リアル過ぎは良くない
「すげえええええはえええええ!!」
今俺達アリスとその仲間達は、ワイバーン三人組の背に乗って高速飛行中なのだ!
『主よ。あまり話すと舌を噛みます』
「警告じゃなくて肯定された!?」
と俺は超ふざけていたが、ヘレナはセイルの背にしがみ付いて、全く話さずにいる。こえーのかなやっぱ。
アリスはギルの背に体全体を預けて寝ている。うん。ヤバい凄技。
しかし、この空の旅は中々楽しい。もう少し上に行ければあの柔らかそうな雲も掴めるんじゃないかと思ったりもする。が、日本とかで山とか登る際に酸素が薄くなると同様こっちも薄くなるようで、どんどん辛くなって行く。ので、行かない。
『今から二層に行くための洞窟に入る!人型になるから降りるぞ!』
「もう終わりかぁーーー」
『主。また私が飛んで差し上げましょう。アリスも一緒に』
「おう」
ヘレナを待っている間に、アリスがシュカに色々言っていたようで、さん付けが無くなっている。まぁ仲良くしてくれればそれでいい。
『降ります。掴まっていて下さい!』
「おうよ!」
シュカが降りた場所には入り口が三メートルくらいの大きな洞窟があった。
「レイドボスはもう倒されてるから、後は通るだけだな」
「主よ」
「ん?」
人型になり、その豊満な胸を揺らしながらシュカが近付いてきた。……エロい身体付きしてるのう。
「何故、ワープゲートを使わないのですか?」
「ん?何それ?」
「それ、私も思いました!」
ヘレナもそれに続いて言う。
「もしかして知らなかったんですか?」
「あ、えーと、その、はい」
「飛ぶ時はただシュカさん達に乗って空を飛ぶのを満喫したいのかなって思ってましたけど、ワープゲートを知らないだけだったんですね」
ワープゲートかぁ。そんな便利そうなもんがあったのかぁ。
ヘレナは怖がってたしな、悪いことしたなぁ。
「なんかごめんな、ヘレナ」
「な、なんで謝るんですか?」
「ちょっと怖がってたろ?ワープゲート知ってれば、そういうことはなかったわけだし」
「いや、大丈夫です。気にしないで下さい。それよりも、後ろ、ウルフ達来ているみたいですよ」
「ほんとだ」
後ろからウルフが、四匹接近。
「一匹デカくね?」
「あれは確かウルフェンですね。ウルフより少し強めですけど……」
と、ヘレナがシュカ達を見て言った。
「力の差があり過ぎると思います」
「主よ……」
「はい。食って良し!俺は後ろ向いてるからな!一匹も逃すなよ!」
「「「はっ」」」
と、言いながら観察タイム。
シュカ達が一斉にワイバーン化して、ウルフ達に襲い掛かった。
「キャウンッ」
「ガルッガッーー」
「ガッ」
ウルフ達から短い断末魔が上がり、ウルフェンはそれを見て、雄叫びをあげ、飛び掛かった。
「ガルルルァッ」
『自分よりも強い者を見て、逃げ出すことをしない勇気。素晴らしい。一瞬で息の根を止めてあげましょう』
シュカはウルフェンを風で吹き飛ばし、その大きな脚で踏みつけて、口を開いた。
「ガルアッ」
『さよなら』
その一言と同時、シュカの口から火炎が吐かれ、ウルフェンを焼いた。
つか一瞬っつったけど、焼いて苦しめてね?
「……」
「残酷だな……」
「……そうですね」
ほらぁー。ヘレナとかもうブルーになってるじゃん。普通こんなもんだって。
と、焼き終わったのか。シュカがウルフェンを宙に放り投げ、落ちて来たところをがぶり。あとはご想像に任せよう。バギッバギッグチャッと嫌ぁな音が流れるがどうしようもない。
「FSOはこういうのがリアル過ぎて怖いな。現実よりもリアルな気がするし、何より、プレイヤーが倒した時はアイテムが出て、死体は消失するのに、魔物同志だと消えねえってのはな。ほんとにリアルと一緒じゃねぇかって思うんだわ」
「そうですね……」
「まぁこれはただのゲームじゃないし。当たり前なのか」
「それにしても……」
俺は元々、ここで生きていくつもりだから、納得するしかないが、ヘレナはリアルに帰りたがっている。だから、こういうのはあまり見たくないのであろう。慣れてしまったらもうFSO側の人間ってことだからな。
「ご馳走様でした」
「お、アイテムがあるな。マスター。ウルフェンの毛皮が残ったぞ」
「……もしかして路上に落ちてる魔物のアイテムってこうやってできてるのか?」
「大体そうですね」
シュカが頷き、セイルが毛皮を拾い、俺に持ってきた。
「ウルフェンの毛皮は三層で役に立つので、持っておくべきです」
「ん。そうか。わかった」
俺は貰ったウルフェンの毛皮をアイテムボックスに入れ、俯いているヘレナの肩に手を乗せ、出発することを伝える。
「もう、大丈夫です。行きましょう」
「無理そうならおぶってやるから言えよ?」
