ep36:無遠慮かつマシンガントーク
「ちょっと、いえ、かなり変な子のようですけど、素直ですし、特に問題はありませんね」
半透明の球が、薄らいで、やがて消えていく。
目を伏せがちに、目の前の彼女は、そう言葉を繰り出す。
「……そうか」
橘の、短い返事。
全員の視線が、和らいだように感じた。
「早瀬です。よろしくお願いしますね」
目の前の彼女は、そう丁寧に名乗り、踵を返した。
どうやら、尋問は終わったらしい。
◇◆◇
「俺は、佐藤タケシ。よろしくね。愚道くん、と呼べばいいかな?」
そう声をかけてきたのは、優しそうな顔立ちをした、近所のお兄さん的な、そんな感じの人だった。
早瀬とかいう女が言うに、加入したてであるボクの面倒を見る係なのだとか。
なんだか、少し面倒そうだ。
「いいや、戯楽、と呼び捨てにしてくれて構わないよ」
適当に、そう返す。
風貌を見るに、タケシはボクよりも歳上のようだ。
敬語とかを使う気はない。
というか、使っていた記憶すらないや。
「ボクの方こそ、なんとお呼びしたらいいかな」
「佐藤タケシ、うん、ちょっと古いね」
「キラキラネームかな。うーん、何がいい?」
「ちょ、ま──「無難に佐藤さんとか? 佐藤くんも捨てがたいね。佐藤殿、佐藤様だと年賀状みたいになってしまうかな」
近所のお兄さん系タケシくんは、何か喋ろうとしているみたいだ。
まぁ、それがボクの喋りを止める理由には、ならないのだけど。
「タケシくんでもいいかな? タケシと呼び捨てにでもしようか、それは嫌かな?」
「わかった、仕方ない、譲歩しよう」
「タケっちにしよう。どうだろうか、たまごっちみたいで可愛らしいだろう?」
「よ、ようやく止まった……」
目の前の男、タケっちは、なんだか疲れた顔をしている。
なんでだろうか。
まぁ少なくとも、ボクが理由なことだけは無いだろうと、そんなことを考えた。
「予想以上に変な子だなぁ……」
そう、トホホ、といった様子で、小さく呟く彼の声は、聞こえていないことにした。
「……まあ、いいや」
そう呟いて、タケっちはボクへ向き直る。
小さく、ため息を吐いて、肩を竦めながら
「とりあえず、外に出よっか、戯楽くん」
穏やかな、少し疲れたような表情で、彼は言う。
「外?」
「軽い、掃討任務だよ。もう既に、この近くの魔物はあらかた片付けているし、体験には持ってこいな任務さ」
問えば、タケっちは大きめの盾を片手に、そう返す。
「あ、そのメリケンサック、後でしっかり手入れしといてね。武器はちゃんと管理しておかないと、危ないからね」
タケっちは、そのまま出口へ向けて、歩き出す。
……ふふっ、なんかよく分かんないけど、とりあえず行ってみようかな。
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ep36:無遠慮かつマシンガントーク




