not憩
受付においての宿代に関する事を決め、夕食の時間帯よりは多少早い時間帯だっためか、他の客の姿を見ることもないまま食堂に入っては席に着く。
と、そこは想定の範囲内のイベントが開始される
「いらっしゃいませ!何に致しましょう?お飲み物でしょうか?お食事でしょうか?そ・れ・と・(もぎゅ」
「いいから、普通の食事を頼む」
「ふぁぃ、わかりぃましぃたぁ、おねぇさまぁ」
言い出しそうな名詞を言い切られる前に、その発生元となる口を両方から潰す様にして黙らせては、こちらからの要件を伝え、了承を得てから解放すると「では、行ってまいります!」と厨房の方へと駆け込んでいき「ディナーセット一つはいりまーす」という言葉を聞いては、ようやく安心してはテーブルに置かれた水のカップに口をつけては、ようやく静かになるかと気持ちを落ち着かせる。
なにせ、落ち着かせなきゃならない要因となる代物が、なぜかとなりの席に座りだしていたりするからだ。
「でだ、なんでお前は隣の席に座ってるんだ?仕事はどうした」
「今は小休止だそうです。あと、それはもう、お姐様と一緒に食事をと」
「いや、お前食事って・・・」
「あ、それはそうと、お姐様!お昼どうでしたか?シー特製お弁当です!」
「えっ?あれ、お前が作ったのか?」
「はい!美味しかったですか?」
「旨かったが・・・お前、料理できたんだ」
「料理ぐらいはできますよ?」
そういわれて思い出す、お昼のお重・・・
それはかなり豪勢という訳でもないが、1つに二種類のおかずが存在したのが3段3段の六段。
それに加え、パンという代物が一段に入っており、もう一つはフルーツやサラダといった代物まで完備されていた代物を思い出す。
「いや、以外だなと」
「むー、なんだか酷い言われ方のような・・・」
「なんか、料理できるイメージがわかないからなぁ、どうやって覚えたんだ?」
「それはもちろんお姐様への愛を伝える為には料理も必須と思い、倉庫にあったレシピ集全てインストールしましたし」
「って、お前、いつの間に!?」
確かに、VRMMOでは調理スキルみたいな物を上げるために、レシピ云々とかが売られているデータを買っては習熟するという方法だったが、その習熟するといっても端末型にインストールするという恰好で消費される代物で、生物系では各人の端末に、機械生命体にはそのまま身体(?)へとインストールされ、一度使えば消費する恰好でデータが消去されるデータともいえる代物だった。
「倉庫に入れておいたレシピ集をすべてをか?」
「はい!倉庫にあったのは全て覚えましたよ?」
「ほほぅ・・・」
急ぎメニューの共通倉庫群にあるリストをざーっと流し、ディレクトリの区分けのようして整理していた調理部のリストの下位、その下位層の中から調理器具の下に存在するレシピ集の中、さらにその下に区分している未市販品の区分けを確認すると、その中身はスッカラカンという状況であった。
一時、イベントや期間限定クエストなどで手に入れていた代物を区分け移動させていた時に、ぽいぽいと放り込んではおいた代物であり、再配布すらされずに二度と手に入らないとも言われている代物群だったりする。
「・・・あの中には、一般市販されていない、今じゃ手にも入らないレシピもあったと思ったんだけどなぁ?それが見事に全部なくなっているのは、どうしてなのかなぁ・・・?」
「えっ?あっ・・・えーっと・・・ヒュ、ヒュ~~~」
目というか顔をそらしながら、口から音にもならない空気の流れを作り出している存在がいる。
どうしてやろうかとジト目になりながら思案していると、
「はい、お待たせしました。ディナーセットですよ」
そういわれて登場したのは、元気少女の方ではなく、ふくよかな女性のほうだった。
そして、テーブルにおかれるは二人分の食事セット。
複数のパンが1つのバケットにはいっている代物と、それに合わせる恰好のスープが一つ、さらにソテー物?といえる代物が一種類おかれていった。
「えーっと・・・」
「ああ、シーちゃんの分もですよ。これから忙しくなる時間の前に、先だって賄いという形でね」
「あぁ、なるほど」
「あと、これがシーちゃんから教わった料理ね。いつもの固いお肉が、こんな風にする方法があったなんてねぇ」
と、置かれたのは、ハンバーグ。
たしかに、固い肉の処理方法の一つとしては、アリだけれども、ミンチ肉にするのってどうやったんだ?
