食費が足りないからギルド行こう
しばらくして、アリスの話が終わった。
ライト達はしばらく黙考した後、落としたワイバーン達を蘇生しに行った。
「んで?お前らは何?」
「俺達は今のであんたに救われた。ということになった。他の落とされた同士はあのいけすかない剣士とひょろ魔導師の仲間入りをしたようだ。大変遺憾ではあるが、あんたに仕える」
「ええ~……」
ということで本日新しい仲間が増えました。
一人はワイバーン隊新兵シュカ。緑髪で中々のナイスバディな女性になれる。大事な部分だけはしっかりと羽毛のような物で隠されている。正直それでも触ってみたいと思うのはいけないことだろうか。
で、一人は長く伸びた紺色の髪を持つセイル。性別は男だが、女性顔負けの美貌を持つ。つかぶっちゃけ女にしか見えない。女より女らしい男って感じだな。BLとかにいそう……ゲフンゲフン。
最後に。ぼっさぼさの黒い髪のギル。見た目はガキンチョだが、あのワイバーンの中じゃ一番強かったらしい。だがアリスに炎弾を軽くうち払われている。悲しい奴よ。
「あー食費どうしよ」
一通りの自己紹介を終えて、俺達はある問題に行き着いた。
「五人分は辛くね?」
「「「それは勝手に食べに行くので大丈夫です(だ)」」」
「どこに行く気だよ!つかそん時にお前ら討伐とかされないか怖いわ!」
そう。食費である。ここはゲームだから腹が減らない。なんてことはなく、時間が経てば眠くなるし、腹も減る。
そんなわけで、元々アリスと俺だけでも中々足りなかったのだが、こいつら三人まで入るとなるとかなりヤバいのだ。なので三人にも色々やってもらいたいのだが、三人共戦闘系のスキルばかりで、生活するためのスキルが全くと言っていいほどないのだ。
そして三人共食べに行くと言って出掛けようとしたところ、何処に食べに行くのか聞いたところ、初見殺しの森を越えたところにいるラピッドラビットを食べに行くそうで。血とかは流石に出ないが、どの魔物も死ぬ時は必ず辛そうに呻きながら、死んでいく。
あまりにもリアルなのだ。死に方が。
ベアとか、高レベルの魔物とかはアリスが魔法で消し飛ばしていたからわからなかったのだけども。この間一人で狩をしている時に、そんなものを見て一人ダウンしていたのだ。
「ではマスター。私達はどうすればよろしいか?」
「まぁ……遅かれ早かれ、行くことになるだろう場所に行くとしよう」
「?」
シュナ達だけでなく、アリスも首を傾げていたが気にしない。つかアリス、そんな無邪気な顔で首を傾げるんじゃない!萌え死ぬだろうが。
ということで一層のギルド集会所に来ているわけだが。
「さて。どれにしようか……」
「「「おおおおおお!!!」」」
「うわうるさ……」
「「「こんじ……アリス様がキタァアアアアア!!」」」
「おいコラてめぇら!今誰かアリスたんって呼んだよな!?ちょっと出て来いコラぁ!!」
「ぬん!邪魔だ。アリス殿。俺はギルド、トリテンドのギルドマスターのバルドラだ。是非アリス殿には我らのギルドへお入り」
「ちょってめ!」
「セイッ」
「へぶしっ」
「ワタシントコクルネ!キレーナヒト、イッパイヨ?アリスイル。ソシタラ、モッテモテネ!ワタシ、「ワタシタチ!アナタノタメダケニハタラキマス!」ギルドマスターノアッちゃんネ!」
「てめぇは変な勧ゆっくべしっ」
ゴロゴロドシャアッ。でっけぇ野郎に吹っ飛ばされて、集会所のテーブルとソファにクラッシュした。
「んの野郎……」
と、俺が立ち上がった時には、どのギルドマスターも轟沈していた。
「カズマ様!大丈夫ですか?!」
「ん。あぁ……」
俺がアリスに立ち上がらせて貰っていると、ヒソヒソと周りから声が聞こえてくる。
「ナンネアノカズマッテガキ。イケメンダガ、ドウセポイントツカイマクッタネ。アリスモアソビデ……」
「あいつ、確かアリス様によく引っ付いてる雑魚プレイヤーだぜ?つか様?アリス様に様付けされるとか、ほんと何様なんだよ」
「てかいつの間にか三人くらい取り巻き増えてるんじゃね?……なんか人間じゃなさげだけど」
「まぁなんかそういう種族になった奴らだろ。しかしまぁ、強い奴ばかり仲間にして、卑怯な奴だな」
「こっちは命懸けで攻略してるってのにな」
とゲラゲラと笑われる始末。
おっといかん。シュカ達が臨戦態勢に入った。まだ直立状態だが、殺気が凄い。奴らは気付かんのか。
「はぁ」
とりあえず俺は手でシュカ達を制して、アリスと共に立つ。
「カズマ様……」
「大丈夫だ。気にすんな。さて。こんな馬鹿共は無視して、ギルドつくんぞ」
「……はい」
「シュカ達もいつまでもそんな殺気を放ってないで、一緒にこいよ」
「「「はっ」」」
して。俺達は受付まで向かおうとしたのだが、ここでまた馬鹿が一人、声をあげた。
