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異世界で俺は諦めない  作者: カミサキハル
異世界導入編(二日目)
21/90

魔剣講義(初級)

「さっきの攻撃特化型の特長って何なんだ?」


 うなだれているナナミは無視して、俺はムツミに尋ねる。

 魔剣について知ることができるいい機会だ。


「簡単に言いますと、攻撃特化型は内蔵されているほとんどの魔法が攻撃用のものの魔剣のことを指します」

「内蔵されている?」

「変化前のトツカノツルギが魔剣に変化することで固有の魔法が自動で付与されるのですよ」

「えっと……」


 よく分からない。

 俺の反応を見たムツミは左の人差し指で頬を叩きながら、天井を見上げる。


「そうですね……魔法を使うためにはミズカネが必要だということは知っていますよね?」

「ああ」


 昨日俺も実際にやってみた。ミズカネで漢字を描き、魔力を込める。これで魔法が発動する。


「魔剣に既に付与された魔法は所有者が魔力を込めるだけで使うことができるようになります」


 ミズカネが不要だということか。

 ミズカネで描かないから、魔法の発動速度は速そうだな。

 それに毎回描くよりも間違えることがないだろう。

 魔剣に付与されることで不便さが解消されたと考えてもいいんじゃないか?

 実際にどんな魔法があるのか想像をする。

 ふとナナミが昨日魔物と戦っていた時や俺に麻酔をかけた時のことを思い出した。


「ナナミの風の魔法や麻酔の魔法か?」

「そうです。ナナミの魔剣の魔法は「風」「火」の攻撃魔法、「土」「治療」の特殊魔法を使えることができます。ただし「土」「治療」に関しては限定的かつ簡易的なものしかできません」


 簡易的なもの……だから応急処置しかできなかったのか。


「またナナミのフルンティングには「広範囲魔法」という特長があります」


 そんなものまであるのか。魔法を使うための補助効果も付与されるんだな。


「遠距離で魔法が使えるということか?」

「はい」


 なるほど。


「ん? ナナミのフルンティング?」

「そうです。ナナミ以外にもフルンティングを所持する人間は沢山います。それぞれ付与される特長が違うのですよ」

「そういえば、本にそんなことが書かれていたような……」


 頭の中で整理する。

 魔剣にはトツカノツルギから変化した後、それぞれに魔法が付与される。

 その魔法は攻撃用、防御用、特殊用と三種類になり、同時に魔剣固有の能力も付与されるようだ。

 また付与された魔法の割合によって魔剣が攻撃特化型、防御特化型、特殊特化型に分けることができる。

 所持者によって同じ名称の魔剣を持っていても付与される魔法が違う、と。

 ナナミの場合は攻撃特化型になるのか。

 風と火の攻撃魔法が主で、土と治療が限定的だと言っているし。


「理解できたの?」


 と、ここでナナミが顔を上げた。落ち込みから回復したらしい。


「なんとなくな」

「すごいわね。私にはあまり理解できていないわ」


 これは落ち込みから回復したんじゃなくて、開き直ったんだな。


「いやいや」


 今のムツミの説明で魔剣が付与される魔法によって型が分類されることは理解できると思うぞ。

 攻撃魔法がどんな魔法なのか、などは分からないけど。

 もしかしてナナミは感覚で魔剣を扱っているのか?


「ムツミ、もしかしてナナミは……」

「はい。彼女は武器を扱うことに関しては天才肌の能力を持っている、といったらいいでしょうか」

「マジか」

「あと好きなこと――魔剣の種類については覚えますね」

「あれか? 図鑑を見て動物の名前を覚える、みたいな」

「そうです」

「言いたい放題ね、あなたたち……」


 ナナミの笑顔が引きつっている。

 そしてため息を吐いた。


「必死に覚えようとしても、無理なものは無理なのよ。頭に入らないわ」


 ナナミの言葉で思い出したのは経済の勉強。覚えようとしても講義で言っていることが分からなかったんだよな。

 過去の理論を覚えようとしても頭に入らない。

 あれは……理論を覚えようとして、気になることが多すぎたんだ。

 理論を提唱した人物が生きた時代が気になったし、どうしてその理論を思いついたのか分からなかったから理解ができなかったんだ。

 それに過去に提唱された理論を現在の経済に無理矢理にでも当てはめようとする理由も分からなかった。

 ○○理論に近い、おそらく○○だろう、など曖昧なものが多かった。


 ……っと愚痴になってしまったな。


 ナナミの場合は俺とは反対で深く考えず、単純に物事を考えようとしている気がする。

 攻撃特化型魔剣の回答内容から推測するとだけどな。

 ○だから△、というように過程を省いて考えているのだろう。


「ムツミ、ナナミには単純に覚えさせよう」

「そうですね。私も分かりやすい教材を探します」

「……あなたたち、私を馬鹿にしているでしょ」

「「そんなまさか」」

「斬るわよ」

「「すみませんが、それだけは勘弁を」」

「本当に斬りたいわね……」


 握り拳を作りそれを震わせているナナミ。これ以上からかうのは止めよう。

 本当に斬られる。


「では、セタさんに問題です」

「ん?」

「防御特化型の魔剣の特長はなんでしょう?」


 腕を組んで考える。

 まあ攻撃特化型の反対を答えればいいのだが。


「防御魔法が攻撃魔法や特殊魔法よりも多く付与された魔剣」

「では、どんな魔法が付与されていると思いますか?」


 どんな魔法、だと?

 それは教えてもらっていないから、分からない。

 ……なんて言うつもりはないので、考える。

 防御、防ぐ、守る。このことから魔法をイメージする。


「壁や鎧の魔法ができるのか?」

「属性は何が多いと思いますか?」

「土、かな」


 答えると、ムツミが拍手をした。


「大正解です。ナナミとは違いますね」

「まあ、魔法や魔剣はこれまでの俺にとって想像の産物だったし、実際にあると興味しかないからな」

「それでも魔法なんて思いつきませんよ」


 ゲームやドラマ、映画からイメージしました。

 って言っても伝わらない気がするなぁ。

 魔法が発見されて数百年。魔法ありきの世界で生きている彼女たちはゲームやドラマがあったとしても想像できないだろう。


「うう。セタと私の違いは何だろう……」


 俺が答えたことで、ナナミがまたうなだれていた。

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