努力
『紂王伝』第1話 私には、優秀な二人の兄上がいる。幼き頃より、その背中はあまりにも遠く、そして偉大だった。だからこそ、私は己に誓ったのだ。いつか兄がこの国を背負い、立つ日が来たならば、私はその大樹を泥にまみれても支える頑強な根になろう、と。その決意を胸に、私は泥を這うような努力を重ねてきた。夜明け前には誰よりも早く起き、重い木剣を振るって身体を徹底的に鍛え上げた。日が昇れば書物に齧り付き、古今東西の歴史や兵法、治国の理を脳に叩き込んだ。だが、部屋に籠もっているだけでは、真に兄上たちの足元を支えることはできない。私は身分を隠し、粗末な衣を纏って市井へと足を運んだ。市場の喧騒に紛れ、汗水垂らして働く民の生の声に耳を傾けた。彼らが何に苦しみ、何を求めているのか、国の本当の姿を知るために。そこで生まれた疑問や、本を読んだだけでは解けない難題にぶつかった時は、決してそのままにはしなかった。名もなき市井の賢人や、学識ある者を訪ね、夜が更けるまで貪るように意見を交わした。すべては、父上を左右から支え、この国を盤石なものとしている二人の叔父上たちのようになりたい、その一心からだった。「兄上には、この国の光となっていただく。私はその影となり、すべてを支えてみせる」そう信じて疑わなかった。




