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墨色に拡がりゆく疑念 01

 副支部長はいかにも軍人あがりといったきびきびした女性だった。

 なんとなくルディーを思い出させる顔だが、もっと情け容赦ない鋭い目つきだ。

 黒めの髪を後ろでひとつにきっちりとまとめて、よけいに顔をきつくみせている。

 それでも彼女はかすかに笑みをみせてサンライズに手を差し出した。

「パウラ・バウアー」

「アオキカズハル」身分証を出すと、ちらっと一通りあらためからすぐに返してよこす。

「コードは、サンライズ……」聞いたことがあるらしい。

「東洋人と一度だけ組んだ。韓国でだったが。日本の特務にいた時にサンライズというリーダーに助けられた、と話をしていた。ジャカードという男だ」

「知っている」ニックネーム命名の神様は、今は本国で活躍中らしい。

 この女性にはどんなニックネームをつけたのだろう?

「あの男が褒めるのならば、確かだろう」パウラはまっすぐ、サンライズを見た。

「プラータに何故連絡が取れないのか……キミは彼の居場所を知っているか?」

「いや」

「住んでいるアパートは判っているが、戻っていない」

「通信機は使えないのか?」

「彼にはまだ持たせていない、携帯電話での連絡のみだ」留守番電話には切り替わるらしいが、向こうからの折り返しもないらしい。

 とりあえずプラータからの折り返しがないか待っている間、サンライズは彼に、ホテルの部屋に誰かが入ったらしいことを伝えた。

 パウラは難しい顔をして聞いていたが一言、

「プラータから連絡が来るまでは、ここにいるといい」

 それから、どこかに姿を消した。


 しばらくして、プラスティックカップに珈琲を入れて持ってきてくれた。

「どうぞ」熱くて、胃の腑にしみる、思わずため息が出た。

「うまいよ、ありがとう」

 パウラは満足したように、自分も近くの席に座り、カップを取り上げて珈琲に口をつけた。

 少ししてから突然、パウラがこう聞いた。

「ノビノビノビタ、ってどんな人物なの?」

 はあ? 何でしょうかそれは? と日本語で突っ込みを入れそうになる。

 あまりにも怪訝そうな顔に見えたのか、パウラは少し困ったように宙に目をさまよわせた。

「いや、ジャカードがね」この女性でもこんなに躊躇することがあるのか。

「オレを助けてくれた男の名が、実はノビノビノビタ、って言うんだ、と……

意味は? と聞いたら伸びすぎのノビノビタだ、と」

 あんチクショー、相変わらずのニックネームフェチらしい。ルディーは日本のアニメに詳しかったから、あの時黙っていてくれたんだな。しかし笑っていた。ぴったりだと思ったに違いない。

 

 ややくつろいだところに、急にサンライズの携帯電話が鳴った。

「はい」

「サンライズ? プラータです」

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