第2章 楽しい水泳の授業にて
真は更衣室でのそのそと着替えると、プールサイドに出た。流と面倒くさーなどと言いながら準備運動をする。今回の水泳の授業は3回目で、水中での実戦授業だった。
「よーし、まず息を止める訓練からだ。まぁ…そうだなぁ…日本の隊に入りたかったら2分頑張れ。」
女鬼コーチが言った。
「2分って無理だろ。普通に。」
と誰かが文句を言った。
「おい、そこ、さっさとやる。沈めるぞ。」
「ハイすいません。」
それを聞いていた真は、真面目にやるつもりは無かったが、真面目にやると心に決めた。そしてすぐ準備にはいった。
「じゃあ、よーいうどん。」
コーチの変なボケで出遅れてしまったが真だが、慌てて水中に潜る。最初の1分で30人のうち10人ぐらいが脱落した。真は苦しい中、流がいるはずの方に目を向けた。しかしそこに流はいなかった。どうやら水と同化して水面で呼吸をしているらしかった。だが、
「流、ズルはもっと上手くやれ。…流失格と。」
「えーーー!」
(流…)
真は心の中で苦笑いしながら頑張って耐えていた。更に30秒経った頃にはもう2、3人しか残っていなかった。真は
(もう……無理!)
と水面から顔を出そうとしたら、あることに気付いた。
「…苦しく無い。」
不思議な感覚だった。息は口や鼻から漏れ続けているのに、息は吸える。意味が分からなかった。まるで肺が独立して息をしている様だった。このまま何時間でも水中にいれる気がした。実際に5、6分経っても水面に顔を出さなかった。
「おーい真、生きてる?死んでる?」
と流が聞いてくるので、真は水面から手だけを伸ばし、ピースサインをした。
「どうやら特性が無かった訳では無い様だな…もう上がってこい。」
コーチの合図で真はやっと水面から顔を出した。
「真、何をどうやったかは知らんが、一応検査受けとけ。何か変な特性が有るかも知れない。」
とコーチに言われた真は、授業を抜けて検査室に向かった。
「何だったんだろう…やっぱり特殊な特性が!やりー!!」
とテンションアゲアゲで検査室に入って事情を説明し、検査を受けた。すると、検査室の眼鏡をかけた男が、
「君には特性が備わっていたよ。それも珍しい特性だ。」
と男が言った。
「本当ですか!それは…?」
真は興奮気味に聞いた。
「まあまあ、落ち着いて。えー、聞いた話によると、君は強化人間プログラムで失敗したそうじゃないか。」
と男が聞くので、真は、
「はい。確か融合装置の誤作動で、融合する物体がスキャンされる前に装置が作動しました。」
と、落ち着いて答えた。すると男は妙な事を言った。
「おそらく、物体をスキャンする場所には、ちゃんとあったんだよ、融合させる物体が。」
そんな筈はないと思った。確かに物体をスキャンする場所には何も無かった。
「いや、確実にあったんだ。そこには<空気>が。君は空気と融合し、空気の特性を得たんだ。」
男が言った。