「おいガキ。てめぇ邪魔なんだよ。俺達はアリスさんを仲間にしてぇんだ。わかれよ」
無視して行くか。
それもいいが、シュカ達がそろそろ限界だな。つかキレやすいなコイツら。
「うるせぇな。お前らただ強いアリスを仲間にして、攻略組に追いつきてぇだけだろうが。んな奴らのギルドなんて入らせねぇ」
「お前の意見なんて興味ねぇんだよ。ヘイタ。捕縛しろ」
「ラジャ!バインド!」
デカイ図体したおっさんの後ろから、小柄な黒い影が出てきて、アリスの横に瞬間移動し、バインドでアリスの腕を縛った。
「な、何を……」
「てめぇ!アリスにさわんな!!」
「ぬん!」
「チッ……」
おっさんが俺の前に深く踏み込み、立ちはだかった。アリスはすぐに縄を解こうとするが、俺はそれをやめるように手を振る。
「お前みたいな雑魚と一緒にいさせるには、中々勿体無いのでな。無理矢理にでも連れていかせてもらう。それが嫌なら、戦って俺を倒せ」
とおっさんが言って、つか名前見りゃわかるか。ダグザか。ダグザが言って、対戦を申し込んできた。
「良いぜ。やってやる。ルールはどうするよ」
「ルールはライフがレッドゾーンになるか、相手が降参した時に勝利。それ以外はない」
「そうか」
「では……行くぞ!」
「来いッ」
ダグザの声と共に対戦が始まった。
ダグザはその巨躯に違わない大きな斧を振りかぶるが、あまりに大振り過ぎて、避けることは造作も無い。
「ちょこまかと!」
「大振り過ぎなんだよあんたは!」
俺は上下左右から襲い掛かってくる斧を寸でのところで避けながら、剣でダグザを斬りつけていく。
「コロナ!」
「コンッ」
コロナと呼ばれて出て来たのは小さな狐。その身体にはまた小さな火を纏っている。
「随分と可愛らしいパートナーだな」
「可愛らしいだけじゃない所を見せてやろう!」
「コンッ」
コロナがもう一度吠えると、ダグザの斧に炎が宿った。
「でぇい!!」
戦法変わらずダグザは斧を振る。俺は再びギリギリの所で避けるが……。
「ぐっ……」
通り過ぎるところで火が拡大し、少し掠った。
「攻撃範囲を拡大って感じか」
「さぁ。負けを認めるなら今の内だぞ?」
「ケッ。んな程度で勝ち誇るなよ」
と言えど。俺の相棒であるアリスは捕縛状態。シュカ達も妖精と同じような扱いなのか、参加出来るみたいだが、多分レッドゾーンとかそんなんなる前に一瞬で消し飛ばされる可能性があるから使えない。俺は何か特殊能力があるわけではないし。それなりに不利なのかもしれない。
「ぬぅりゃあ!!」
ダグザが先程とは打って変わって大きく斧を振り上げ、中々の速度で斬りかかって来た。
「術技か!」
「でぇりゃ!!」
左右交互に二回ずつ振り下ろしたあと、一回転して大きく横に一薙ぎ。俺はそれをかろうじて受け止め、後退する。
「くらえ!ライトニング!」
「なに!?」
ダグザは驚き、防御態勢をとるが当たるはずの雷撃がない。つか俺ライトニング使えないしな。
「隙ありいいいいいい!」
「なんだとおおおお!?」
俺は術技一閃を使ってダグザの腕を斬り落とした。ついでに斧も落ちた。
ちなみにこのゲーム。痛みは発生しないが、斬られた時の不快感は中々消えないので、凄く気持ちが悪い。
ライフバーもどんどん減っていくし。
かなり怖いんだよな。
「さて。あとはあんたのライフバーがレッドゾーンになるまで待てば良いんだな」
「こ、この……」
「カズマ様!」
ブチッとまるでなんでもないかのようにバインドを解き、俺に近付くアリス。そして、その光景を唖然とした表情で見るダグザとヘイタ。
「そ、そんな。俺のバインドがこんな直ぐに解けるなんて……」
「いや、それよりも一対一の対戦で何故アリスさんが奴に触れられるんだ」
「確かに……対戦中は他のプレイヤーはってダグザさん負けてますよ」
「あぁっ!?くそ……」
アホ二人が唖然としている中、ピロリロリンと最早何回聞いたのかわからないレベルアップ音が流れた。
「な、なぁもしかしてアリスさんって……妖精だったりするのか?」
「……カズマ様」
「そうだよ。アリスはヴァルキリーだ。そして俺の伴侶でもあぶほっ」
真っ赤に照れたアリスのボディブローが俺の腹に深く突き刺さった。
「アリス、痛みはないけど、あんま殴んのはやめといてくれる?」
「あ、はい。すいません」
「いや、大丈夫なんだけど、癖になるといけないからさ」
「はい。わかりました」
「シュカ。ここはダメそうだから二層まで行きたい。乗せてってくれるか?」
「はっ」
シュカは頷くと、二人を一瞥し、集会所の外に歩き始めた。
「あ、ヘレナも呼ぶか」
「そうですね」
「じゃ、一回メール送るわ。だからシュカちょっと待って」
「……はい」
「いやぁメール機能があるのはやはり素晴らしいな」
そして集会所に何故かダッシュで来たヘレナと共に二層へ飛んだ。