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6話


□□□


「「「ごちそうさまでした(ざんす)」」」


「それで、レイジ殿はこれからどうされるざんす?」


「そうですね、しばらくはスサンダ村で冒険者をやってみようかと考えてます。 この国のこともまだまだ知らないことばかりですし。(特に指標もないし、ランク上げながら今後を考えたい)」


「そうざんすか、それでしたら何か困ったことがあれば我がマンティス家を頼るざんす。」


「レイジ様、今度ゆっくりスサンダ村を案内するざんす。」

デパリーの目がシャンデリアの光に反射してキラキラ、前歯もキラキラ輝いている。


《ちなみに、前歯はデパリーの父親から遺伝したようです。》(情報出すなっ、何か痛ましいわ)


「デパリーちゃん、レイジ殿ははるか東の海の向こうから自分を探す旅に来ているざんす。 デートしている暇はないざんす。」(デパリーとの道中で適当に設定したの伝わってるけど何か恥ずかしい)


「で、デートじゃないざんす。 もうママったらからかわないでほしいざんすぅ。」マンティス夫人とデパリーは仲良さげにじゃれあっていて微笑ましい。


《つつき合ってケンカしているように見えます。 主、どちらが勝ちますかね?》(そうだな、やはり体格の違いでマンティス夫人有利……やめぃっ!、失礼だって。 あとコーヒー吹いちゃうから!)


「ほらぁ、ママが変なこと言うからレイジ様が困ってるざんす。」


「あらまぁ、若いっていいざんす。 うふふざんす。」


「すみません、何か緊張しちゃって。(笑いを堪えるのに力んでました) さて、そろそろ遅い時間になってきましたので宿に戻ろうかと思います。」


「もうそんな時間ざんすっ、レイジ様とお話するの楽しいからあっという間の一時だったざんす。」しょんぼりするデパリー。


「我が家に泊まっていかれても良いざんすが、レイジ殿をこれ以上お引き留めするのも悪いざんす。 レイジ殿、また色々とお話を聞かせてほしいざんす。」


「えぇ、ぜひとも。 それでは失礼いたします。」ペコリと頭を下げてレイジはマンティス家を後にした。


(ご飯うまかったけど、ちょいちょいマンティス夫人がデパリーを推してくるのをかわすのがキツかったな。 疲れたし、とりあえず宿に戻って情報を整理するか)



□□□



--スサンダ村 宿屋獅子のもふもふ 部屋--


レイジは地図を広げ、腕組みをして思案していた。

マンティス家の帰り道、そういえばと[なんトラ]に寄ってこの辺りの地図を買ってきたのだった。


「なぁコア、スサンダ村から更に北に行ったところにある黒いのはなんだ?」


《瘴気の森です。 強い魔物がうろうろと縄張り争いをしています。 その森を越えたところに魔王の一柱がいます。》


「近いねっ! ラスボス直前による村じゃないここっ?」


《そうですね、ただ、魔王も瘴気の森を越えるほどの実力がまだないためスサンダ村は比較的安全と言われております。》


「魔王なのにっ!? いや、魔王より手前の森に強い魔物がいるなら安全ではないでしょっ?」


《強い魔物は濃い瘴気を好みます、この辺りは瘴気が薄いので、今のところは大丈夫です。》


「あれ?、もしさ、瘴気の森で縄張り争いしている魔物が、他の魔物に勝ち続けて森を掌握したとしたら…」


《瘴気を独り占めできるため、絶望的に最強な魔王が生まれるでしょうね。》 


「瘴気を独り占めすることで強くなるんだったら、六体の魔王は瘴気の濃い場所をより多く抑えるために争ってるのか。」


《そうですね。 それと北の一柱は瘴気の森を狙ってはいますが、下手に森の魔物に、手を出してしまうと、魔物同士の均衡が崩れて、一気に新魔王が生まれかねないため、慎重に行動しています。》


