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昔の話。

あと九分早ければ、早ければぁああ

「どうしてまた来てんだよ……」


現在、呆れ顔をしたフィルに会いに来ている。


「いやぁ、帰れないんで。ついでにさっきの話の続きをーー」

「この者らを望む場所へーーゲート」


フィルがゲートという魔法を使うと何もないところに裂け目が出現した。


「おおっ!じゃなくて、話を」

「数多漂う死した魂よ!その絶望を糧に我の力、闇の精との契約において彼者を虚無の闇へ葬ることを命ずる!」

「ああぁっ!カズマ様!早く行きましょう。早く行きましょう。フィルの気が変わらないうちに!」

「な、なんだよ、やっと秘密がわかるってのに、え、押すなよ……ってか持ち上げるなよ!恥ずかしいだろ!」


最終的にアリスにお姫様だっこされてゲートを潜った。

その先はーー


「ふぅ」

「戻って、きたのか」

「そのようだねぇ」

「ナタリア」

「あ、ありがとうございます」

「あー死ぬかと思ったぜ」

「確かに危なかったですね」


それぞれがゲートを出た時点で、ゲートは閉じた。


「まぁ、また行った時に聞けばいいか」

「そうですよ」

「んじゃとりあえずギルド戻ろうか」

「はい!」

「んでそろそろ下ろして……」

「あ、すいません……」

「私は私で撤収するかねぇ」


サイカさんとは別れ、俺はお姫様だっこから解放され、ギルドに向かうのであった。




「た、ただいま〜」

「主!」

「よ、ようセイル」

「無事でしたか。こちらは何もない……と言いたかったのですが」

「ヘレナ、まだ帰ってないのか」

「はい」

「あ!カズマさん!」

「おーシロ。ただいま。皆は?」

「……」


何故かフルフルと震えて黙り込むシロ。どうかしたのか?

まさか、死んーー


「今までどこに行ってたんですか!!ヘレナさんもカズマさんもジャックまで連絡とれなかったし、凄い心配したんですよ!?おまけにいきなりシュカさんとギルさんがいなくなっちゃって、僕らはどうしていいか……」

「すまん。でも俺達も大変だったんだ」

「とにかく皆を一回集めますよ」


ちょっとイライラしてる感じのシロが皆にメールを飛ばして行く。つか、フィルの言うとおり、ここが異世界なら何でメールとかアイテムボックスとかあるんだ?ん?つかメール来てんな。シロ達のメールがめっちゃ来てる。通信できるようになったからか。皆心配してくれたんだな。あれ?最後違うな。

フィル……だと?


「アリス、フィルからメール来た」

「そうですか。ってええ?!」

「とりあえず開いてみる」


フィル


件名報酬。一応ボスだからな。


ハイポーション 10

復活の指輪 1

ファントムキラー 1



「っとなんかなハイポーション十個と復活の指輪ってのと、ファントムキラーって剣貰った」

「ハイポーションって……」


各自鑑定っと。


ハイポーション


HP五割回復。


復活の指輪


つけてると死んだ時一回だけ蘇生してくれる。すげぇ!とりあえずアリスに……渡すと絶対着けろって言われるような気がする。


俺もそんな気がする。

残るファントムキラーは、っと。


ファントムキラー


霊体の敵も完全に斬れる。

ちなみに威力も超強いからそこら辺の敵も楽勝!

