奮闘しまっす!
ギリギリ間に合わなかったー
「っらぁ!!」
一発一発、確実に拳を当てているのだが、全くと言っていい程、ダメージが通らない。
極殺拳で、辛うじて削れるだけの相手。それは、ゴーレムだ。
「んなもんまであるとは流石に考えなかったっす……」
俺は距離をとり息を整えるが、ゴーレムはすぐにそれを詰めてくる。
ちなみにゴーレムといっても、某RPGみたいに、デカいのではなく、二メートルくらいの人型だ。
それにしても動きが早い。何かの加護が掛かっているのか、ゴツゴツとした岩の身体からは想像出来ない程の膂力と俊敏さを持ち、フェイントなども掛けてくる。
「ッ!」
チッと髪を掠めて、ゴーレムの腕が壁に突き刺さる。
これが一番厄介で、このゴーレム腕の形状変化ができるのだ。
したがって、今のように腕を鋭くし、岩の壁を物ともせずぶち壊せる。
「つーか。扉も塞がれ、お前を倒さないといけないって、どんだけハードモードでやらせる気っすか!」
ゴーレムの伸び切った腕の下を行き、三連華、四仙拳、五烈閃と連続技を放つが、どれもあまり効かない。体感で十分は戦っているはずだが、ライフバーはまだ九割もある。
十分で一割はキツい。倒す前にこちらが倒れてしまう。
「よし、あんまり出したくはなかったっすけど、力を貸してほしいっす!」
アイテムになり、眠っている妖精、リンを呼び出した。
「ーー」
姿を表したのは赤い頭巾を被った、真っ白な髪の少女。
「リン。寝ていたところ悪いっすけど、援護頼めるっすか?」
「ーーーーーー」
リンと呼ばれた赤頭巾の少女はコクリと頷くと魔法の詠唱を始めた。
「こんな子が妖精って……つか、この子絶対赤頭巾の……」
少女なんだよな。と言い切る前に、リンの詠唱が完了し、体力、マナ、共に全開し、身体も軽くなった。
「絶対妖精じゃないのに妖精ってことにするGM、嫌いじゃあないっすよ」
たとえデスゲームであろうと。動けなくなった身体をもう一度動かせるならばなんだっていいのだ。
妖精が妖精じゃなかろうと。
「行くっすよ!岩野郎!」
ゴーレムは右腕をランスに変え突撃してくるが、遅い。
「三連華、四仙拳、五烈閃!!」
先程と同じ技を放つが、その一発一発が当たるたびに、ゴーレムの身体が削られて行く。
ゴーレムは左腕を変化させ、トゲの沢山付いたハンマーを作り、横に薙ぎ払うが、遅すぎる。
「極殺拳!」
今日なんども放ってきた極殺拳を当てて、その場から離れ、ボロボロの大きな扉に手を当てた。
ゴーレムはその俺を止めようと動き出すがその身体ばガラガラと崩れた。
「二百年の間守り続けたんすね。お疲れ様っす」
俺は何気なく労いの言葉を投げかけ、扉を開けた。
そこには。
「な、なんすか、これ」
中には死体、死体死体。死体だらけだった。不思議と腐臭はせず、死体も穴が空いていたり、傷がある以外は綺麗なままなのだ。
そして先程まで一緒にいた筈のナタリアまでもがそこにはいた。
「な、なんでナタリアさんが……」
いや、ナタリアはゴーストのはず。ならこれは……。
「本物の死体だよ」
「ッ!!」
俺は後ろから聞こえた少女の声を聞き、飛び退いた。
「あ」
そのまま死体の山につっこんだ。
「くっ」
「こらこら荒らすなよ。戦うならきちんと周りを見て戦いな」
「なんなんすかここは!」
俺は死体の山から抜け出し、スカーレットに向かって怒鳴った。
「聞きたいか?」
「教えて下さいっす」
「死ね」
「うおおおおお!?」
スカーレットはいきなり出刃包丁を片手に飛びかかって来たので身体を仰け反らせ、その刃を避ける。
「リン!」
「ぬ?」
まだゴーレムの部屋でゴーレムの欠片を弄くり回していたリンを呼ぶと、バターンッと扉があき、ゴーレムがやってきた。
「はぁ!?」
「なに!?」
ゴーレムは俺ではなく、スカーレットを殴り飛ばして、そのままズンズンと向かって行く。
「ーーーー!」
リンは目をキラキラさせながらゴーレムに何かを命じていた。
「リン!今の内に!」
「ーー」
リンにいうと残念といった感じに肩を竦ませ、アイテム化して、光となって消えていった。
「よし。蜃気楼!」
大量の分身と共に地下を駆ける。
「クソ餓鬼いいいい!」
「お、怖っ!」
スカーレットがゴーレムを破壊したのか、全力で追いかけて来る。その速度はトランより速い。
「だけどここは地下!そんなに広くないっすからね!」
出口はもう少しだ。だがそれよりも先に分身の一人が打ち消される。本当は触れるだけで霧散するのだが、スカーレットはそれはもう掴んで掴んで掴みまくっている。
「男なら本物をだせえええ!」
「良いっすよ!」
と言いながら分身の一人で殴りかかる。
「ぬっ!」
スカーレットは両腕をクロスし、衝撃に備える。がそれは来ない。本命は。
