愛しさにサヨナラ
1月の下旬、波多野に呼び出され僕は近所にある公園に出向いた
外は夕方で日も暮れて薄暗くなっていた
寒いなぁ、何も公園じゃなくてもいいのに、なんて思いながら公園に着いた
この公園は以前、僕は退学届けを出した時に姉と波多野に説得され退学を諦めた場所でもある
波多野はブランコに乗っていた
1人淋しく下を向いたままだった
辺りは暗く、公園内のライトが照らされていた
「小野っち…」
いつもの波多野と違う、何か思い詰めたような表情をしていた
僕は(あっこれは終わりにしようって事なんだな)と察した
何となく雰囲気でわかっていた、僕は波多野と長続きしないだろうと
「あのね」
波多野がポツリポツリと話し始めた
「最近アタシと小野っち何かおかしいよね?」
年が明けてから波多野と顔を合わす事はほとんど無かった
特に何があったというワケではない、ただ自然と距離を置いていた感じだった
もっとハッキリ言えば、会っても何もする事が無くなってきたという感じで、コーヒーを飲んだり、飯を食うぐらいしか無く、どこかに行こうかなんて話もしなくなっていた
「うん」
「でね、アタシ思ったんだ。もう終わりにしようって…」
わかっていたけど、いざ別れの言葉を切り出されると正直辛い…
「そうか」
僕はこんな事ぐらいしか言えなかった
「やっぱりアタシと小野っちは違うんだよね、趣味とかそういうのが…」
オレの趣味って何だっけ?
それに波多野の趣味って何だ?
そう言えば、お互いの趣味嗜好なんて知らなかったのかも、そう思いながらも波多野の言葉に頷いた
「聴いてる音楽も違うし、話も合わないし…何て言うか、これじゃこの先やっていけそうも無いって思って」
「何となくわかるよ」
僕は波多野の事は中学の頃から好きだった
それが高校に入ってからようやく念願が叶って付き合うようになった
でも僕は波多野が好きで付き合えたらいいなぁと思っていたのだが、いざ付き合ってみるとちょっとした温度差があった
僕は波多野と付き合える事しか考えてなくて、付き合った後、どうやって関係を築こうとか全く考えてなかった
つまり、波多野と付き合える、それが最終地点で、その先の発展なんかは頭の中に無かった
中学の時から好きで1度フラれて杉下に移ろうかと考えていた時もあった
「これ以上一緒にいたらケンカになりそうだから、アタシ小野っちとケンカはしなくない!だからもう…終わりにしよう」
つまらない事で言い争いはしたくない、僕が悪かったんだ、波多野と付き合えるようになった、ただそれだけで良かったのだが、波多野はそうじゃない
もっと色々と話をして、色々な場所に行ってデートをしたかったのだろう、僕は全くのノープランで、何をするにもまず波多野に聞いていた
どこに行きたい?何がしたい?
聞いてばかりで、自分からどこかに行こうとか、もうちょっと波多野を引っ張ってやらなきゃならないのに、常に受身の状態だった
「うん、わかった。今までありがとうな」
僕は色々と考えたけど、こんな言葉しか出なかった
波多野の目から涙がこぼれた、暗く沈んでいる顔だ
「ゴメンね小野っち。これからは友達でいよう、ね?」
友達でいよう、という事はもう会う機会は無いだろう
「わかった。今からオレと波多野は友達に戻ったんだ。また友達としてヨロシク頼むよ」
それをわかっていながら、僕は波多野の言う言葉を受け入れた
「…うん、じゃあ」
波多野の寂しげな後ろ姿を目で追いながら僕はフラれた
後ろを振り向かず、そのまま遠い存在のように消えていった
僕はフラれた
だが思った以上に落ち込むようなものはなかった
僕は以前に、波多野とは長い付き合いは出来ないだろうと思った
だからこそプラトニックで終わりにしようって決めていたからだ
これで身体の関係があったらどんな別れ方をしたんだろうか
【タラレバ】の話だが、もしそうだとしたらどんな別れ方になってたのか…
波多野が居なくなった公園で僕はBOOWYの曲を聴いていた
【Dreamin'】の歌詞にある
【そんなヤツラは好きじゃない オレはそんなにバカじゃない
ハートは今ここにあるWOW】
このフレーズを口ずさみながら僕は公園を出た
僕は帰りに商店街で渡辺美里の【My Revolution】とファミコンのカセット【忍者ハットリくん】を買い、部屋に籠り渡辺美里の曲を聴きながらファミコンをやっていた
何でこの2つを買ったのかよく覚えてないが、波多野の事を忘れる為にこうやって気を紛らわそう
(オレは波多野にフラれたんだ。でも何で悲しいとかそういう気持ちにならないんだろうか?)
もしかしたら僕は無理をしていたのかも知れない
波多野の行きたい所に行っても心の底から楽しめるという事は無かった
波多野には申し訳ないと思っている
もう少し僕が男らしくグイグイと引っ張れば…
だけど今は足枷を外したかのような自由な気分だ
渡辺美里の曲を聴き終わってまたBOOWYのCDを取り出しゲームをやりながらまた布袋寅泰の弾くギターの音色に身を委ねていた
こうして波多野との恋は終わった
もうすぐで期末テストも始まる
このテスト如何で僕は2年に進級できるかどうか、そんな事をぼんやりと考えていた




