第91話 <大都>
傾き始めた陽が辺りを赤く照らす。
そこにそれはあった。
巨大な城壁。
リンは思わず息を呑んだ。
高い。
とにかく高い。
城壁は左右の地平線へ続いている。
その向こうには無数の建物があるのだろう。
煙。
塔。
そして人の姿。
「大きい……」
自然と口から言葉が漏れた。
ヨウドも城壁を見上げる。
「識別名リン」
「これが大都である」
シユウ帝国。
首都。
大都。
これまで訪れた街とは比べものにならなかった。
ヤマシロ王国の王都。
ハン王国のフサール市。
どちらも大きかった。
だが。
目の前に広がる都市はその何倍もあるように見えた。
馬車は門へ向かう。
多くの旅人。
隊商。
行商人。
護衛兵。
人が絶えず行き交っていた。
入街の列に並ぶ。
しばらくして順番が来た。
門番が声をかける。
「身分証を」
リンはテンの街での入国証、それにボロンから受け取った紹介状を差し出した。
門番は書類を見て頷く。
「ヤマシロ王国からか」
「通っていい」
馬車は大都へ入った。
人。
人。
人。
街へ入った瞬間。
リンは圧倒された。
広い石畳の道。
両側に並ぶ商店。
露店。
荷車。
呼び込みの声。
異国の言葉。
様々な人々が行き交っている。
「すごい……」
思わず見回してしまう。
クロウが肩に止まったまま小声で言う。
「人口多数」
「騒音レベル高」
「落ち着かない」
「私もよ」
リンは苦笑した。
エース商会を探す。
道端に警官らしき男が居た。
リンが聞く。
「この商会に行きたいの」
「知らないかしら?」
男が答える。
「エース商会?」
「俺は知らんが商店が多いのは城南の辺りだ」
「この街は初めてか?」
「ええ」
リンが答える。
男が続ける。
「中心に王府が有ってその南側に広がるのが城南街」
「商店はその辺りに多い」
「ここは城東だ。城西は歓楽街、城北には役所が多い」
「城南街に行って聞いてみな」
「わかった」
「ありがとう」
リンらは街の中を進む。
大都の街は広い。
小一時間かかって城南街に来た。
再びその辺りで街の人に聞く。
ようやく知っている人に出会えた。
大通りから少し外れた場所。
馬車は向かう。
やがて目的地へ到着した。
三階建ての立派な建物。
入口には看板が掛かっている。
エース商会。
やっと来ることができた。
「ここなのね」
リン、ヨウドは馬車から降りる。
当然のようにクロウはリンの肩にとまる。
中へ入る。
商会の職員が近付いてきた。
「いらっしゃいませ」
ボロンの紹介状を見せる。
職員の表情が変わった。
「ああ」
「支店長を呼んできますね」
「少しだけ待っていて下さい」
リンらが商会のロビーの隅で待つ。
「大丈夫かしら」
「フサール市でのことみたいに」
「突然、役人に取り囲まれたりしないかしら」
やがて四十代くらいの男が走ってきた。
「お待たせ致しました」
「支店長のアルマイトです」
「話は伺っています」