十五階層くらいまでなら余裕余裕。


「とりあえずすげぇよアリス。これで俺もある程度戦えるぜ」

「そうなんですか」

「他の奴にも送られてんのかな。ジャック!」

「なんすか?」

「フィルを倒した時の報酬入ってるか?」

「入ってるわけないじゃないっすか。俺はその戦闘参加してないっすよ」

「あーそういやそうか」


じゃあこれ貰ったのサイカさんと俺だけなのか。

つーか、フィルプレイヤーみたいなこともできるのか。まぁGMだからか?あ、話できねぇかな。返信してみよう。


ん。宛先が存在しないとか。ったく。返信は出来ないのかよ。

まぁいいか。


「カズマさん。皆集まりましたよ」

「おお、マジか」


フィルのメールみたり考え事している間に、皆が揃っていた。


「さって。どこから話せばいいのか」



そして俺はスカーレットのことや、二十二階層のボスを倒したことを伝えた。ここが本当に存在する世界だということは伏せておくことにする。

ついでにナタリアさんの紹介もしておいた。


「大変……だったんですね」

「まぁな。まぁ全員無事だったし。いいんだよ。んで、次はお前らだ。俺らがいない間何があった?」

「アップデートで街が混乱したり、カズマさん達を捜索するのが大変だったのはありますが、危険なことはなかったです。しかし、ヘレナさんがギルドからも抜けてしまったようで……」

「勝手にか?」

「はい」

「そうか……」


あの時止めていれば……これは回避できたのだろうか。

わからないが、今後悔しても遅いな。


「とりあえず、今日は解散して、また明日今後のことを話そうか」

「「「はい」」」


そしてその場は解散し、部屋に戻った。


「あー懐かしの我が部屋!そんなまだいないけどな」

「そうですね」


隣にはアリス。アリスもそれなり疲れているようで、少しくたびれている。


「とりあえず座ろうか」

「はい」


二人でベットに腰掛ける。その際、装備は解き、パジャマになる。

アリスもパジャマを着せる。

っつか今更ながらこの世界にパジャマって世界観破壊してねぇか?もうちょっと村人風な服とかさ、そういうのだろ普通。まぁいいけどさ。楽だし。


「な。アリス」

「なんですか?カズマ様」


アリスは俺の肩に頭を乗せ、俺の手を握る。温かい。んで、柔らかい。


「俺さ、この世界にくる前、病気でな。少ししたら死んじゃうとこだったんだ」

「……」


アリスは何も言わないが、少しだけ手を握る力が強くなった。


「でな、このFSO、アリス達の住む世界に出会った。それまでバイト……まぁ仕事で稼いだ金全部はたいて、この世界に入る為の機械を買ったんだ。これを買うちっと前にな。妖精の紹介で、アリスを見たんだ。ヴァルキリーは三人までで、ある特殊な条件を満たすと、選択画面、妖精を選ぶところで出現するってあってさ、俺はどうしてもアリスと会いたかったんだ」

