小話(食)
職安組合でよろしくと言われながら出てきたはいいが、時間としても夕刻前といったところ。
思わぬ収入が入ってはきたは良いものの、食事代と宿代以外に使う事がなさそうな気がする。
まぁ、それでいいんだけど。
なら、早速とばかりに手近な店でも散策しようかと、それらしき店がありそうな場所を記憶を頼りに向かっては、発見した屋台へと突撃を敢行する。
「いらっしゃい」
よくいるおじさん系の屋台、売られているのはこのコッペパンと思しき代物に具材がたんまりと入った、サンドイッチ?みたいなモノである。
「とりあえず1つ」
「あいよ」
目の前で軽く焼かれたパンにササッと具材が詰められた代物を手渡され、代金を支払い早速とばかりに口に含む。
「どうだい?結構いけるだろ?」
店のおじさん系からはそういう風に聞かれてはいたが、さらに一口、二口と食してみても普通だった。
いや普通でいいんだけど、中に入っている肉が、どうしてもあの肉と比べてしまい、独特な臭みというのがこう・・・うん、まぁ、他の具材で消えるから、悪くないといえば悪くはない。
「結構・・・普通?」
「そりゃ手厳しいな」
「けど、悪くないから、もう二十ほど追加で」
「えっ?」
「二十ほど追加で」
「ま、まいど・・・」
そう言われた店のおじさん系は、驚いてはいたが、すぐに作業に取り掛かかり、出来上がりを貰っては口にいれ、貰っては口で消化していただいていった。
「お客さん・・・すげぇな・・・」
「ん?なにが?」
「いや、その食べっぷりが」
「これぐらい摂らないと、維持できないからなぁ」
「あぁ・・・たしかにお客さんだとそうかもしれんな」
見上げてくる店のおじさん系は、何か納得した風にみてくるが、それでも作業の手を止めないのは、なかなかにプロだなぁと感心してしまう。
「ほい、20個目。って、いやはや、見事な食べっぷりというか、なんというか、そういう客は初めてだよ」
最後の20個目をサラリと喉元を通過させた後、店のおじさん系は驚いてはいたが、こちらとしての活動エネルギーの量を確認するも、微妙。
ほんとに微妙な伸びしろしかなかった。
このサンドイッチでこれだと、一体全体、どれぐらい摂取しなければならないのかがわからない。ただ味には飽きてしまったが、足りないといえばまだ足りない。
「うーん、まだ足りないか・・・」
「えっ?まだ足りないって・・・?」
「まだまだ不足してるからな」
「えぇ・・・」
「それじゃ、他も見て回りたいのでこの辺で、ご馳走さん」
「え?ええ、あぁ・・・まいどあり・・・」
これ以上この屋台の代物は食べ飽きた、というか味そのものに飽きたので、この屋台を退散してはほかの屋台へと足を運ぶに限る。
やはり同じものばかりは飽きてくるのは生物と大差ないのかな?と、次に目に入った隣の屋台へと・・・
お、今度は串焼きっぽい何かか・・・
「へいらっしゃい!」
こんどは威勢の良い兄ちゃん系だった。
まぁ、今回は串モノだし・・・よし、
「とりあえず、40本で」
「40本はいり・・・えっ?」
「40本で」
「えっ?はっ?・・・ま、まいどあり!」
確認するかのようにこちらを見上げてきたが、代金を目の前に置いたとたんに早速と取り掛かってくる。
作られる串焼きは、肉のブロックが刺されて焼かれる。こんがりとした香りがこれまた旨そうな匂いをつくってくる。
「まずは5本で」
「いただきます」
受け取った1本を口に含んでみて気づく、あ、これ鶏肉だ。
弾力もあって歯ごたえもあって、また、単純な塩味だけで旨い、あ、さっきのパンにはさんでも良さげかも。
焼かれては手渡され、手渡されては口に運びと繰り返し、とうとう
「最後の40本目!」
そういわれて手渡された串をすぐに消費する。
ゲージをみてみると、先ほどのサンドイッチ?とはうって変わった変化が見られた。
これはもしかして、肉系が良いのか?なればもうちょっと試してみるかと
「もう40本追加で」
「えっ?」
「追加で」
「えっ・・・あっはい・・・まいど・・・」
最初の威勢はどこいったのかわからないが、とりあえず代金を置いてみては了承して焼き始める。
そうして出来上がったものを摂取してみれば、やはりゲージの上がり具合は先ほどのサンドイッチ?と違って悪くはない。
ふむ・・・やはり肉か?
