表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微子の憂鬱外伝 紂王伝  作者: 日和見


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/100

循環

紂王伝 第12話 日々の激しい宮廷政治のなかで、傷つき、摩耗していく私の心を癒してくれるのは、他でもない家族の存在だった。愛する妻の嬴風や、すくすくと育つ禄父との何気ない語らいの時間だけが、私を一人の人間に戻してくれる。軍部の重鎮である義父・飛廉も、多忙な戦務の合間を縫っては、よく私邸へと遊びに来てくれた。私が政務で付き切ってやれず、寂しい思いをさせている娘と孫を、不器用ながらも精一杯に慰めてくれているのだ。その温かな光景を見るたびに、私は背負った重荷が少しだけ軽くなるのを感じていた。だが、私は一国の王だ。いつまでも甘い平穏に浸っているわけにはいかない。我が商の王族『子氏』は、代々「武」を何よりも重んじてきた。そもそも我が国は、成立の起源からして周辺を圧倒する征服国家なのだ。偉大なる湯王様も、武丁様も、すべては圧倒的な武力を以て外敵を退け、勢力を拡大してこの領土を獲得してきた。いつの世も、蛮夷の脅威を退ける最上の手段は、言葉ではなく強大な武力である。力が無ければ相手に侮られ、侵略され、結果として最も残酷に踏みにじられるのは、名もなき市井の民たちなのだから。だからこそ、私は国力を高めるための大改革を止めなかった。そしてついに、その芽が爆発的な成果となって一気に地上へと噴き出したのだ。国内の主要な街道が完璧に整備され、国が価値を保証した『塩の塊』と『貝貨』が市場を席巻した。これにより、国営の流通に頼るしかなかったこの世界に、初めて自発的な民間の「行商人」たちが現れ始めたのだ。「どこそこで珍しい布が手に入るぞ!」「朝歌の貝貨を持っていけば、何とでも交換できる!」情報の滞りは消え、物資は泥道を越えて国中を激しく巡り始めた。民の生活は劇的に豊かになり、それはそのまま、我が商王朝の「税収」の激増という形で跳ね返ってきたのだ。一度回り始めたこの循環は、私の予想を遥かに超える速度で膨らんでいった。その莫大な富の恩恵は、当然、これまで私の改革を「暴挙」と呼んで足を引っ張ってきた古い家臣や貴族たちにも波及した。懐が潤い、領地が潤った彼らは、手のひらを返すようにだんだんと私の政策に理解を示し、賛同の声を上げ始めたのだ。(……そうだ。時間はかかったが、間違っていなかった)胸の奥から、確かな手応えと熱い昂りが込み上げてくる。古い因習の壁に、ついに大きな風穴を開けたのだ。さあ、ここからが本当の大勝負だ。国が富み、家臣が従い始めた今こそ、商をさらなる高みへと導く絶好の好機。私は玉座の上で、溢れる気合とともに、新王としての鋭い眼光を改めて天下へと向け直していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