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異世界で俺は諦めない  作者: カミサキハル
プロローグ
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能力習得、異世界へ

「では、こちらに来なさい」


 オオクニヌシは手招きをした。俺はオオクニヌシの元へと近づく。


「なんでしょうか」

「我の手を握りなさい。お主に力を授ける」


 言われた通りに手を握る。手のひらに伝わるシワの感覚。

 強く握ると折れてしまいそうだった。


(さて)


 力。その言葉に俺の胸が高鳴っていた

 どんな力を与えられるのだろう。やっぱりチート能力だろうか。

 与えられるなら強い能力がいい。

 そう考えた途端、俺も小説や漫画の転生者と同様のことを考えていることに気付く。

 普通はそう考えるのか。神様から「力を授けよう」と言われると、強いものを期待してしまう。


「完成された力が欲しいのかの?」


 俺の考えを読み取ったらしいオオクニヌシが俺に尋ねる。


「完成された力ですか?」

「うむ。例えば「剣の達人の能力」や「鍛治の達人の能力」などじゃ」


 達人って言うぐらいだから、最初から強い能力なのだろう。

 興味が惹かれる。

 その能力をお願いしようとオオクニヌシを見ると、眉間にシワを寄せていた。


「だけど残念じゃな。お主にその力を授けることはできないようじゃのう。せいぜい「○○の扱いが上手い一般人」止まりの完成された力じゃな」

「なんですか、その微妙な能力は」

「お主自身の潜在能力を恨みなさい」


 暴かれた俺自身の中途半端なスペックに落胆して、ため息しか出ない。


「お主に授けることのできる能力は……これらじゃな」


 オオクニヌシは俺の手を離し、その手を宙に振る。すると俺の目の前に大きな画面が現れた。

 画面の中央に様々な能力が書かれていて、右下に「OK」と書かれたボタンがある。

 ゲームでスキルを覚える時に見る画面みたい。

 気になるのは一覧がなぜかすべてひらがなとカタカナ、そして英数字で記載されていること。


 漢字が見当たらない。


「漢字を用いた表記はないのですか?」

「異なる世界で漢字は日常では使われておらん」

「はぁ」

「じゃが漢字が無くても、日本人のお主なら理解はできるはずじゃろ?」


 理解はできる。ひらがな、カタカナ、英数字も知っている。

 ただ読みにくいだけ。


「異世界は地球に似ているのですか?」

「言葉は通じるが、当然地理や歴史は異なる」

「へぇ」


 そういうものか。

 地球と似すぎていても面白味がないし。


「それにしても……」


 目の前に表示されている文字を改めて見る。漢字のない記載だとこんなにも読みにくくなるのか。

 だけど読めないよりはいいか。

 それに異世界独特の言語を覚えるより、比べ物にならないくらい楽だ。


 俺は画面に触れ、下にスクロールしていく。「キソタイリョクUP(ビ)」や「ケンギシュウトク(ナミ)」など四十個ほど能力があった。

 頭の中で漢字に変換。

 たぶん「基礎体力UP(微)」に「剣技習得(並)」だな、これは。


「全部覚えられるのですか?」

「その中から三つまでじゃ。「OK」を押すまでは変更できるぞ」

「ふむ……」


 もう一度一覧を見る。一つの能力に目が止まった。


「この「セイチョウするチカラ(トウケン)」はどんな能力ですか?」


 漢字に変換すると「成長する力(刀剣)」か?

 一覧には他に「成長する力」は無いようだ。


「経験によって剣や刀の技術が成長する能力じゃ」

「もしかして経験を積めば達人級の完成された力に匹敵する、とか?」

「鋭いのう」


 オオクニヌシは笑みを浮かべる。


「お主の言う通り上手に成長すれば達人級の能力になる。その上特別な能力も習得できる」

「すごい能力じゃないですか」

「ただし良い方向に成長するとは限らん」

「悪い方向の成長もあるのですか?」

「うむ」


 うなずくのを見て、俺はあることを思い出す。

 あれだ。野球ゲームのあれに似ているんだ。

 青や赤の背景をした特殊能力。


「リスクはあるが、強くなりたいならおすすめの能力じゃ」


 こういう自身を強くしていく類の力にはリスクはつきものだろう。

 だけどリスクを嫌ってこの力を選択しないことは、もったいない。


「じゃあ、まずはこの能力にします」


 一つ目の能力を決める。俺には完成された力より魅力的な能力に見える。

 俺は「セイチョウするチカラ(トウケン)」を選択した。すると選択した能力が淡く光る。

 これは選択できたってことだよな。


「次は……」


 選択した能力の真下にあった項目に目が止まる。


「この「マリョクリョウUP(トクダイ)」なんですけど、異世界には魔法があるのですか?」

「あるぞ」


 やっぱり魔法があるんだ。

 だったら使ってみたい。

 魔法を使う技術も大切だと思うけど、魔法を使うための魔力が多いことにこしたことはないだろう。

 オオクニヌシの返答を聞いて俺は「マリョクリョウUP(トクダイ)」を選択した。


「最後は……」


 一覧を見ながら、俺は唸る。

 うーん、良い能力が無いな。「魔法詠唱速度UP」や「瞬発力UP」とかあるけど全部(微)か(並)なんだよなぁ。

 これらは習得してもあまり期待のできないない能力だ。

 探しているとこの一覧の中では唯一「特大」のつく能力があった。

 その能力は「ドクタイセイUP(トクダイ)」だった。

 漢字だと「毒耐性UP(特大)」か。すごく地味な能力だな。

 毒物を食べても影響が出ない能力なのか?