いや、他にもあるかもしれないし、検証するにはこの屋台が並んでいるこの通りは丁度いい。
なれば、隣へと移動し、ここは汁ものか・・・ふむ・・・
「い、いらっしゃい・・・」
「とりあえず・・・これなら20杯かな」
「ひ、ひぃ・・・」
「ん?」
「に、20杯ですね・・・は、はい・・・」
置かれている鍋から、椀へと注ぎ込まれる汁もの。
物としてはスープという感じとしか見受けないが…というか、豆のスープだった。
貰っては飲み込んでを繰り返し、ゲージを確認するも、汁物はやはり上がりが悪かった。
ふむ・・・ならば次はと隣をみてみると、お、今度は揚げ物・・・
* * *
一通りの屋台を全部回ってみて分かったことは、基本"肉"が一番よさげである事だった。
肉が少しでも入っている方が、ない代物よりも良いという結果になっているのは分かった。
そっか肉かぁ・・・
それにしても、ゲージがFULLになっていない為か、満腹感という感情そのものが一切感じられない。
そもそも、空腹感というのがあるのかすらわからないけれど・・・
って、気が付いたらけっこう日が傾き始めて、辺りが徐々に薄暗くなってきており、屋台の一部は店仕舞いを行っていたりする。
時刻表示を確認すると17:30を回った頃合いだった。
もうそんな時間か、結構あれから時間がたったなぁ。
とりあえずの今回の収穫としては、"肉"を基本にすればよいという事が分かった。
となると、宿にはあの肉を提供してるし、あ、そういや、宿でもあの肉で夕飯が出されるんだっけか、なら
「そろそろ宿に帰って晩飯食べてみないとなぁ」
「「「「「「(って、まだ食うのかよ!!)」」」」」」
なんか周囲からの視線を感じ、そちらの方向を見てみたが店じまい作業をしている屋台の住人だけだけであり何だったのか?と疑問に思ったが、さっさと宿に帰ってあの肉で再検証を始めなければならないので、そこは気にしないことにしておいた。
〇屋台連合緊急井戸端会議
「おい、どうする?俺の店はまだ助かったが・・・」
「ああ、あいつのところは100超えた辺りから燃え尽きてたもんな」
(チラリ
「オレはヤッタゼ・・・オレはヤッタゼ・・・ブツブツブツ」
「真っ白になってやがる・・・」
「アレだもんな・・・」
「でだ、どうも肉系が好みなんじゃなかろうか」
「あ、俺のとこは豆だったから、そんなには・・・ちくしょう・・・」
「ちくしょうというがな、大量注文うけてみろ?それどころじゃなかったんだぞ?」
「どうする?出禁にするか?」
「いや、金払いは良いから、それは・・・」
「だが、あの巨人の姐さんが大量に食べ始めたら、他の客が逃げちまってるんだぞ?」
「そりゃあの量を食っても食っても次々いくもんな・・・見てるだけでも・・・」
「しかも、あの後、まだ食うとか言ってたしな・・・」
「どんだけだよ・・・」
「結局、金払いの良い上客であることには変わらない。か、ただ、なぁ・・・」
「おぅ・・・どうするか・・・」
「困ったもんだ・・・」
「あのぉ」
「ん?何かいい案がおもいついたか?」
「案というか、それよりも、あの巨人の姐さん、明日も来るのでしょうか?」
「「「「「「・・・あっ」」」」」」
「やべっ、オレ下拵えしに戻るわ・・・」
「オレも」
「仕入れ量増やすべきか、いやしかし、もし来なければ・・・うぬぬぬ・・・」
「肉を入れて売上を上げてみるか・・・いや、それだと仕入れ値が・・・ブツブツ」
彼らの苦悩は、しばらく続く・・・




