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私、ヘレナって言います!

短いです

4話 私、ヘレナっていいます!



 さて。これからどうしたものか。女の子はあのまま一日中起きずに、翌日の朝に起床。

 そして名前を聞こうとしているのだが……。


「……」

「––––」

「はぁ」


 全く返事が返ってこない。昨日の恐怖がまだ残っているのか、それとも、信用出来ないのか。


「どうしよっか」

「……」

「とりあえず、飯買ってくるから、アリスはこの子と一緒にいてくれ」

「––––」


 コクンと頷き、女の子……と呼ぶのが面倒なので少女Bと呼ぶことにしよう。ちなみにBとは髪の色が青かったからBにしただけだ。Aがいたわけではない。


「じゃあ行ってくるわ」


 装備をお出かけ用の服に替えて、宿を出た。




 ちょっとかっこいいお兄さんが出て行ってから少し経った。でも、確か私はウルフに囲まれていたはず……ユーカを追いかけて、草原に出たら、目の前で……。


「いやぁあああああ!ユーカぁああああ!!」

「––––!?––––。––––!」

「いやぁ!来ない……あれ?え?」


 隣で凄く綺麗なお姉さんが私を撫でてくれています。凄く心配してくれているようなのですが、何を言っているかよくわかりません。まるで妖精さんみたい。


「……」


 どうしよう?凄く心配されてるけど話して大丈夫なのかな?そもそも言葉がわからないし……でも、さっきの男の人はこの人と話、してたし……。


「あ、あの、私」

「––––!––––いよ」


 女の人が驚いた顔をしますが、すぐに優しく微笑んで、また頭を撫でてくれます。その手がまた暖かくて柔らかくて……。


「た、助けてくれてありがとうございます」


 私はとにかく一回お礼を言うことにしました。相手が誰であれ、命の恩人には間違いないのだから。そう考えるとあの男の人に悪いことをしました。話を聞いたことに間違いが無ければ、食べ物も買ってくれるみたいですし。

 あの人が帰ってきたら、ちゃんと話そう。


「あの、私は––––」

「ただいまー!」

「ひぅ……」


 バタンッと扉を開けて男の人が入って来ました。さっきの人です。


「––––!」

「おおい!何怒ってるんだ!?アリス!?ちょ、マジごめん!許して!?なんで怒ってるかわからないけど」


 あれぇ……??と首を傾げる男の人。


「あ、あの!」

「お、おう!?少女B!?あれ?喋れるようになったのか?あ、つまりなんか邪魔しちゃったのかな俺」

「……」


 女の人……アリスさんがお兄さんは睨むと肩を竦めて、苦笑している。そしてお兄さんが私にしゃがんで言った。


「ごめんな?せっかく話してくれるってのに、話止めちゃったみてぇで」

「いえ、もう大丈夫です。ありがとうございました」

「そっか。でもまぁ、無理すんなよ?辛かったらここいていいからよ」

「はい。でももう大丈夫です」


 これ以上迷惑を掛けてはいけない。そう思い、言ったのですが、また「無理すんなって。すげぇ辛そうな顔してるぞ」と言われてしまいました。

 こういう時はこの精密過ぎるFSOの表現力を恨みます。


「つかよ。これからしばらく俺達と行動しねぇ?とりあえずパーティ組んでよ」

「え?」

「まぁ、この世界で一人ってのは中々不便だろ?つかこえーだろ。俺はアリスがいるからこそ、元気なだけだし。で、見たところ魔法使いみたいだし、前衛職が味方にいた方が良いんじゃないかなと」

「い、良いんですか!?」


 男の人に聞き返すと、うんうんと頷いてくれました。アリスさんを見ると、さっきみたいに優しく微笑んでくれました。


「じゃ、じゃあお願いします!」

「んじゃまず自己紹介。俺はカズマ。種族は人間のまま。あとあんま信じられないかもしれんが、容姿もこのままで、運動神経抜群、頭は……まぁ勉強なんか出来なくても俺にゃ関係ないな。ってなわけでよろしく!」

「––––スです」

「この隣のブロンドウェーブヘアーで蒼い目で超綺麗な白い肌の美しい女性はアリスだ」


 二人が自己紹介を終え、二人ニコニコしながら私を見る。アリスさんは心なしか頬を赤く染めてます。照れているんでしょうか?

 とりあえず、私自己紹介していいのかな?良いよね?


「えと、私、ヘレナって言います!種族はエルフです!魔法使いをやっています!よろしくお願いします!」

「おう!」

「ーー」

「つーことで飯食おうぜ!」

「はい!」

「ーー!」


 そして私達は、ゲームとは思えない程美味しいパンを食べて、これからの話をしました。前のことは何も聞かないでいてくれました。

 ユーカ、私、頑張るから。




 で終わると思ったかー?終わらないぜっと。んなわけで魔法少女ヘレナちゃんが仲間になりました。はい拍手!冗談です。ほんと調子こいてすんません。


「ショップでメモ帳があったので、買ってみた」

「?」

「なんで買ったんですか?メモ帳」

「これから日記をつけようと思うんだわ。交換日記」

「交換日記……ですか」

「俺達あったばかりだし、互いのことを知るのも大切だろ?これから一緒に戦ったりするわけだし。アリスは……書けるのかな?」

「––––」


 俺が問うと、ジェスチャーでペンとメモ帳を要求してきたので渡す。


 待つこと数十秒。


「おおおおおおおおおおお!!」


 メモ帳に書かれた文面はまんま日本語でしっかりと内容がわかった。書かれた内容は「アリスです、カズマ様。伝わりますか?」ってのだけだがな。


「––––!」

「超良いなこれ!でもこれアリスだからこそ成せる芸当だよな」

「そうですね。この子じゃペンは持てませんし」


 と言いながらいつの間にか肩に乗っかっていたリスを撫でるヘレナ。


「つか、この子がヘレナの妖精?つかもうペットじゃね?」

「はい。この子全く戦闘はできませんし、ペットみたいなものです」

「ふーん。名前は?」

「カリンです」

「そうか。じゃあカリンも仲良くしてくれな?」


 そう言って手を伸ばすとその手の上に飛び乗り、そのまま肩まできて、頬ずりをしてきた。


「おぉ。よろしくなカリン」


 それに頷くとまた俺の腕を伝い、ヘレナの肩に移った。


「ってなわけで最初の交換日記は言い出しっぺの俺から……どした?」


 アリスが私から書きたい!って感じにジェスチャーしている。


「ん。じゃあアリスからな。次は俺で、その次にヘレナってことでいいかな?」

「––––!」

「大丈夫です」

「よっしじゃあ決定!今日はこれで解散!つかヘレナはどこで寝泊まりしてんだ?」

「ここの一階下の部屋だと思います。ここ、普通の宿ですよね?」

「あぁ俺達は別にギルドとかまだあんまりって感じだからな。伸び伸びやりたいし」

「そうなんですか。じゃあ私今日はもう部屋に戻りますね」

「おう!」

「昨日は助けてくれてほんとにありがとうございます!」


 と一言言って部屋を出て行った。


「良い子だな」

「––––」


 アリスが微笑みながら頷いて肯定したので、俺も笑顔で返した。


「じゃ、寝るか」

「––––」


 アリスが少し頬赤く染めていたが、ただ恥ずかしいだけだろう。

 ということで今日も同じベッドに寄り添って寝た。素晴らしい。今間違いなくこのゲーム内で一番幸せです。


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