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短編  作者: ナナウミ
1/5

珈琲と紅茶

はじめまして、ナナウミと申します。

こちらのサイトでは初投稿になります。

pixivにも掲載させて頂いております。


ちょっと歪んだ恋愛の話。




「ねぇ知ってる?

人は、好きな人が自分に好意を向けてもらえないと知ると、

敵意を向けてもらいたくなるそうよ」




「ふぅん」


「興味無さそうね」


「べつに」




だって実際、興味が無いのだ。

そんな事を彼女に言ったところで無意味なのは

これまでの経験でよく知っているので、

ぼくはあえてその言葉を飲み込んだ。







「一体あなたは いつになったら

私を好きになってくれるのかしら」






彼女が、テーブルに置かれた珈琲に少し手を付けて、言う。






「好きな相手なら、もう少し優しくしてくれてもいいんじゃないの」





もう何度目か分からないやり取り。


それくらい、この問いと答えを

ぼくらは何回も

まるで確認するように繰り返している。




「あら、私は優しいわよ」


「どこが」




彼女が白々しく答えたので、ぼくは若干鼻で笑って答えた。


彼女は見た目は虫も殺せぬような、儚げな印象だ。

そう、「見た目」だけは。



しかしその内は、とてつもなく、黒い。

儚さの微塵も無く、むしろ図太いを通り越して図々しい。



ぼくは彼女の本性を知っている。

彼女は外面が良いので周囲は彼女を聖母のごとき慈悲深い女性、だなんて評するけれど、

ぼくにとってはちゃんちゃら可笑しい。




彼女は

聖母なんかじゃない。

悪魔だ。



そして彼女はその悪魔な本性を

ぼくにしか出さない。





「酷いわ。私、泣きそう」


「どうせ嘘泣きだろ。

あとさ、今朝のあれはなに?」


「不幸の手紙よ、知らないの?」


「そんな事を聞いてるんじゃないよ。

それが何でぼくの机に入ってるわけ」


「私が入れたからよ」


「知ってるよ。それが好きな相手にする態度なわけ?」


「あら、私だって気付いてくれたのね。嬉しいわ」


「そういうところだよ。

不幸の手紙を送り付けてきたり

上着に画ビョウをしのばせてきたり、

嫌がる事ばかりする人を

一体どうして好きになるっていうんだ」



そうなのだ。



彼女は事あるごとに

ぼくに嫌がらせをして来る。



そんな相手を

好きになるほうがおかしいだろう。







「・・・珈琲って、苦手なのよね、私」





彼女はよく珈琲を飲む。


いつも飲んでいるからてっきり好きだとばかり思っていたが、違ったのか。





「なら飲まなければ良いじゃないか」



彼女は答えなかった。

そしてまた、涼しい顔で珈琲を飲む。



「・・・・・・ぼくは、好きだけれど。珈琲」


「知ってる」



彼女は珈琲のカップを置き、

目を閉じて言った。









「相手が自分を好きになってくれないなら、

たとえ怒りでも憎悪でも哀しみでも、

自分に向けてくれる感情全てが

愛おしくなるものよ」







「なにそれ。詩?」


「やっぱり私、貴方のこと嫌いだわ」


「だと思った」


「嘘よ。


だいすき、愛してる」




わけが分からない。


支離滅裂だ。


やはり彼女の考えている事は理解できない。


またぼくをからかって遊んでいるんだろう、

まったく質が悪い。







「・・・・・・一体、いつになれば貴方は、

私を好きになってくれるのかしら」






彼女が涙混じりに呟いた言葉は、ぼくには届かなかった。







ぼくは何も聞いてない。

聞いてない。

聞いてない。












そしてぼくは、また

彼女が好きで

ぼくが苦手な

珈琲を啜った。







この物語の登場人物達は、

一人称が「ぼく」の女性同士かも知れません。

はたまた心が女性の男性同士かも知れません。

あるいは、ごく普通の男女なのかも知れません。


社会人。生徒。


あえて、どうともとれる書き方をしました。

全てが正解なんです。


これを読んだあなたが想像した二人が、正解です。

ご想像にお任せしたく、あくまで設定はふんわりとしか決めませんでした。

お読み下さり、誠にお礼を申し上げます。


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