第18話 <魔犬使い1>
交易都市を出た。
王都までは、街道を東に向かい馬車で一日。
歩いても二日ほどだという。
「なんで付いてきたんだ」
ハンスがミリアに絡んでいる。
「知りたいから」
「帰れ」
「嫌」
同じやり取りの繰り返し。
ハンスは頭を抱える。
「面倒なやつを拾った」
「拾われてない」
「じゃあ何だ」
「同行」
「勝手にだろ」
「うん」
「でも、あんたもでしょ!」
リンは少しだけ口元を緩める。
そんな二人を見ているのが、少し面白かった。
一方でリンの肩の上。
クロウが言う。
「騒がしいな」
それ以上クロウは何も言わなかった。
ただ時折。
その目が青白く光る。
数秒。
動きを止める。
そして元に戻る。
誰も気付かない。
半日ほど歩く。
街道脇の森。
昼下がり、いつもと変わらない風景。
木漏れ日と、遠くから聞こえる鳥の声。
だが、クロウが突然、頭を持ち上げた。
突然の争う音、うなり声、人の叫び声が響き渡る。
クロウが羽ばたく。
街道の先を見て叫ぶ。
「戦闘、戦闘状態!」
飛び跳ねる複数の黒い影。
襲われているのは一台の馬車。
馬車を背に1人の若い男が必死で剣を振るっている。
黒い影は魔犬。
三体。
だが、次々と新手が森から姿を現す。
やがて十体以上の魔犬が現れ、男を取り囲んだ。
「危ないな」
リンとハンスが走り出す。
剣を抜く。
「助太刀する」
男のもとへ着くやいなや、魔犬に立ち向かった。
リンが前へ出る。
一閃。
魔犬の首が飛んだ。
血飛沫。
ハンスが叫ぶ。
「触るな!」
「私は問題ない。だが、ミリアは来てはダメ」
リンは答える。
ようやく追いついたミリアだが、数歩下がって身構える。
だが、不満そうに眉をひそめた。
問題がない訳がない。
普通の人間なら。
高い確率で死ぬか、あるいは魔人化する。
それなのに――
リンも。
さらにはハンスまで平然としている。
森の中の木の上。
笛の音。
そこに人影がいた。
痩せた男。
フードのようなものを被りよく見えないが、
目がおかしい。
ローブのような服から、わずかに見える腕の肌も土気色をしており、普通でない。
「人間じゃない? 魔人?」
ミリアが呟く。
男は手に持った笛を吹いた。
その時。
魔犬が一斉に動いた。
魔犬使い。
数頭の魔犬がハンスに向かう。
統率の取れた動きで一斉に襲い掛かる。
ハンスが踏み込む。
超大型クレイモア。
魔犬の動きを全く気にしていないような戦い方。
重なったところで横薙ぎ。
三体まとめて吹き飛ぶ。
横に生えている木も折れた。
いや、折れたのではない。
魔犬ごと抉り取られていた。
「馬鹿力。こっちも人間じゃないわ。筋肉ダルマ、いやクマね」
「うるせえ、悪口か!」
その瞬間。
木の上で魔犬使いが弓を構えた。
狙いはハンス。
ミリアの眼鏡が鳴る。
カチッ。
補助レンズ。
パカッ。
降りる。
ミリアは改造拳銃を構える。
照準。
発砲。
ドォン!!
「きゃっ!」
ミリアは反動でそのまま尻もちをついた。
だが、銃弾は魔犬使いの胸を打ち抜いた。