「いえ。大丈夫ですよ。ほんとに」
「そうか」
ってなわけで、やや暗くなった雰囲気のまま二層に続く洞窟に入った。
中は静かだった。僅かに、水の落ちる音や、風の通る音が聞こえる。
「暗いな。シュカ。なんか照らす魔法とかあるか?」
「ありません。けれどこうやって」
シュカが宙に手をかざすと、ぽっと小さな火の玉が現れた。
「火を灯すくらいならば可能です」
「他の二人もできるか?」
「できますよ」
「頼む。んでセイルは後ろを警戒。ギルは前を。シュカは真ん中にいてくれ」
ギルとセイルにも火の玉を作ってもらいそれぞれ移動してもらう。シュカの場合は目の保養にもなる。
「つってもこの面子なら、魔物の一体や二体、相手にならないだろうけどな。しかもシュカ達が倒してもレベル上がるみたいだから、俺やアリスも自然に強くなれるし」
てか俺危険察知スキルが未だに発動することがない。まぁ危ないことはしてないのだけど。
「ま、さっさと進もうぜ」
「はい」
しばらく進むと一際大きな扉を発見。
「ここかな?二層に続く部屋は」
「そのようですね」
「索敵スキルも一応今使ってみる」
「もう使いましたが、中には何もいません」
「……じゃ、行こーか」
「ふふ。よしよし」
ちょっと先を越されて、残念に思っていたら、アリスが微笑み、頭を撫でてくれたので良しとする。むしろ全然この方が良かった。
「レッツオープン!」
ギィイイイイと重々しい音を立てて開く扉。その中に入ると、急に扉が閉まった。
「なに!?」
「反応は何もなかった筈じゃ……」
そこには十人程の人影があった。
「クックックッ。まぁた来やがった。今日は大漁だな」
「はい。こんにちはぁお嬢さんと野郎共ぉ。貴方達は今日、人生から卒業しまぁす。うひゃっひゃっひゃっ」
三人くらいが釣られて笑い出す。いや、それよりもコイツら、俺達を殺す気か?ハイディングで隠れてやがったのか。ここでPKするために。
「お前ら残念だったなぁ、どうせレベル上げてから二層まで行こうみたいな感じでここを通ってたんだろうけど、ほんとに残念だったなぁ」
「ここは俺達グリムリーパーの拠点の一つなんだなぁ」
グリムリーパー……?殺人ギルドのグリムリーパーか!!
「さぁ。女子供はあとでお楽しみに、使わせてもらうとして、野郎共は死んでくれて鎌わねぇ。お前ら!さっさと殺ってヤるぞ!」
「「「おおおおおお!!」」」
グリムリーパーの十人は雄叫びを上げて、一斉に斬りかかって来た。
「アリス!ヘレナを抱えて逃げながらライトニング!ヘレナは支援魔法で皆を強化!シュカ達は各自得意な戦い方で!俺は……頑張る!」
「「「はっ(はい)!」」」
俺は皆に即座に指示を出し、前に迫る奴らを迎え討とうとした瞬間。敵全体が炎と雷の入り乱れる魔法で吹っ飛ばされた。
「がはっ……なに……が」
グリムリーパーの一人が呻きながら、周りを見て言った。つか俺もおんなじ気持ちだよ。今の何?
「無詠唱でヴァニシングボルトを使いました。ライトニングとフレイムボルトの進化系で中級魔法です」
「アリス、いつの間にそんな魔法を!?」
「最初から覚えてましたけど。ただそこまで使い道がなかったので……」
まぁ確かに大体ライトニングの一撃で消し飛ばしてたもんな。
「つかそのライトニングよりも強い中級魔法くらって生きてるあんたらってどんだけレベル高いんだよ」
「くっ……クソが……なんでこんな化け物がこんな階層にいるんだ……」
「ラドルさん、ここは逃げて下さい、俺達が壁になりますから!」
「ルゥタ、お前ら……すまねぇ!!」
なんか俺達悪者みてえだけど、これ普通に小隊のリーダー逃して、俺達を倒すためにパーティ組んでくるって感じなんだろうな……。
「アリス。殲滅できたりする?」
「出来ますが……よろしいのですか?」
「ここで逃がせばまた襲われるかもしれない。俺達が負けない保証なんてない。だから、頼む……」
「……わかりました」
アリスは深く頷き、ラドルが俺達に背を向けた瞬間、叫んだ。
「ヴァニシングボルト!!」
「させるがっあああああ!」
大きな雷撃と爆発音と共にラドル達は消し飛んだ。
「……あ、あぁ……」
「……ヘレナ。やらなきゃ、時期に俺達がああなってたかもしれないんだ」
「……」
「アリスもごめんな」
「……決めたのは私です。拒否することも可能だった。でもやったのは私です。だから謝らなくていいんですよ」
「……ありがとう」
不意にラドル達がいた場所を見ると、ラドル達が装備していたらしい物や、アイテムが転がっていた。
「……もらってくか。一応金にはなるだろ」
「はい」
俺達は陰鬱な気分のまま、アイテムを集め、二階層に続く階段を登った。




