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8話


『ジー様、オレなら人族の言葉、ある程度なら話せる。 集落まで案内も出来る。』


ギーガは『ぎぃ、ダメダ、リーガ、マダハヤイ』とたしなめる。


《リーガ・ゴーブリ、ギーガの孫娘で父親がゴブリン、母親が人間のハーフゴブリンです。 ちなみに、両親とは別の集落で暮らしていたのですが、魔物に襲われた時にリーガをかばって死んでいます。 その後、ギーガが引き取るまで親戚の家をたらい回しにされていました。 人間の年齢でいうと12才、ゴブリンの一人前が15才からと言われています。》(コアにしては珍しくまともな解説だ。)


『だけど、モーブン達は人族の言葉、話せない。 それに村を守る仕事がある。 俺だけなら(…死んでも問題ない)』最後の言葉はレイジにだけはしっかり聞こえていた。(ふうん、なんかありそうだな…)


《リーガは、両親が死んだ原因は自分にあると思っていて、自分なんか死んだほうがいいと思っています。 なんなら死んだほうが早く両親に会えるとも考えていて、今回の危険な案内役を買って出たのかもしれません。 そんなリーガの気持ちを充分に理解しているギーガとしては行かせるわけにはいかないと判断して、恐らくリーガの説得を試みますが、リーガを説得すること叶わず主に同行することを渋々認めることになります。》(言ったね、リーガ回の話、ぜーんぶ、言っちゃったねっ!! すっごいネタバレ!!)



コアが説明したとおり、リーガの独白、過去回想シーンからのギーガへの懇願、ギーガ折れるまでのやり取りが繰り広げられた。(良くないっ、コアさん、そういうの良くないと思うんだっ)レイジは思ったが、コアから返事はなかった。


『レイジドノ、マゴヲタノム。』『レイジ、俺の名はリーガだ。 リーガと呼べ、準備は終わってるからすぐ出れる。 よろしくな。』あらためてリーガを見ると、弓と身軽な装備で準備万端のようだ。


「レイジだ、リーガ、道案内よろしくな。 ギーガ殿、リーガのことは私が全力で守りますのでご安心ください。」


『『『『『ぎぎぃ(ぎっ)(ぎいぎい)』』』』』恐らく応援的な意味と思われる。二人は集落を出発した。



□□□


二人は森に沿って北に向かう。

リーガはレイジと会話を続けるうちに、母親から習っていた言葉を思い出したことも手伝って、人語がかなり上達した。


道中、出てくる魔物は、モリマジロ、ブラックゴブリン、ブラックマンティスなど。(ブラックマンティスを倒すとき、デパリーの顔が浮かんだのは内緒だ。)


「ふう、魔物が多いな。 苦戦するわけでもないが、こんだけ数が多いと面倒だな。」


『レイジ、強いな。 モリマジロには俺の矢だと刺さらない、その剣は硬い背中も簡単に切れるんだな。』


「はは、モリマジロイーターだからな。 リーガも弓の腕は大したもんだ、さっきはブラックゴブリンを牽制してくれて助かったよ。」


弓の腕を誉められて、リーガは嬉しそうに《リーガの弓の指導はお父さんからなの》(ねー、マジでやめて? 珍しくまともなとか言ったことは取り消すし、謝るから、ね。)


《分かればよろしい。》(くっ、偉そうだ。)


リーガは胸をはって、『俺の弓は、お父さんから習った。』と弓をレイジに見せた。(うん、知ってる。誰かさんのせいで。)


「そっか、リーガの親父さんは強かったんだな。」


『うん、お父さんは強かった……、俺がいなければ……お母さんだって…。』


《なんで、さっき教えたのに地雷踏み抜くんですか? リーガが涙目です。》(うん、間違えた。)


「ん、まー、そのなんだ。 さっき集落でリーガが死んでも問題ないって聞こえてたんだ。 んで、ギーガとの会話とかでリーガの両親のことはなんとなく察してはいたんだけど…、辛いこと思い出させてごめんな?」


《下手くそ》(なんか本人から聞く前に、知っちゃってるから逆に難しいんだよっ!)


『すまない、気にしないで。 俺が死んでも問題はないから、レイジが勝てない相手なら逃げろ。』


マジか、子どもがそんなこと言うなんて、レイジは思わず「そんなこと言うなっ!」、怒鳴ってしまった。(これは、テンプレっぽいよな)


ピクッと反応したままリーガは固まってしまった。


「あー、怒鳴ってすまない、リーガはまだ若いんだから生きてれば良いこともあると俺は思ってる。 それにリーガの親父さん達が命懸けで守ってくれたもんだろ? ギーガだって…」『うるさいっ! そんなこと分かってる。 ギーガからも散々言われてるっ! 会って間もないお前に何が言えるっ!?』


《リーガの言うとおり、【自殺者】が何を語るのでしょう。》(っ!!)


リーガはそう言って、レイジをぐいっと押しのけて前へと進んだ。


「おいおい、あまり離れすぎると…あっ!『エアロクロス』!」、レイジから離れたリーガを喰らおうと森から黒く巨大な影が大きく口を開けながら飛びついた。が、間一髪、真空の刃が影を切り刻む。


リーガの目の前で、獲物を食べ損ねて悔しげな狼が口をぱくぱくしながら溶けていく。じゅわ~、リーガのズボンは濡れてしまった。


「リーガ、ごめん!!それと便利魔法+火魔法で『クリーンホット』」、レイジはリーガの汚れを洗って、土下座した。


『きれいになったし、これぽかぽか温かい。 レイジ、顔を上げてくれ、少しいらいらしすぎた。 北の集落の調査をお願いしている人にする態度ではなかった。』


レイジは土下座のまま、リーガに声をかける。


「いや、俺の配慮が足りなかった、本当にすまかった。 それに、さっき生きてれば良いこともあるってリーガに言ったけど、あれはテンプレというか、俺の言葉でなくて…、俺には使う資格なんてなくて、薄っぺらい言葉になってしまった。」(いかん、声が震える…)


『…レイジ? 顔を上げろ、テンプレが何か分からないが、心配してくれたんだろ?』小さな子が震えてるように感じて、リーガは思わず、レイジの頭を撫でてしまう。(あれ、俺がなぐさめられてる? …あっ!)


