表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微子の憂鬱外伝 紂王伝  作者: 日和見


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/97

貨幣

紂王伝 第10話 二年の歳月が流れ、私は正式に戴冠を果たし、ついにしょうの王となった。私が不在の間も、しっかりと王朝を運営してくれた家臣たちから、改めて臣下の礼と忠誠を捧げられる。ひれ伏す彼らを見下ろしながら、私の、帝辛ていしんとしての治世がいよいよ始まった。私が第一に行った大改革は、国内の街道の整備であった。これまでのような強制的な夫役ぶえきによる労働だけではない。私は、汗を流した分だけの正当な対価を支払うという条件で、広く民から労働者を募集したのだ。「王よ、お戯れを! 伝統を無視し、賤しき民に穀物を与えるなど、国庫を揺るがす暴挙にございます!」当然のように、大半の家臣たちが真っ向から反対の声を上げた。宮廷が反対の怒号に包まれるなか、私は冷え切った双眸で、最も激しく噛みついてきた一人の家臣を見つめた。(――よし、お前を最初のスケープゴート(見せしめ)にしよう)私は玉座から立ち上がると、表情一つ変えずに兵たちへ命じた。「この不届き者を捕らえよ。王の命に背き、国の発展を阻まんと企てた罪だ。――神への『供物(生贄)』として、即座に祭壇へ捧げよ」「なっ、王よ!? お許しを、お許しください!」引きずられていく家臣の悲鳴が宮廷に響き渡り、堂内は一瞬で水を打ったように静まり返った。ふはは。神への生贄というお前たちの愛する大好きな伝統だ、文句はあるまい? 覚悟も無く、この王に対して讒言したわけではあるまいな。後ほど、比干さまと箕子きしさま、二人の叔父上から「いくら何でもやりすぎだ」と厳しい苦言を貰った。だが、私はただ冷たく微笑むだけだった。例え後世での評価がどうなろうとも、私はとうに覚悟を完了しているのだ。恐怖によって反対派の口を封じた私は、すぐさま次の政策へと移った。集まった労働者たちの手のひらに、対価としての穀物と一緒に、あるものを握らせた。――真っ白な、「塩の塊」だ。「これより、この塩の塊を媒介とし、いつでも他の物品と交換できるものとする」私は叔父上たちをはじめとする宮廷の重鎮たちを集め、その真意を説明した。街道を整備して人々の行き来を滑らかにし、国が対価を払うことで新たな雇用を創出する。そして、この『塩の塊』を擬似的な通貨として流通させることで、非効率な物々交換からの脱却を図る。これこそが、我が商の国を劇的に豊かにするための、最高の一手なのだ。驚愕に目を見開く重鎮たちを背に、私は静かに拳を握りしめた。さあ、改革を始めよう。例えその道が、どれほど凄惨な血の雨で汚れることになろうとも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