「じゃあ、瘴気を祓えば、魔王も魔物も弱体化していくってことか。 逆に下手に森の魔物や魔王を倒すのも不味いのか。(倒せるかもわからんけど)」


《私が浄化できる瘴気にも限界がありますので、主に頑張ってもらわないといけません。》


「うん、僕がんばるっ! じゃ、ねぇよっ!? 丸投げダメっ、具体策くれよっ!!」


《よろしいのですか? 敷かれたレールを歩く人生が嫌で自分探しの旅を始めたとデパリー達に話されてませんでした?》


「そういう設定にしとかないと怪しいからでしょっ? いやこれ、わざと心をえぐりにきてるなっ!! とりあえず手探りすぎて時間かかるし、非効率だろ? 時間なさそうだし、もう少しヒントくれよ。」


《分かりました。 念のため聞きますが、本当によろしいのですか?》


「いやもったいぶらずに教えてくれよ。」


《では、『カクカクシカジカ』》

ドットで出来たシカがレイジの頭に突進し、中に入り込んだ。



「えぇっ!? いや、その魔法!、ちょっ!!! ぐっ!がああああぁっ コ…ア……なんでっ…」


《主が情報をと。 ですから、あれほど確認したのですが。 おや聞いて増すか?》(カクシカ使うとか聞いてな…………)レイジの意識は途絶えた。


ばたりと倒れたレイジの恨みがましい表情を確認し、コアは思った《解せぬ。》



□□□



『ぎぃっ』『ぎぎぎぃ』-うわぁー! 『ぎっぎっぎ』-きゃあーっ!


『ぎぃっぎぃっ』-こっちにもいるぞぉー!


『『『『ぎっぎっ♪ ぎっぎっ♪』』』』


-ゴブリンが出たぁーーーー!!



「いや、モリマジロじゃないのかよっ!!」レイジのツッコミは宙を舞った。


「…ててて、コアさん、今度からカクシカ使うなら教えてください。 てか外が騒がしいけど、何が起こってる?」、剣を手元に寄せつつ、窓を眺めると辺りはまだ暗く、村の入口付近が赤く燃えているのがよく見えた。


《『ゴブリンの宴』ですね、スサンダ村でも時々起こってるいるようです。》


「ゴブリンに襲われる村ってやべぇよ! マンティス家には世話になってるし、無いとはいえデパリーも年頃の女の子。 俺の知ってるゴブリンなら……、行くぞっ!」

レイジはおっとり刀で、宿を飛び出したっ。(良かった、まだ村の中には入っていないようだ。 俺が行くまでもってくれよっ!!)


《おっとり刀とは、「のんびり」や「ゆっくり」なイメージを持ちますが、実際は、侍が急な出来事で、刀を腰に差す暇もなく、手に持ったまま現場に駆けつけることから、急いで駆けつけることの形容に用いられています。》(わー、なんて分かりやすいんでしょう。 今はシリアス、ふざけてる場合じゃない!)



レイジが入口まで駆けつけると、黒山…カラフル山の人だかりが出来ていた。

前の方では何か呪術的な怪しい音が響いており、さらに悲鳴や怒鳴り声、「ざんすぅ~」等の声が聞こえてくる、まさかっ!デパリーが!?、人混みをかき分けて前に飛び出るとそこには緑色の小鬼達イメージどおりとデパリーが……「デパリーっ!大丈夫かっ!!」と剣を構えるレイジ。


『『『『『『ぎっ?』』』』』』


「「「「「「えっ?(なに?)」」」」」」


「ざんす?(レイジ様、いまミーを呼び捨てにしたざんすっ?キュンッ)」


レイジの乱入に輪になったまま固まるデパリー達一同(ゴブリン含む)。

種族や性別を越えて、みんなで手をつなぎ、大きな炎を囲んで、音楽に合わせて踊る、まさにキャンプファイアーの醍醐味である。


「あっれぇ~?」変な声が出るレイジ。


「あ、皆さん、続けてくださいざんす。 レイジ様はミーの客人ざんす。 レイジ様、どうぞこっちざんす。」


凍った空気はデパリーの声で溶け始める、ゆっくりと音楽が流れ村人達とゴブリン達が輪になって踊っている。さらに周りには屋台があり、飲んべえ冒険者達で賑わっている。 デパリーはレイジの手をそっと引っ張り輪の外に出た。