 他に惹かれる能力もないし、これにするか。

「ドクタイセイUP(トクダイ)」を選択し、一覧の右下にあった「OK」を押す。すると淡く光っていた能力が強い光を放ちながら一覧から飛び出し、俺の胸の中に飛び込んで来た。

 そしてそのまま俺の胸に吸い込まれ、同時に「ポーン」と音が頭の中で鳴った。


――初期能力の確定を確認しました。「ステータス」を確認してください。


 頭の中で声が響く。ゲームのナレーションみたいだ。


「……ステータスの確認?」

「左手の甲を見てみい」


 言われて左手を見る。そこには覚えのない紋様が入っていた。

 状態と漢字で書いているようにも見えるけど、そう見えるだけかもしれない。


「その紋様に魔力を込めてみい」

「魔力を込める?」

「紋様に向けて力を集めるように集中してみなさい」


 言われて紋様に力を流し込むように意識を向ける。すると体の中で何か得たいの知れないものが蠢いていることに気づいた。

 今まで経験したことのない感覚。

 これが魔力か。

 俺は魔力を紋様に込める。すると紋様は蒼く淡く光り、目の前に長方形の画面が飛び出してきた。俺はその画面を見る。

 これはゲームで言うとメニュー画面か。

 ……やっぱり漢字がないと読みにくい。


「えっと「メニュー」の中に「ジコノウリョク」「トクシュノウリョク」「ジョウタイ」「ソウビ」とかがあって……」


 とりあえず「ジコノウリョク」を選択する。画面に表示されたのは「コウゲキリョク」「シュビリョク」などが描かれたレーダーチャートだった。


 これは「自己能力」のことか。

 何もしていないから能力値は低いな。

 けど極端に低いものもなく、平均的。

 突っ込みどころがないほど中途半端な基礎能力だ。

 そのレーダーチャートの上側には名前と渾名が表示されている。


 ナマエ:セタ ナオヤ

 アダナ:イセカイからのライホウシャ(ヨテイ)


 異世界からの来訪者(予定)って渾名ではないだろ。

 そもそも渾名は名前を短くしたものだ。

 何に使うのだろう?


 ……深く考えるのは止めておこう。どうせ異世界に行ったら分かることだ。

 画面下にあった「モドル」を押し一つ前の画面に戻り、次に「トクシュノウリョク」を選択する。


 これは「特殊能力」だな。

 その画面には俺がさっき選択した三つの能力が表示されている。

 試しに俺は「セイチョウするチカラ(トウケン)」を選択する。

 すると新しい画面が開き、詳細が表示されている。


「えっと……「トウバツスウ」に「サツガイスウ」、「ゼン」に「アク」……」


 習得した直後だからすべての項目に数字で「ゼロ」と表示されているな。

 ここの値が変動することで成長するのか。

 色々あるから確認するのに時間がかかりそうだ。


「そろそろいいかのう?」

「どうしました?」

「異なる世界への道が繋がったのじゃ。しばらくしたら消えてしまう」


 オオクニヌシが手を振る。するとオオクニヌシの背後で神々しく光る鳥居が現れた。

 まぶしい。鳥居の先の風景が全く見えない。

 だけどこの鳥居の先に異世界が待っている。


「ここを潜りなさい。そうすれば異なる世界へ行くことができる」

「分かりました」

「自由に過ごし、気が向いたらでいいのじゃが……」

「カグツチのことですよね。分かっています」


 助けなくても天罰が下らないと言っていたけど、何度も言っているということは、かなり心配しているんだな。

 異世界はどんなところか分からないけど、生き返らせて貰っているし、捜して助けようか。


――ミッションを受領しました。メニュー画面より「ミッション」を選択し内容を確認してください。またミッション受領による事前報酬があります。


 どうやら軻遇突智を助けることがミッションになったらしい。ミッションに記載が残るから忘れることはないな。

 後で確認しよう。


 俺は鳥居の前に立つ。

 ふと俺はオオクニヌシのほうを振り返る。


「オオクニヌシさん、ありがとうございました」

「何をじゃ? 我は死んでしまったお主を生き返らせただけじゃ」

「普通は生き返ることなんてできないですよ」

「我にとっては簡単なことじゃ」


 ふぉっふぉっ、とオオクニヌシは笑っている。

 まあオオクニヌシは幽冥界の主だし、生き返らせるのも容易いことか。


「では……行ってきます」

「気をつけての」


 オオクニヌシに送り出され、俺は鳥居を潜った。

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