいだ」


 何度か剣を振り下ろす。次第に空を上手く斬ることができるようになってきた。

 慣れてきたから、次の行動を考えてみる。

 右上にあった剣を左下に降ったから、今度は左下から右上に振り上げるのかな。

 足は左足を前に出す。

 一連の動作を連続してやってみる。

 数回繰り返すと様になった動作ができるようになった。


「そこまでできたら十分だわ。少し打ち込みをしましょう」


 ナナミに誘われ、俺たちは相対して立つ。


「どうしたらいいんだ?」

「私に打ち込んできて。私が防御、反撃するから」

「分かった」


 さっき覚えた「屋根」の構えをする。

 対してナナミも同じ構えをしている。


「いくぞ」

「いつでもどうぞ」


 俺はナナミに接近し木剣を振り下ろす。ナナミは俺の攻撃を受け止め、木剣で押し返した。

 強く押された俺は後ろにたたらを踏んでしまう。

 うわ。弾き返されるだけで、ふらつくのかよ。足腰の鍛えが足りないな。


「勝負時に思考を止めない! すぐに構える!」


 別のことを考えていたことを見透かされていたらしく、指摘された。

 慌てて俺は木剣を構え、ナナミを見る。

 すでにナナミは俺に向けて木剣を振り上げていた。


「ちょ、ナナミ。待てって!」

「勝負中は誰も待ってくれないわよ!」


 彼女の持つ木剣が俺の頭に向けて振り下ろされる。俺は頭上で木剣を水平にし、攻撃を受けようとする。

 だけど、ナナミの攻撃は俺の構えをすり抜け、持っていた木剣を下から弾かれた。強い衝撃に耐えられなかった俺は木剣を手放し、両手を万歳した格好になる。

 そして視線の先には再度頭に振り下ろされるナナミの木剣。

 俺は思わず目をつぶってしまった。

 衝撃は、こない。


「剣は頭上で水平に構えない。反撃がし辛いわよ」


 恐る恐る目を開けると、ナナミの攻撃は俺の頭上数センチのところで止まっていた。

 そのまま振り下ろされていたらのことを考えると、ぞっとする。


「攻撃を受けるときは自分自身の正面で剣の強い部分――柄に近い部分で受けるか、刃を使って攻撃を逸らすの」


 木剣を手元に戻しつつ、ナナミが説明してくれる。


「あと相手と距離を取って、そもそも攻撃を受けないのもいいかもしれないわ」

「あ、ああ」

「あとは絶対に目をつぶらない。攻撃が見えなかったら防御のしようがないでしょ」

「……ごもっともで」

「目をつぶらないためには、打ち込みなどや実践形式で慣れるしかないわね。と言うわけで続き」


 ナナミは地面に落ちていた木剣を拾い、俺に柄を向ける。俺は柄を握り木剣を受け取る。

 そして深呼吸をして、心を落ち着かせる。

 さっきの一連の動作を思い返す。


 一度攻撃をしたら終わりじゃない。防御に入るか、攻撃をを続けるか。

 ナナミの動きを見て判断できるように頑張ろう。


 あとは余計なことは考えない。

 というよりも考える暇はない。

 考えた分だけ俺の動作が遅れる。

 木剣を握り直しそして構え、俺はナナミを見た。


「もう一度頼む」

「何度でも相手してあげるわ」


 ナナミは笑みを浮かべて答えてくれた。

 時間が許す限り、相手をしてくれるようだ。今はその言葉に甘えよう。

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