よくあるのって、包丁で細切れにしてたたくとかじゃなかったっけか。
「ふっふっふっ・・・シーの刃物さばきをナメてもらってはいけませんよぉ・・・あ、お姐様ならシーの事を舐め(物理)てもらってもいいですよ?いつでもウェルカムです!さぁ、さぁ!」
「・・・はいはい、それはいいや。で何でできるようになったんだ?」
「えぇぇ、とってもとっても残念ですよよよ・・・っと、それでですね。えーっと、レシピインストールしたら、いつの間にか出来る様になってただけなんですけどね」
残念がるフリをしては、すぐに復活し、説明する存在。
その説明を聞けば聞くほど、"何それ、ちょっとうらまやしい、いや、うらやましい"になる。
なにせそれは、まさに機械だからこそインストールしたとたんに、決められた行動の反復とかそういうのが得意的な要素とか、もうね、くっそぅ、そうなるならこっちが先にインストールしとけばよかった・・・。
「シーちゃんのお陰で、固いお肉も何とかなりそうなのよね。だから、そのハンバーグ?というのはサービスにしておくわね」
「ありがとうございます・・・っと、そうだ」
というか、肉で思い出した。
「あの肉を加工してる樽、職安組合に卸す事になったので、引き取りに来たら1つ渡しておいてください」
「あらぁ・・・狙っていたのに残念ねぇ・・・」
「すいません。どうしても卸してほしいと懇願されてしまって」
「まあ、めったに手に入らない物ですから仕方ありませんね。ええ、わかりました」
「すいません、よろしくお願いします」
「じゃ、わたしは行くから、ごゆっくり」
広い食堂の中、二つの存在しかいない空間‥‥‥
故障Sと一緒という事は、いやな予感しかしないというか、
「お前、なに服を脱ごうとしてるんだ?」
「えっ?女体盛りとかって、そういうモノじゃないんですか?」
「んな事せんでいい!」
女体盛りって、どこからそういう知識を手に入れてるんだよ、というかお前がやったら女体盛りじゃなくて機械盛りだろうが。
機械盛り‥‥‥あ、それ、なんか良いかも、こう機械的な冷たい装甲を利用して食器とかの代替とか‥‥‥
「むぅ・・・お気に召さないと。ううむ・・・そうだ!・・・はい、お姐様!あ~んして!」
て、そんなこちらの思いとは裏腹に、加速方向が違う暴走をし始めようとしている暴走Sという存在が出来上がりつつあった。
よし、完全スルーでいこう。というかスルー推奨でしかない。
と、無視して食事を始めていくと、
「あ、きっとはじめはシーから何ですね!では、あ~ん、あ~~ん、あ~~~(フグァ」
口を開けたままコチラへのアピール度合いがひどくなり始めてきた際、スルースキルが限界を突破できずに、手近にあったバケットの中身のパン一つ、無理やり口の中に放り込んでおいた。
「ふぉれふぁ まひゃふぃふ ふぉふぇぇふぁふぁふぉ ひゃい!」
「いいから、黙って食え。余計なことはするな」
「ふぁ~ふぃ・・・」
一応こちらが釘をさして監視していれば、それ以上の事はしてこないのだが、なんかこちらに邪魔になるかならないかのギリギリで詰め寄ってきているのは、何というか‥‥‥はぁ‥‥‥
何か、今日一番疲れる気がする
『アーネスト様、私の分はあるのでしょうか?』
『・・・・・・えっ、あっ・・・』
『いえ、私は大丈夫ですので、お気になさらずに』
『スミマセン、用意サセテモライマス』