第17話 <旅立ち>
ミリアは遺物が好きだった。
不思議なものがたくさん。
街にないものばかりだった。
誰が作ったんだろう。作った人はどこに行ってしまったんだろう。
誰も答えを知らなかった。
遺跡の町にいたジジイ。
ここいら辺では一番、遺物に詳しかったけど、こんなナイフは作れない。
そして恩人。
遺物の、そして世界の秘密を知っている気がした。
白い不思議なナイフ。
ミリアはナイフを見ながらつぶやく。
「あの人と同じだ」
遺跡での落盤事故
白いナイフをくれた男。
名前も教えてくれなかった。
あの発掘屋はジンって呼んでいたけど。
古代文字を読んでいた。
魔物をなくすと言っていた。
西に向かったという。
ミリアはナイフを握った。
そして――
私も西に行く。そして見つける。
何故だか分からないが、あの人だけは知っている気がした。
世界のことを。
自分が知りたかったことを。
全部。
リン。
古代文字を読んだ。
恩人以外で初めてだった。
ミリアの心の中で、決意が固まって行った。
「あのひとと同じものを持つ人がいる」
「行かなかったら――たぶん後悔する」
翌朝
まだ日も昇っていない。
リンとハンスは荷物を整える。
クロウがリンの肩に舞い降りる。
「俺も一緒に行かせてもらうぜ」
「なんか俺のじいさんのこと、関係しそうだし」
「発掘都市も飽きた」
「いいよな」
「ああ」
2人と1匹は宿を出て街道へ向かった。
交易都市の壁を越える。
「よし」
ハンスがうなずく。
「勝った」
「何にだ」
「ミリアだ。さあ王都に向かうぞ」
ハンスはにこやかに歩を進める。
その時。
街道の脇に一本の木。
「おはよう」
木の後ろからミリアが顔を出す。
完全装備。
ポニーテール。
工具袋。
改造拳銃。
弾け玉。
巨大な荷物。
全部持っていた。
ハンスが固まる。
「なんでいる」
「あんたこそ」
「行くから」
「どこへ」
「王都」
「帰れ」
「嫌」
即答。
「なんでだ」
ミリアは少し考えた。
そして言う。
「知らないから」
「まだいっぱい」
視線がリンへ向く。
「それに」
白いナイフを取り出す。
「ひょっとしたら」
「恩人のことも分かるかもしれない」
沈黙。
ハンスが頭を抱えた。
リンは少し微笑んで、少し楽しそうに歩き出す。
ハンスが慌てる。
「おい!」
「連れてくのか!?」
「お前もおんなじだろ」
クロウがリンの肩にとまったまま言う
ハンスが固まる。
数秒。
「……それを言われると弱ぇ」
ミリアが小さく顔をほころばせた。
クロウが呟く。
「一気にノイズが増えた」
ハンスはしぶしぶ後に続いて歩き出す。
「ああ、うるさくなった」
「騒がしいのが増えた」
ミリアは振り返って、リン、ハンスに向かって笑顔で言った。
「よろしくね」
さらに、
「ねえ、クロちゃん、その羽やっぱ、一本頂戴よ!」
「危険、危険、やっぱこいつ、同行不許可!」
慌ててクロウは逃げ出した。
こうして、リンとクロウ、ハンス、ミリア。
四つの影は王都への街道を歩き始めた。
ミリアは一度だけ振り返った。
交易都市はまだ見えていた。
だが、
もう戻るつもりはなかった。