《少し冷静になりましたか? テンプレ展開に酔われるのは良いですが、この世界も、この世界に生きる者達も全てがリアルであり、ゲームではありません。 リーガの境遇は世の中では、主の読んでいたラノベではよくあることでしょうが、リーガの物語はリーガの物です。 寿命を放棄した者が軽々しく触れて良い話ではありませんよ。》



普段、レイジに対して一線を引いているところがあるコアから、ここまで踏み込んだ事を言われたのは始めてだった。


レイジはどこかでゲームやラノベの物語の主人公と思っていた。


どこかで、自分の思い通りに事が進むとも思っていた。


だからリーガのことも、突然頼まれた集落の調査もイベントだと思っていた。


イベントを消化していけば、この訳の分からないゲームもクリアできて、自分を終わらせることが出来ると。


しかし、レイジの前に座っているファンタジーな幼女はしっかりリアルであり、レイジも生きている。


寿命は簡単には放棄できない。


レイジは、認識をあらためた。 ついでに頭の中で会話しているコアのことも喋るポンコツ鑑定スキルぐらいにしか思っていなかったことも反省した。《…ほう。》


(…そうだな、この世界に来た経緯は、いつかルーサレスに文句を言うとして、俺に出来るかも分かんねぇけど、もう少し真剣にやってみるわ。 まずは…)


レイジはむくりと顔を上げて、リーガをまっすぐ見据える『レイジ?』、「えっと、なんか年上なのにみっともないとこ見せたな。 リーガのおかげで目が覚めたわ。 ありがとな。」


《88才も年上なのにみっともない。》(今は18才っ!てかしばらく黙れ。)


「んで、俺はリーガとはちょっとの時間しか過ごしてないけど、リーガには死んでほしくない。 てか、死ぬのって結構怖いんだぜ。」


『そうか、なんだかレイジ、死んだことがあるみたい。』


「信じられないとは思うけど、俺は【自殺者】だ。 リーガを守るために勇敢に死んだリーガの両親や、リーガみたいに両親に会いたくて死にたいとか、そうゆう重たいのじゃなくて…、俺は単に生きるのに飽きたから死んだんだ。 ははっ、軽いだろ? それなのに、リーガには……偉そうに…。」(そうか、俺のしたことは命への冒涜…)


『生きることに精一杯のこの世界で、レイジは生きることに飽きるなんて恵まれてたのか。 死んだのに生きてるのは俺には分かんないけど、俺のことを真剣に心配してくれたことは分かった、ありがとう。』年上なんだろ、もう泣くなよとリーガがニッコリ微笑むと、背後に咲き乱れる花が幻視できた。


《ヘタレの凹み方、パないのう。》(本当に反省したので、出来れば追撃はお控えください。)


「だあぁっ!!」パンっとレイジは自分の頬を両手で叩いて気合いを入れた。


「少し時間食ったな、リーガ、行こうぜっ!」照れ隠しに勢いで、歩き出すレイジ。


『そっちは来た道だ、レイジ。』(えっ?)


《ダサ、しまらないですね、主。》(はい、もーーーーー、ねっ、だまれ。恥ずかしい、もう死に…たいほどではねぇか。)


「おっ、気づいたか! さっすがリーガだ。 道案内頼んだぜ。」


『あはははっ、間違えたの本気だろ。 まあ、いいや、レイジ、こっちだ。』


少しずつだが、リーガと打ち解けた気がした。


《おまわりさん、こちらです。》(俺は無実だっ!)


コアともいつもの調子になってきた。が、《主、この一件が解決したら、ポンコツ鑑定スキルについて、お話しましょう。》


(ひえっ、どこで伝わった!? いえあの反省しました!)


《さあ?、どこでしょうか。 それより、モリマジロ来ますよ。》


「この辺は本当に魔物が多いよな。(お話で終わりますように。)」


『ここまで魔物が増えたのは、ここ数年らしい。 ジー様が言ってた。 黒いもやもやが、動物に入っていったら魔物になるらしい。 倒しても何も残らないから損。』


「たしかに、素材や肉も落とさないと危険なだけだよなっと!」




---そのとき、不思議なことが起こった---



モリマジロを切りつけると、ぽふんっと音がしてモリマジロの鎧がその場に残っていた。


「『ええええええーっ!!』」


「はは、すまん、多分…俺のスキルが発動したみたいだ。(薄々気づいてたけど、【プチご都合主義】が働いてるだろ?)」


《正解です。》


(制御不能のユニークスキルってなんだよおおおぉぉぉっ!!)


『黒い魔物が素材どころか既製品になるスキル、便利だな。』


「うん。 しかし、この鎧せっかく出たけどでっかいな。」


『とりあえず、北の集落が先。』


「だな。」


モリマジロの鎧は重たいので帰りに拾うことにして、二人は前に進むことにした。


『レイジ、あそこだ。 やっと見えてきた。』


ドォーンッ!!


「何の音だっ! おい、リーガ、黒い煙が上ってるぞっ!!」


『おかしい、何が起こっている?』


「リーガ、急ごうっ!!」


二人は集落に向かって走り出した。




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