第42話 <西方大陸>
船旅は思ったより穏やかだった。
魔物も現れない。
追手も来ない。
風は安定し、帆船は西へと進み続けた。
四日目の朝。
見張りの船員が叫ぶ。
「陸だぞ!」
皆が甲板へ出た。
水平線の向こう。
薄く影が見える。
やがてそれは大きくなっていく。
山。
森。
建物。
港。
フロムが言った。
「現生人名 西方大陸」
ミリアが身を乗り出す。
「来た、来たわ!」
ハンスが苦笑する。
「落ちるなよ」
「失礼ね!」
リンは黙っていた。
西。
百年前。
七人が向かった場所。
父が残した言葉。
鍵。
戻る。
その答えがあるかもしれない場所だった。
正午過ぎ。
船は港へ到着した。
高い石積みの岸壁。
多くの船。
荷揚げをする人々。
大声を飛ばす商人。
ヤマシロ王国と似ている。
しかし少し違う。
服装も。
建物も。
同じ人間なのにどこか異国だった。
一行は船を降りる。
「さて」
ハンスが周囲を見る。
「これからどうする?」
ミリアは即答した。
「ボロンさんの商会!」
「まずは情報収集よ!」
クロウが割り込む。
「推奨しない」
「ハン王国内の滞在を最小化すべきだ」
フロムも頷く。
「同意」
「極東+81地区からの情報伝達速度を考慮すると」
「既に追跡情報が到着している可能性がある」
ハンスがため息をつく。
「お前らが言うことにはよくわからん部分もあるが」
「つまり、俺達はこの国でも追われるかもしれねえと」
「高確率」
クロウ。
「高確率」
フロム。
「嫌になるくらい息ぴったりだな」
「不本意」
「不本意」
今度は声まで揃った。
ミリアが吹き出す。
「ねぇ」
「本当は二人って結構仲良いんじゃない?」
「却下だ」
「却下よ」
再び揃う。
ハンスは頭を抱えた。
「もういい」
「お前ら…」
「好きにしてくれ」
そしてリンが静かに言う。
「だが今の私達には手掛かりがない」
「私とよく似た人間が魔物をなくすため仲間のもとへ向かった」
「話を聞いたとき私は彼らを追えばいいと思った」
ハンスが返す。
「だがな」
「思い返せば全て宰相の言葉だ」
リンは眼を伏せる。
「そう」
そして続ける。
「でも、きっと七人の剣士がいたということは記録から見ても間違いないのでしょう」
「だけど…」
「西に向かったということ」
「仲間と合流したということ」
「どこまで本当なのか分からない」
「ハン王国での滞在は最短にして西に向かえ」
クロウが答える。
「最速での西行奨励」
フロムも言う。
「お前ら何を知っている」
「って、聞いても答えないだろうがな」
ハンスが言う。
「西行工程は提示する」
クロウが静かに答える。
「何も教えないが道案内はするってことか?」
ハンスが睨むが、二匹はそれ以上何も答えない。
他に良い案もなくボロンの商店を頼ってまずは情報収集をすることにした。
三人と二匹は船を降りる。
ここはハン王国フサール市。
大陸最東端の街。
お陰様でここまできました。
新たな章:第2章 大陸編をスタートします。