「どうして、会いたかったんですか?」

「聞きたいか?」

「良ければですが」


アリスは少し遠慮気味に、でも聞きたそうな目で言った。

俺は……答える。


「昔、小さい時なアリスっていう可愛い女の子の友達がいてな。ずっとその子と遊んでたんだ」

「……」

「ある時その女の子が倒れちまって、病院に行くんだ。んで、そのまま入院しちまってさ。それでも俺はアリスに会いに行ったんだ」




「アリス!」


俺が声を掛けると、窓から寂し気に外を眺めていたアリスがこちらを見た。

金色の髪が、太陽の光に当たってキラキラと綺麗だった。


「和馬!」


アリスは笑顔で俺の名を呼び、ベットから出ようとするが、


「降りなくて大丈夫だよアリス」

「うん」


それを制止して駆け寄る。そしていつものように外の話を始めた。


「今日は学校でな、優がな全校生徒一人一人に、喧嘩で勝つって意気込み出しててさ、まずは和馬!お前からだーって来たんだよ」

「そ、それで??」


優は背も高く小学二年生の中では喧嘩も強いと言われているのを知ってか知らずか、アリスは心配そうに、でも目をキラキラさせて聞いてくるので、俺もそのまま語る。


「俺は正面から立ち向かったさ。俺に勝てなかったら校庭十周なって言いながらな。もちろんアイツは乗ってきた。むしろ百周だってしてやらぁって叫んできたんだ」

「ふむふむ」

「それから優が蹴ってきたから、俺はそれを左手で受け流して、そのまま顎にパンチを食らわしてやったらさ、簡単にのびちまって先生に怒られちった」

「和馬強いんだね〜」

「それほどでもねぇよ」

「でも優って子強いんでしょ?」

「まぁな」

「それをやっつけちゃう和馬はやっぱり強いんだよ!」

「そ、そうか?」

「うん!」


何故かアリスは嬉しそうに肯定する。


「和馬、和馬〜」

「なんだ?」

「んーなんでもなーい」

「なんだよー」

「なんでもないよーだ」


そんなやり取りをしているとアリスのお父さんがやってきて、大事な話をするからと言われ、俺は家に帰った。


それからまた別の日。


「アリス、大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ」


アリスの顔色は少し悪く、入院前よりも痩せて見える。元から白い肌ももっと白く見える。


「今日は、大事な話、あるんだ」

「あ、あぁ」


何だろう、とは思わなかった。予想はついていた。

でも聞きたくはなかった。

でも青色の目に見つめられ、目を逸らすことはできなかった。


「私ね。もう少ししたら死んじゃうんだ」

「……」

「でね、私のお願い、一つだけ。一つだけ聞いて欲しいの」

「……」

「私、和馬のことだいすきだから、和馬に頼むの。だからお願いするの」

「……」


俺は何も言わず、頷いた。俺もアリスのことが大好きだったから。まだチビだったから、本当の愛とか、そういうのには程遠いし、好きってのも初めてだったから、簡単には説明出来ないけど、俺はアリスのことが好きだった。

だから俺はあいつの願いを、叶えてやりたいと思った。けど、その願いは俺にとって残酷なものでしかなかった。


「あのね、和馬。私のこと」


ーー忘れて欲しいの。


「え?」


何を言われたのかわからなかった。


「なんでそんなこと言うんだよ」

「お父さんがね、言ったの。和馬はまだ幼いし、健康だから、将来まだいっぱいできることがあるんだって言ってたの」

「そ、それが、なんで忘れることに関係あるんだよ」


アリスは凄く悲しそうだった。辛そうだった。それでもアリスは言った。


「私が死んでしまうことで、和馬が和馬でなくなってしまうかもしれない。だから、私を忘れて、私が死んでも、私にいつも聞かせてくれるみたいに楽しくして、笑って?」

「そんなこと、できるわけ……」

「お願い、和馬、文字通り、一生のお願い。私を、忘れて。もう病院にも、来ないで」


願われ、そしてやんわりと拒絶された。

俺はどうすればいいのだろうか。

アリスの願いの通り、忘れて暮らせばいいのか。悩んだ。


「アリス……」

「……」


アリスは黙っている。俯いて。


「なんで、アリスなんだよ……」


幼稚園からいつも一緒で、笑って泣いて怒って、ずっと一緒だと思っていた。なのに、なんで病気の一つでその幸せを奪われなければいけないのか。


「うぅぅ……ひっく……かずまぁ……」

「アリス……」


気付けばアリスは両目から幾つもの涙をこぼしていた。

そして、俺の目の端にも涙が溜まる。


「怖いよぉ、辛いよぉ……嫌だよぉ……なんで和馬と離れなきゃいけないの……」

「アリスっ……」


俺はそのままベットに乗り出し、アリスを抱き締めた。細かった。少し力を込めてしまえば、折れてしまうんじゃないかと思えるくらい。そして、体温も、いつもより低く感じた。


「かずま、かずまぁ……」

「アリス、うぅぅ……」


そして、二人して泣いた。


泣き疲れ、ウトウトし始めたアリスに俺は俺の決意を告げた。


「アリス、俺はアリスのこと、忘れない」

「和馬……なんで」

「寂しいじゃねぇか。忘れちまったら。悲しいじゃねぇか」

「でも」

「でもじゃねぇ。要するにだ。アリスが、その……いなくなっても今まで通り、笑って楽しめば良いんだろ?すぐにはできないかもしれねぇけど、それなら約束するぜ。んでアリスにまた教えてやんよ」

