ゴーストタウン一日目!
……。
最近、より一層アリスの魔法頼りになり始めたな。と思う。
俺はまず一発受けたら死ぬ。サイカさんは二発。だから皆後ろの方で固まって、アリスを盾にしなければならない。
「レベの差がありすぎるだろ!」
「カズマ。確かに私ら無力だけど、そんないきなり嘆かなくとも良いだろう」
現在、48レベなのだが、ここの雑魚でも80はあるのだ。それに対抗し得るのはアリス。あの最初行ったダンジョンのゴーストとは比べ物にならないゴーストの軍勢をヴァニッシュボルトで容赦なく消し去っていく。ちなみに詠唱の暇はないので、無詠唱で数発撃ち込まなければならない。
「アリスー。辛かったら言うんだぞー」
「はい。ヴァニッシュボルト!」
と、言えど、あのゴーストで溢れかえっていた平原もあと少しで何もいなくなるのだ。
「シュカを呼ぶか。召喚の指輪よ!シュカ召喚!」
語呂悪!!でもこれじゃないと召喚出来ない。
目の前に魔法陣が現れ、一瞬バチッと光ると、そこには緑髪を靡かせ、背に翼を生やしたシュカがいた。
なんか、進化したのか?
「主!!」
「うぇ?!」
「今までどこにいたのですか!?なんでずっと呼んでくれなかったのですか!?」
「あ、いや」
シュカに質問されていても戦闘?は続く。
「全く。朝からいなくなったと思えばこんな時間まで……」
「あー確かに」
外真っ暗だし、俺は殺人劇見たときは一応寝てるんだもんな。時間感覚変だわ。
「ごめんなシュカ。んでな。俺達今二十二層にいるんだよ」
「はい?」
「だから血が実装されちゃったのって俺達原因なんだよね」
「はぁぁぁ……」
なんだろう。一応シュカって俺の部下的な存在なんだよな。なんで深く深く溜め息疲れてんの?
「今度は何に巻き込まれてるんですか主」
シュカが半目で聞いてくるので、俺はあえて笑顔で答える。
「レベが110の魔物……ってか魔人つってたな。それ倒す」
「何をやっているんですか!!」
「ごめんって。だけど仕方なかったんだって成り行き場」
「もう……」
「ちなみに。シュカ。気付いてるだろうが、この場に来たことでお前もレベ超上がるから、ちゃんと後で慣らしておけよ」
「は、はぁ。ギル隊長達は呼ばないのですか?」
「いやぁセイルはともかく、ギルは突っ込んで行きそうだし、あっちを見てもらおうと思って。仮にも隊長なんだから、指揮するくらいはできるだろ」
「まぁ。大丈夫じゃないですか?」
「まぁってなんだよ……人選ミスったか不安になるだろうに」
「いや、主もそうなのですが、ヘレナ殿も帰ってこないので、少し心配だったのですが」
「ヘレナが!?」
あれから帰ってないのか。
「カズマ様。ここら辺にはもういないようです」
アリスがヘイトゴーストを狩り尽くして、報告してきたので一度屋敷に戻ることにする。
「よし。じゃあ一度戻るとしようか」
「はい」
アリス達は頷くと、ぞろぞろとゴーストタウンまで歩き出した。
ーー。
「?」
何かに呼ばれた気がした。だが振り返っても何もいない。
「どうしたんですか?カズマ様」
「んや。なんでもない」
アリス達が去った後、暗黒のローブに包まれた者が姿を現した。
名をブラッド・リッチという。正しくは存在しないのだが、初めて付けられた名がブラッド・リッチであるから、この者の名はブラッド・リッチなのだ。と言えど、名などこのブラッド・リッチには関係ないのだが。
ブラッド・リッチの目的はただ一つ。
「殺ス」
そう生者を亡者とすること。切り刻み、握り潰し、それを喰らい、力に変え、更に魂まで狩り、消滅させること。
「ユティ、殺ス」
最後には、本意ではなくとも自分を作ってくれたスプラッタードールを殺し、取り込むこと。それがブラッド・リッチの望みであり、目標である。
「殺ス、殺ス殺ス殺ス!」
殺意を隠そうともせずに叫びながら、ゆっくりとゴーストタウンへブラッド・リッチは向かう。
ーーゴーストタウン到達まで三日。
「つーかすげぇレベ上がったなぁ」
俺はパーティのステータスを見て呟いた。
皆シュカを除いてレベルは50を超え、新たなスキルをそれぞれ取得していた。
ジャックは衝撃ダメージ(中)カットで、サイカさんは竜化。と言えど、地竜という種らしく、大きなトカゲみたいである。だが大きさは三メートルを超え、これに体当たりされたらかなりヤバい。
サイカさん曰く、早くレベ上げして、ワイバーンにでもなりたいとのこと。
我らがアリスは心眼を手に入れた。
ちなみに心眼とは、簡単に言ってみると、目を閉じても周りのことがわかるー。みたいなのらしい。アリスが使うのだから、色々使い勝手はあるのだろう。
ちなみに俺はフェアリーストレングスというスキル。相方。つまりアリスのSTRを100上げられるのだが、それ以上上がってどうするのだろうか。
シュカにも効果があるようで、シュカも上がっていた。
そしてアリス以外の全員にGMから称号をプレゼントされた。
俺は【称号】魂の適合者と【称号】他力本願を手に入れた。
他力本願で悪かったな!!
サイカさんは【称号】苦労人でジャックは【称号】見透かす者だ。
サイカさんはなんとなくわかるけど、ジャックは意味わからん。なんだ?あいつ何かスキルあんの?
