ep27:聖徳太子にはなれない。
えぇ……、なにあれ。
視界の先には、巨大な火の玉。
遠目からでもわかるあの大きさは、異次元だ。
僕が十人ほどいたとしても、出来るかどうか。
あの火の玉からは、しっかりと魔力を感じた。
手を翳して、それを形成しているのは、4人組の中にいた、一人の女。
その隣には青年が一人に、すぐ近くには男女二人。
なんて言うか、主人公パーティー? という言葉が良く似合う。
確か、あれは……ダンジョンからの帰還者でニュースとかに乗ってた、高校生の……うん、よく覚えてないや。
いやぁ、派手な魔力……魔法とかかな? 凄い魔法だなぁ。
殲滅戦専用みたいな派手な技だ。
ボクもやってみたいな。
手元でカラフルに光り輝いて収まらない魔力を見ながら、そう考える。
遊んでたら調整に失敗したのだ。
もう3時間くらいは経ったのに、一向に戻る気配もない。
この状態で街中でも歩けば、さぞかし有名になれるのだろう。
現に今もなっているしね。
周囲からは、異物を観察するような視線。
横目に見れば、瓦礫の合間には被災者達が。
ニンマリ笑顔で手を振れば、直ぐに引っ込んでしまったよ。
「ははっ、つまんな」
そう吐き捨てる。
彼らが去った方向を一瞥して、歩き出す。
近くの電柱に魔力の糸を絡めて……
大ジャンプってやつだね。
弩の様に、魔力の糸で身体を跳ね飛ばす。
あぁ、先程の4人組に、逃げていった被災者達。
今まさに魔物と戦っている集団や、たくさんの人が集まっているコミュニティとか、ここからは、良く見える。
景色としては、最悪なのだろうね。
街中瓦礫だらけで、建物は半壊していて、遠くには無事な建物群。
あれかな、格差社会の風刺画とかでありそうな景色だ。
血だらけで、死体だらけ。
そんな、汚い景色。
……ふむ。
そういえば、魔力ってのは、脚に纏って強化したり、糸の様にして、今みたいに飛んだりと、結構色々出来たよね。
地表に背を向けて、考える。
例えばだけど、こんなのは行けるのかな?
魔力が、円を描き、ぐるぐると。
速度を増しながら渦巻いて行く。
体内の魔力を耳に押し当てて、コーティングするように、塗り広げて──
「──あっ」
『こちらは被害が……』『ありがとう、あなた達のおか……』『魔物の肉など食えるわけ……』『僕達はたまたま助け……』『なんで空が虹色に光っ……』『国に救助要請を……』『まだあの子達が中に……!』『グギャァ』『ど』『う』『か』『助け』
「──ァ"ガッ」
──激痛。
頭がッ、捩じ切れる。
突如として頭に痛みが襲う。
魔力を消し飛ばして、空中に転がり込む。
「ふはっ、ふははっ、アハハハァ、フハハハハッ♪」
いいねェ、魔力!
最高に良い。
便利なだけの力ではないんだ、やっぱり。
なんて不可思議で、面白い力なんだ。
「……あー、うるさいなぁ、ほんと」
耳の奥に、たくさんの人達の声が、こびりついていて、離れない。
頭を押さえながら、呟く。
これは、ダメだね。
このままじゃ、使えそうにないや。
さっき聞こえた声の、その一つを思い出す。
まだあの子達が中に……だっけかな。
「あの子達、ねぇ」
落ちていく身体をそのままに、見下ろす。
瓦礫の向こうにある、その方向を。
「面白そうじゃぁないか」
目の前の景色に、綺麗なんて言葉は似合わない。
そんな、濁りに満ちた景色だった。
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ep27:聖徳太子にはなれない。
まぁ、万能な力がデメリットなく扱える訳ないってことですよ。