「教えるって、死んじゃったら会えないんだよ?もう、話せないんだよ?」


泣き疲れて、枯れた涙の筈なのに、それでもアリスの目にはまた涙が溜まり始める。


「俺がアリスを忘れない限り、アリスは俺の記憶の中に残る。そして心の中に生きるんだ。じいちゃんがばあちゃんが死んだ時言ってたことの受け売りだけどな」

「……」


アリスは静かに俺の話を聞いている。

俺も続ける。


「だからさ、アリス。俺はお前のこと絶対に忘れないし、これからも頑張って生きるから、忘れろなんて悲しいこと、言うなよ」

「和馬……うん。わかった」

「よし!」

「えへへ」

「どうしたよ、いきなり笑い出して」

「うーうん。なんでもない!」

「んじゃ今日は何すっか?」

「んーとねぇ……」


アリスは久しぶりにいつもの笑顔で、遊びの内容を考え始めた。


そして二週間後、最期の時が訪れた。


「おじさん!アリスは!?」

「和馬君……」


アリスのお父さんが指を指したその先には、目をつむり、安らかな顔で眠るアリスがいた。


「アリス!!」


俺は周りにいた大人達を退けて、アリスの隣まで行く。


「アリス……」


アリスは呼んでも答えない。


「和馬君……」

「あ、アリス…………」


もう、

一緒に笑うことも泣くこともない。

アリスは死んでしまった。


「うぅぁぁぁ……」

「和馬、君……」


アリスのお父さんが俺に心配そうに声を掛けてくる。自分の娘が死に、本当は泣いて叫ぶ程辛いはずなのに、俺を気遣ってくれている。それでも俺は反応しない。できない。


「あぁ……うわぁあああああああ!」


そして、泣いた。

これから先、泣くことが無いように。

時間の許す限り泣いた。



それからはずっと泣かなかった。

アリスに言ったとおり、人生を余すことなく楽しむことに全力を尽くした。やれることは何でもやった。

勉強はうまくいかないこともあった。それでも頑張った。

運動も目一杯頑張った。

親も俺を応援してくれていた。俺が疲れた時は支えてくれた。助けてくれた。

友達も沢山いた。

告白も何回かされた。

断ったが。

そんな俺を嫌う奴らもいた。

でも俺はそいつらも巻き込んで騒動を起こしたりした。迷惑も掛けまくった。でも楽しんだ。

楽しみまくった。

そして、毎日アリスに報告することも忘れなかった。

毎日が幸福だった。


月日は流れ、高校に入り、高校生活を満喫した。アニメとかで見るような、そんな面白おかしい生活ではなかったが、俺はそれを目標に生活してみた。

楽しかった。バイトもして、辛かったけど、お金を貯める楽しみもできた。

ある時、俺は目の前が真っ暗になり、倒れた。

病名なんか覚えちゃいない。

ただ、あと二ヶ月程で、俺の命は尽きるという話だった。

俺はどうしようもなかった。

せっかく、アリスに言ったとおり、毎日を楽しく、幸せに生きてこれたのに、それをまた病気の一つで奪われるのだ。悔しかった。

そんな時、FSOが発売された。

俺はなんとなく、それについて調べ始めた。何故そうしたのかはわからない。

ただどこか別の場所に行きたかったのかもしれない。




「そうして、アリスを見付けたんだ」

「……カズマ、様……」

「ま、そんなわけで、アリスと酷似してる妖精、お前を見付けて、会いたくなって、ここに来たわけだ」

「……そうだったんですか。では、私はそのアリスちゃんの……」

「おいおい俺はアリスをアリスの代わり、とは思っていないぞ。俺は今のアリスだって大好きだ。自信をもってそう言える。アリスは見た目こそ似てるけど、全く別人なんだ。そうであっても、俺はアリスが大好きなんだ。キリッとしてる時もあれば、ちょっと天然で、めっちゃ強いのに幽霊が苦手で、自分が辛くても他人に優しくできるアリスが、大好きなんだ」

「はい……私も、まだ短い期間ですが

、カズマ様が大好きですよ」

「おう。ありがとな。んじゃ、ちっと寝ようか。長話し過ぎたし」

「そうですね」


俺達は二人でベットに入り、手を繋いで寝た。

アリス、俺は今日も幸せだよ。





最終回的な終わり方ですが、

まだまだ全然続きます。

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