何がなんだか分からない、「えっと、デパリー様、これってどういう状況でしょうか?」


「レイジ様、さっきみたいにミーのことは呼び捨てでいいざんすぅ。 これは『ゴブリンの宴』といって、キングダム王国では、友好的なゴブリン達が村人達を誘って、たまに宴をするざんす。 年に何回かしかないざんす、レイジ様は運がいいざんす。」


「友好的なゴブリン?」


「はい、彼らを見るざんす。」そう言われて、輪を作っているゴブリンを見るとニコニコしながら手招きをしている。


《友好的なゴブリンは、人懐っこくて踊りが大好きです。 宴の準備も屋台の材料等も全てゴブリンが用意するため、村人達も歓迎しています。 ちなみに、魔王の配下や瘴気の森を徘徊しているゴブリンは黒い色をしています。》(えぇ…、これから先、区別つくかな…。)


「あー、宿で休んでいたら突然の悲鳴や怒鳴り声が聞こえたもので、何かあったのかと。 場を乱して失礼しました。」、頭を下げるレイジ。


「レイジ様がいた国では、『ゴブリンの宴』がなかったざんす? それで剣を持ってるざんす。(もしかしてミーを心配してくれたざんすぅ。)キュキュキュキュキュインッ」


《デパリーの主を見る目が、熱っぽくなってます。 火に照らされた前歯がとても綺麗ですよ。》(やめろ、そこはいじらないでさしあげろっ)


「いやー、そうなんですよ。(宴どころかリアルなゴブリンはいなかったわ) 剣なんて無粋な物を持ち込んですみませんでした。ははは。」


「大丈夫ざんす、ゴブリンの宴あるあるざんす。 さぁ、それよりレイジ様も一緒に踊るざんすぅ♪」、レイジはデパリーに誘われるまま輪の中に入り、見よう見まねでデパリーやゴブリンと踊る。(ゴブリンと手をつないだニホン人ってあんまりいないよなぁ。 もう新鮮なことなんてないと思ってたし、暗い生活を送ってる奴らの人助けなんてマジ勘弁と思ってたけど、コイツら皆強くて、生き生きとしてて楽しそうなんだよな。 この世界を守るのも悪くないかもなっ♪)


流れる音楽もどこか懐かしい、レイジは子どもの頃に車の中から町内の祭りに参加する子ども達を羨ましげに見ていたことを思い出した。《そして、この平和な風景がずっと続けばと…そう願うのであった。》(人の心情をシリアス風に勝手にナレんなやっ!)


《この世界を守るのも悪くないかもなっ♪笑》(いいやん、思うくらいっ。 泣くよ?マジ泣いちゃうよ?)


『ぎぎぃっ(この世界を守るのも悪くないかもなっ♪)』(あれぇ?ゴブリンに何で伝わってるのぅ?)


《ゴブリンのスキル【プチ思考読み取り】です。 対象と手をつなぐことで思考の一部を読み取ります。 また、【同族同調】スキルにより、先ほどの言葉はゴブリン全体に伝わり、主の好感度がもっか急上昇です。》(やめろ!、恥ずかしいわっ!!)


一方、隣のデパリーはレイジの顔をチラ見しながら、(レイジ様のお顔が赤いざんす。 少しはミーのことを意識してくれたざんす?)などとドキドキしていた。


宴は夜通し行われ、ゴブリン達が綺麗な撤収作業を終える頃には朝になっていた。


(デパリーのヒロインキャラフラグまっしぐらすぎて辛い。悪い子じゃないのはわかるけど、昆虫はちょっとごめん。)


《ヘタレのくせに生意気ですね。》(だ、ま、れ!!)


とりあえずレイジは二度寝兼ふて寝するため、宿へと戻った。


《…………(勝手に人生を見限らなければまだまだ前世でも楽しいことがあったでしょうに。)》


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