「ーーーー!」
「決まりっす」
リンのフレイムアローだ。
「この!」
スカーレットはフレイムアローを防ぐが、俺は階段へ到達。
地下室への入り口を閉じてすぐに図書室を出ようと図書室の戸に手を掛けると同時、太ももに鋭い痛みを感じ、そのままぶつかってしまった。
「す、スカーレット……」
後ろには既にスカーレットがおり、俺の太ももには出刃包丁が突き刺さっていた。
「ククク。残念デシタ。本当は強くなったお前達を倒し喰らおうと、思っていたのだが……」
「なんすか、やっぱ俺の推測は正しいんすかね」
俺は包丁の刺さった足の傷を抑えて動くのだが、離れられる筈もなく、ジリジリと近付いてくるスカーレット。
「あんたは、カズマさんもそうやって殺す気っすか?」
「……ククク。そうだよ。私はお前達を殺し、喰らい強くなる。そして下の層で幸せそうに生きている奴らを皆殺しにして、上の層の奴らも殺す」
「それがあんたらの狙いっすか」
「いや。私だけだ。他は関係ない」
「ナタリアさんは違うんすか?」
「あぁ。全て、私の独断さ。ブラッド・リッチを倒すのは建前ってわけさ」
「そうかい。リン!」
「ーー?!」
俺はリンを呼び出す。俺の傷と状況にリンは驚くが、すぐに治癒を始めた。
「リン。治癒はいい。ただこの一言でいい。カズマさんに伝えてくれ」
「ーー!」
リンはフルフルと首を振るが、意見を変えない。
「リン。俺達じゃ勝てない。だから」
「だからなんだと言うのだ?」
突如扉が開き、聞こえる筈のない声を聞いた。
「ま、まさか」
「何をびっくりしているんだ?私は別に死んではいないぞ」
「いや、だってカズマさんと……」
「行かなかったんだ。スカーレットとやらが気になってな」
「……助かるっす」
そう、シュカさんが扉の先に立っていたのだ。
「なんだ?貴様程度が来ても、私に勝てはしないぞ?」
「ふん。仕方ないが、今回は逃げさしてもらう」
「どうやって……」
突然ドゴンッと天井が落ち、スカーレットを押し潰した。
「おい。こんなんで良かったのかよ」
「ギルさん!?」
「よーう、ジャック。やられてんなぁ。つかやっぱ主の仕業だったか」
「まぁ、色々あったんすよ」
「ーー!」
俺達が話し合う中、リンがスカーレットを指差し、アイテム化した。
後ろを見ると、瓦礫が持ち上がっていた。
「逃げるっすよ!」
「おう!」
「わかった!」
二人と共に図書室を抜け、廊下を駆け抜けようとするが、足の痛みで転んでしまった。
「あー仕方ねえ!」
「背負います!」
シュカとギルが肩を貸してくれたので、それに甘えることにする。
間も無くして、玄関に着くと、ナタリアがいた。
「あれ?ナタリアさん?」
「なんだかわからないけれど、私も連れてって下さい!」
「シュカ!そいつを頼む!俺はジャックを乗せる!」
「はっ!」
シュカさんとギルさんはそれぞれ光に包まれ、ワイバーンへと形を変えた。
『乗れ!!』
「よろしくっす!」
俺は困惑しているナタリアをシュカに預け、ギルの背に乗った。
直後、強い重力が掛かると共に、俺達は飛翔した。
「取り敢えずカズマさん達と合流するっす!」
『おう!』
「きゃぁあああああああ!!」
『うるさい。静かにしろ』
やはり初めは怖いか。何せ落ちたら死ぬからな。この高さは。
まぁ俺からしたらこんなこと、リアルじゃ体験できないからノリノリなんだがな。
「ってあれ?」
『どうした?』
「ここ……空……っていうか……もうちょっと近付けないっすか?」
『お、おう。任せろ』
少し、少しずつ。空に近付くと、そこは空ではなかった。
『こ、こりゃ……』
「なんすか、これは」
何か、黒いものが蠢いている。それも数万という数の何かが。
「こりゃあ、まずいっすよ……」
鑑定する。
???
鑑定不能。
解析と併用で鑑定可能。
解析っつーと。俺の称号でゲットできたスキルっすね。つか、こうして鑑定だけじゃわからないのもわかるようになれんのは良いな。
では。解析。
エニグマ
生きとし生けるものを全て、食らって食らって喰らい尽くすモノ。
それをスプラッタードールに供給。使役されている。
「速攻逃げるっす!!」
『なんだ!?なんなんだ!?』
「こいつら全部、エニグマっていう魔物みたいっす!」
『よし逃げよう!』
「ってかシュカさんはもう全速力っすよ!?」
『あぁ!?』
みればシュカさんは既に数十メートルも先に行っている。
『ちょ、ちょっと待て!』
「あ、加速するならいっーー」
加速した。
追撃はこない。これが動き出せば、間違いなく下の層の人達は殺られる。その前に止めないといけない。
取り返しのつかないことが起こる、その前に!
次回カズマのターン!




