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とある星間帝国の悪夢 その七

フロンティアとの邂逅は、ここまで。

短い?

でも、そんなもんです。

フロンティアって、トリックスター扱いですから。


星間帝国宇宙年501.0409


殲滅戦闘艦USDNー1001に移動した我々は数時間の「説明」という、コンピュータの与え給うた「苦行」を、なんとか耐えぬきフロンティアに頼んで固定フィールドを解除してもらう。

微速後退でフロンティアの庇護下から出た我々は新しく改装されたという言葉を使ってもいいくらいに新装なったUSDNー1001を習熟するための訓練に入る。


正直に言おう。

習熟訓練など必要なかった。

コンピュータのアシスト機能が数段階上がっていたためパイロットの進路変更や緊急回避機動もスムースになり改装前より使いやすくなっているのは間違いない。


「科学主任、機関主任。君たちの感想は?」


聞くまでもなかったが明らかに使いやすく、そして強力になっている各装備。

ただし、と前置きして科学主任が、


「防御バリアシステムは最適化?の影響でしょうか以前の5倍の強度を持つものに変化してます。こうなると防御作戦というものを全く新たに練り直さないとダメですね。そして、ここが肝心ですが。艦長、フロンティアの提督は徹底した平和主義なのですか?兵器システムについては全くというほどに進化しておりません。最適化?も兵器システムだけが対象外だったようですね」


さもあろう、あのクスミ提督ならば。


「科学主任、そのことは後で。それと艦の運用に関しては、とてつもなく便利になっているな。今までのコンピュータと違い、かゆいところに手が届くというか相手の考えを先読みしているとしか思えないほどにスムースに運用ができるぞ。この艦は、もともと新しい生命や文明との出会いを求めて宇宙を旅するための……今となっては宇宙船フロンティアの小規模版だと理解しているがな……今までとは全く違った任務に着くための艦艇だ。そう考えると、この改装は、もってこいのものじゃないか?」


「ええ、それは全面的に賛成します。様々な文明や生命と出会う時に武器に頼ること無く頭脳を駆使して困難に立ち向かうなら、この艦は必要にして充分な装備を持っています」


だよな。

問題は、この試験航行を終えて宇宙艦隊の本部に帰った時、おえらいさん方や皇帝陛下が、そのまま俺達に文明や生命の探索任務をやらせてくれるかどうか?

なんだがな。


一番可能性が高くて、一番恐ろしい結果は、そのまま艦を取り上げられて我が殲滅戦闘艦USDNー1001は解体され、隅々まで解析と検討とコピーが行われて、この艦のコピー艦が宇宙艦隊主力となり、そのまま遠くの星系や星雲へと侵略艦隊が……

クスミ提督に、こうなる可能性を問うたことがある。


「我が星間帝国では皇帝陛下が全ての作戦のカギを握っているのだ。だから現在は友好的に振舞っている我々も命令一下で、最悪そちらと敵対することになりかねない。そんな我々に、ここまでの贈り物をしてくれるのは心苦しいのだが」


そんな私の真相暴露に対しクスミ提督は、こともなげに言う。


「大丈夫。貴方がたと、この艦があるなら貴方達の星間帝国も変わるでしょうね。予言しておきますよ、軍部から政治体制、全て変わります、平和になる方向へ」


平和になる方向へ、なら良いかと思う、正直。

あの御仁と話していると今までの戦争人生は何だったのかと思ってしまうな。


軍を引退したら、故郷の農場を手伝うか、それとも、あのフロンティアのクルーに加えてもらって死ぬまで星の海を旅しようかとも思ってしまう。

面白いだろうな、全く未知の銀河へ、やすやすと行ける宇宙船での全く未知の宇宙への旅ってのも。

まあ、無理だろうが。


私が軍を引退する頃には、フロンティアはもう、とてつもない遠くへ旅立っているのだろう。

で、そこでやることは平和な宇宙を作り出す手伝いか……

悪くはない、と思う自分が居る事に実は私自身が驚いている。


異星人に、ここまで影響を受けるなどというのは初めての経験だ。

今までは我々よりも低い文明程度の生命体としか遭遇していなかったため半ば強制的に星間帝国へ星系ごと組み込んでしまい、我々の軍事の傘に入る事で安全と安心を提供してきた。

時には、頑強に抵抗する土俗人種を力づくで征服したこともある。


その時には自分は正しいことをしているんだと信じていた。

しかし宇宙船フロンティアとクスミ提督に出会い、宇宙艦は徹底改装してもらうわ、危険宙域では保護してもらうわの膨大なる贈り物と親切を体験した今、私の信念は揺らいでいる。

今までの私の思想は、偏ってなかったか?

自分の信じる正義を強制的に押し付けるだけではなかったか?


元を正せば星間帝国の領土拡張主義は本当に正義か?

正しいのか?

平和を絶対的な基準としていると文明が遅れていたって良いんじゃないか?

幸福って、それぞれの生命や文明で違うんじゃないか?

と思えてくる。


しかし、今の私は星間帝国の一軍人である。

迷う思考を一時、凍結させ、宇宙艦隊の本部へ戻るためにフロンティアと決別する。


「フロンティア、そしてクスミ提督。お世話になった、感謝する。我々は試験航行を終えて帝国の宇宙軍本部へ戻ることになる。宇宙船フロンティアにも来ていただきたいが、そちらの大きさの宇宙船が停泊できるドックがない。残念だが、ここでお別れだ」


「グルグ艦長、いやいや、長く引き止めてすまなかったね。では、ここで別れるとしよう。貴重な経験とデータを貰って、こちらこそ感謝しているよ。では、これにて。晴れた宇宙空間を航行できるように」


「了解、フロンティア。そちらこそ、無限の航路に乾杯!」


これでお別れだ。

さあ宇宙艦隊本部へ戻ろう!


戻った我々に待っていたのは憲兵の群れ。

我々は何故か軍法会議を受けることになっていた……


次回、軍法会議の模様と、宇宙艦に押し寄せる技術兵と将軍たちの模様をお送りする予定。


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