騎士の条件
「剣は、殿方が振るもの! あたくしには、理解できませんことよ」
オホホホと彼女は笑った。
なのに、なんで、ここにいるのよ!
などと、ちょっと意地悪なツッコミを入れてみた。
あんなにソワソワしちゃって、ほんとっ、正直な子。嘘をつかないって、行動のことよね。
男の人の声がするたび、彼女は、ひゃっと声を上げ、すぐに、あたしの服の裾を掴む。そして、肩に身を寄せては、キョロキョロと……。
そんなに引っ張ったら制服が伸びちゃうわ。
でも、やだっ、この子たらっ、やっぱりかわいいっ!
抱きしめちゃおう!
えいっ!
「こらっ、やめてよぅ、はなれてぇっ!」
いつものご年配のメイドさんは、そんな彼女のかたわらに静かに立っていた。
ずっと専属なんだろうなぁ……。
彼女の髪に頬を寄せて思う。
早く、稽古場に入りたい。そして、剣闘会に出場するために、学園に認めてもらわなきゃ。
なのに、男子ときたら……。「女性の方が入るところではない」とか、「空気が汚れる」とか……。
なによっ! 野外なんだから、一緒の空気でしょっ!
男子のばぁーかぁー!
イライラは、シンディーちゃんで発散!
えいっ!
「だから、ギュッとすんな!」
と言ってるわり抵抗しないんだよね、この子……。
あっどうも。
彼女のメイドさんと、また目が合っちゃった。
シンディーちゃんの髪のかおり……。あたしより、背が高いのに、赤ちゃんみたい。
「いい加減に、はなれろぉ」
遊び盛りの子犬のようにジタバタしだした、仕方ない、解放をしてあげましょう。
なんと、この日は、稽古場に入れまま放課後になってしまった……、トホホ……。
指導教官から提示された条件が、
「自分で仕留めた野獣の首を、持ってきて頂きたい」
だなんて……。
簡単じゃない!
これなら数日で、多分いけるわ!
シンディーちゃんも、オホホホって笑ってぐらいなのよ!
これは、いける!
騎士学校の講義は、歴史以外は選択制で、午前中に終わる。午後に森に探せば、野獣とだって出会える、はずよ。
お屋敷の周りは、自然が豊かだし。
帰ったら早速、挑戦しなきゃだよね!
食卓で軽いランチを済ませた後、セバス爺に午前のことを話した。
「ほお、そのような条件を提示されましたか……」
セバス爺が腕を組んだ。
「お嬢さまには、ちと、厳しい条件ですな」
あら、そうなの?
野獣って、野生動物よね……。うさぎでも良いのよ。
あたしって、どんくさいから、うさぎなんか見つけられないってことかしら? うさぎは、外敵に敏感っていうし……。
「今のお嬢さまには、出来ますまい。今ごろ、ご学友のシンディーさまも、きっと悩んでおられます」
「条件は首なのだから、罠でうさぎを捕まえれば、簡単だと思うの」
そう、戦う必要は、ないのよ。首を切り落として、殺すだけよ……。
「あのあの、お嬢さまに来客です」
来客?
「ランスロット?」
メアリーちゃんは、「あの〜、それは〜」と歯切れが悪い。
違うなら、違うとはっきり言えばいいのに。
「ほうほう、お嬢さまは、小僧のことを考えてらしたと、それなのに、あれときたら」
ほら、メアリーちゃんが、はっきりと言わないから、お爺ちゃんのセバスが、得体の知れないものを喉につまらせたみたいになっちゃってる。
「彼以外、訪ねてくるような人は、思い当たらないだけよ」
友達といえば、シンディーちゃんぐらいだもん。
「いえいえ、アンドリューさまも、情熱的です。今朝だって……」
ないわー、それは、ない。
「メアリーちゃん、それで、どちら様がいらしたの?」
「シンディーさまのメイド、ヘンリエッタさまです」




