第五十七話 どろんこレースにゃ!
朝のネコネコランド。
昨夜たくさん降った雨のおかげで、広場には大きな水たまりがあちこちにできていた。
空はすっかり晴れ、青空が水たまりに映ってきらきら輝いている。
チャイは目をまん丸にして飛び上がった。
「見てにゃーー!」
「どろんこいっぱいにゃ!」
ぴょーーん!
ばしゃーーん!
大きな水しぶきが空高く跳ね上がる。
「にゃははは!」
リオンも思わず笑った。
「楽しそう!」
ルナは靴をぬいで、そっと水たまりへ。
ちゃぷん。
「冷たくて気持ちいい。」
マロンも勢いよく飛び込む。
「えいっ!」
ばしゃっ!
シロップは水たまりをのぞき込んだ。
「空が映ってる。」
ぴょん。
ちゃぷん。
「わぁ。」
みんな大はしゃぎ。
でも、ひなただけは少し後ろから見つめていた。
服が汚れそうで、なかなか一歩が踏み出せない。
チャイはにっこり笑う。
「大丈夫にゃ!」
「汚れたら、お風呂に入ればいいにゃ!」
リオンもうなずいた。
「今日は思いきり遊ぼう!」
ルナも優しく手を振る。
「おいで。」
ひなたは少し考えて、小さくうなずく。
「……うん。」
そーっと。
ぴょん。
ちゃぷん。
小さな水しぶきが上がった。
チャイは首をかしげる。
「もっと思いきりにゃ!」
「今から、どろんこレースをするにゃーー!」
「どろんこレース?」
「向こうの大きな木まで競争にゃ!」
「よーい……どん!」
みんな一斉に走り出した。
ばしゃっ!
ばしゃん!
ちゃぷん!
水たまりを越えながら走るたび、水しぶきが虹みたいに光る。
チャイは全力。
「一番にゃーー!」
リオンも負けない。
マロンは泥に足を取られながら、
「待ってー!」
ルナは笑いながらぴょんぴょん飛ぶ。
シロップは水たまりの真ん中で、
「気持ちいい……。」
立ち止まってしまった。
「シロップー!」
みんな大笑い。
そのとき。
インクだけは腕を組んで見ていた。
「……子どもだな。」
チャイが手招きする。
「インクも来るにゃ!」
「遠慮する。」
その瞬間。
ぴちゃっ。
小さな水しぶきがインクの足にかかった。
「……。」
みんながじっと見つめる。
インクは小さくため息をついた。
「……仕方ない。」
ぴょん。
ちゃぷん。
「インクもレースに参加したにゃーー!」
その瞬間だった。
チャイが勢いよく走ったまま、
「わっ!」
つるっ!
「あーーー!」
ひなたにぶつかる。
二人そろって、
ばしゃーーーん!!
顔までどろんこ。
一瞬だけ静かになる。
チャイが泥だらけの顔でひなたを見る。
ひなたも泥だらけ。
目が合った。
そして――
「ぷっ。」
「にゃはははは!」
二人はおなかを抱えて笑い出した。
リオンも。
ルナも。
マロンも。
シロップも。
インクまで笑ってしまう。
そのころには、誰が一番どろんこなのか、もう誰にも分からなかった。
夕方。
ミルクが広場へやって来る。
みんなの姿を見るなり、くすっと笑った。
「ふふっ。」
「今日は、たくさん遊んだみたいね。」
チャイは胸を張る。
「どろんこチャンピオンにゃ!」
リオンが笑う。
「今日はみんな優勝だね。」
「さんせーい!」
チャイが飛び跳ねる。
ミルクは優しく手をたたいた。
「それじゃあ、お風呂の準備ができたよ。」
「やったーー!」
みんなは大急ぎで大きなお風呂へ。
ぽちゃん。
ちゃぷん。
「あったかーい!」
「生き返るにゃーー!」
チャイは頭まで潜って、
ぶくぶくぶく……。
ぽこん!
頭いっぱいに泡をのせる。
「見てにゃ!」
「ライオンにゃ!」
リオンは吹き出した。
「チャイ、それ泡ライオンだよ!」
シロップは泡のおひげ。
「おじいちゃん。」
マロンは泡の帽子を作る。
「ぼく、王さま!」
ルナは泡をふわふわ丸めて、
「雲みたい。」
インクも知らないうちに頭へ小さな泡がのっていた。
チャイが大笑いする。
「インクも泡仲間にゃーー!」
インクは少し照れながら、
「……これは勝手に乗った。」
その言葉に、またみんな大笑い。
ひなたも笑いながら泡を頭にのせてみた。
「どう?」
チャイは親指を立てる。
「似合うにゃ!」
ひなたは嬉しそうに笑った。
ミルクは湯船につかるみんなを見渡し、優しく微笑む。
「いっぱい遊んで、いっぱい笑って。」
「今日も素敵な一日だったね。」
ひなたは湯気の向こうのみんなを見つめ、大きくうなずいた。
「うん。」
「こんなに笑ったの、久しぶり。」
チャイはにっこり笑う。
「明日もいっぱい遊ぶにゃ!」
「うん!」
ひなたの返事は、とても元気だった。
湯船には、笑い声と湯気がふんわり広がっていく。
ネコネコランドには今日もまた――
笑顔もどろんこも、お風呂できれいさっぱり流れていった。