そして聞こうにもジャックはこの場にはいない。
帰ってきてすぐにナタリアさんとどこかに行ってしまったのだ。
一応パーティは組んだままなので、無事なのはわかるが。
「よし。とりあえずこれからのことを考えよう」
「そうだね」
「まず、俺達はなんらかのイベントに巻き込まれている。つか絶対巻き込まれてる」
「しかもギルドの奴らと連絡がとれないし、どのみち呼べもしない」
「んで俺達はレベも足りない」
「アリスちゃんに頼りっぱなし」
「「はぁ」」
サイカさんと俺の溜め息が重なり、アリスとシュカも苦笑い。
「でもカズマ様、私はカズマ様の物なんですから、どんどん使って頂いてもよろしいのですよ?」
「いや、物とか言うなよ。アリスはアリスなんだから」
「ありがとうございます」
アリスが少し照れている。可愛い。
「つーか疲れたな」
「腹も減ったし」
「何より眠いです」
「んじゃ飯……あれ?俺ら、飯どすんの?」
「あ……」
そう、ここはゴーストタウン。まともな飯があるとは限らない。
「うめええええええ!!」
普通にありました。スカーレットに言ったら、ステーキに白飯を用意してくれて、飯の後にはお風呂、綺麗なベッドを用意してくれた。「お代はブラッド・リッチ退治だから、頑張ってね、おにーちゃん」とか言われたけどさ!
ジャックはジャックで飯時になってから帰ってきた。しかもナタリアさんと一緒に。
「しかしうめぇな!」
「んな美味い食べ物、こんなところで食べれるとは思わなかったっす!」
「そうだな。これは……良い物だ」
「美味しい……」
アリスや俺達が静かに感想を言う中。
バリバリガチャガチャゴックンバリバリ……。
「シュカは無言で凄い食うな……」
「半端じゃない勢いっすね」
「だが、もう少しテーブルマナーというものを教えて上げたほうがいいんじゃないかい?カズマ」
サイカさんはなんの音も立てずに、ステーキを切り、口に運んでいく。
確かに、ここまでとは言わずとも、あの騒音を出さない程度にはなってほしい。
「な、なぁシュ……」
声を掛けかけた瞬間、ギラリとシュカがこちらを向き、睨んできた。
「主」
「は、はい!?」
思わずビクリとしてしまった。横ではサイカさんが半目で俺を見ている。よし、ここは俺がしっかりと言わねばならんな……。
「シュカ、先に俺の話を……」
「食事中にお喋りは現金です」
「……おい」
確かにマナー的にはそうなんだろうけどさ!
「では」
またシュカは食べ始めた。
「情けな」
ぐっ。
「カズマ様、頑張って……」
小声で応援してくれるのは嬉しいが、まだやらされるのか俺……。
「ナタリアさん、おかわりお願いっす」
「はい!」
おいそこ!ちょっと新婚さんみたいな雰囲気出してんじゃねぇ!
……もう一度。
「ご馳走様でした」
「終わったぁああああああ!!」
皿にはもう何も乗っていない。
いや、まだ遅くない、今注意すればいいじゃないか。
「シュカ」
「主。まだ主は食事中なのでお静かに。私は少し寝てきます」
「ちょ、待てって」
「?」
「シュカ。お前は女の子なんだから、もっと食べ方を綺麗にしなさい。んで静かに食べなさい。わからないなら、この際だ、サイカさんかアリスに聞くんだ。良いな?」
「……はっ。必要であれば」
「んで、帰ったらギル達にも教えたれ。多分あいつらもできねぇだろ」
言うとシュカはいえ、と否定し
「ギル隊長はそうなのですが、セイルさんは、昔から綺麗に食べていました。人型になれるワイバーンの中でも珍しい食べ方をする方でした。ギル隊長はそんなの人間の食べ方なんだから真似すんな!ワイバーンらしく食えば良い!って言ってましたけど」
シュカの食い方はあいつが原因かー。
つかセイルはどこで食べ方を学んだんだろうか。つか、ワイバーンってスプーンとかフォークとか使えんの!?
「では、主。次からは綺麗に食べます」
「ん。そうしてくれ」
俺は頷き、再び食事に戻る。
「そういや、これなんの肉なんだ?」
「これですか?これはドラゴンゾンビの肉です。その味は腐った肉の中でももっとも美味であると言われ、その中の血はどんな血よりも美味しく、焼いた際には、ブラッド・レア・ソースとなるのです」
かちゃん。と、誰かがナイフを落とした。
俺は咀嚼をやめ、ゆっくりと先程の言葉を頭ん中で復唱する。
これはドラゴンゾンビの肉です。その味は腐った肉の中でももっとも美味であると言われ、その中の血はどんな血よりも美味しく、焼いた際には、ブラッド・レア・ソースとなるのです。
ーードラゴンゾンビ。
「うわぁああああああああ!」
「嘘でしょ!!俺、腐った肉、美味しい美味しいって食ってたんすか!?」
「……」
「ちょっと、御手洗いお借りします」
それぞれが叫び、疑い、沈黙し、走り去っていく中、シュカは呟いた。
「食事中は綺麗にではなかったのですか、主……」
その呟きは聞こえた。が、そんなのはもうどうでもいい。ほんと、どうでもいい。
「「「スカーレットッ!!」」」
三人でスカーレットにキレ、その場が収まったのは、ナタリアが即興で作ったジョークだとちょっとキレているスカーレットに怯えながら言った時だった。
その後、俺達は男女別れて、大浴場入り、ふかふかのベッドで眠った。
次回、
ジャックとナタリアメインでやります。




