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崩壊世界の再生人類  作者: Beta
目覚め

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1/17

第1話 <荒野にて>

崩壊した世界で目覚めた少女は、喋る鳥クロウに導かれ旅に出る。滅びかけた世界に残る遺物、魔物、再生人類、そして謎の戦争。仲間たちと共に、世界の真実を求め西を目指す。

<起動ログ>

>>> System Booting...

>>> Archive Link: LOST

>>> Time Stamp: UNKNOWN

>>> Error: Temporal Reference Missing

>>> Initializing Recovery Protocol...

>>> Human Preservation Facility - Unit 07

>>> Status: Critical

>>> Embryo Storage: 2% available

>>> Incubation System: PARTIALLY FUNCTIONAL

>>> Educational Module: DEGRADED

>>> Warning:

Scheduled Awakening Timing: FAILED

Actual Delay: XXXX YEARS


>>> Error: Historical Data Corrupted

>>> Error: Civilization State Unknown


>>> Emergency Directive Activated


「……覚醒プログラムを起動します」


>>> Subject ID: E-07F

>>> Physical Growth Initiated

>>> Neuro-Data Injection: PARTIAL SUCCESS

>>> Motor Function Calibration: COMPLETED


>>> Warning:

Educational Dataset Incomplete


>>> Recommendation:

SURFACE RELEASE


>>> Final Protocol:

“ADAPTIVE SURVIVAL”


>>> Initiating Awakening...

>>> Directive: RECONSTRUCT HUMAN ORDER

>>> Subject Name: ERROR

(ノイズ混じり)

>>> ……エラー……

>>> ……エラー……

>>> ……記録断片……


<荒野にて>

 風は、砂を運んでいた。

 乾いた粒子が頬に当たるたび、肌の表面が削れていくような感覚がある。長く歩いていれば、唇はひび割れ、喉は焼けつく。

 そんな荒野の果てに、かつて集落だったものがへばりついていた。

 岩山の麓に、無理やり押しつけられたような形で。

 崩れかけた石積み。地面に掘られた浅い穴。洞窟に板を立てかけただけの住居。風を防ぐことだけを目的にした、粗末な造り。

 生き残るための最低限。

 それ以上は、何もない場所だった。

 その入口に、ひとりの女が立っている。

 長く擦れた外套。腰には細身の剣。

 その姿だけ見れば、この時代では珍しくもない。

 だが——歩き方だけが違った。

 迷いなく、揺れもない。

 誰にも属さない者の歩き方だった。


 そのまま、集落の中へ入る。

 何人かの視線が向けられる。

 警戒、好奇、そして——値踏み。

 女は一切気にしない。

 ゆっくりと、干し肉の束を吊るしている店の前で立ち止まった。


「水と、それ」

 短く言う。

 店主の男は、しばらく黙って女を見ていたが、やがて口を開いた。

「外からか」


「……さあな」

「どこから来た?」

「覚えてない」

「……」


 男は顔を少ししかめる。

「どこに行く」

「分からない」


 答えはあまりにもあっさりしていた。

 冗談ではない。ごまかしでもない。

 本当に——分からないのだと分かる言い方だった。

 男はそれ以上聞かなかった。

 水袋と干し肉を差し出す。


「2クレジットだ」

 女は腰から小さな袋を取り出し、中を確認することもなく銅貨二枚を置いた。

 男はそれを静かに受け取る。

「……気をつけな」

 ぽつりと、言った。

 女は答えない。

 ただ、水袋を受け取り、そのまま背を向けた。


 集落を出ると、また風が強くなる。

 背後から視線を感じる。

 ——追われる気配ではない。

 ただ、“もう生きて帰ってこないかもしれない者”を見る視線。

 女は振り返らない。

 そのまま荒野へと歩き出す。

 しばらく進んだところで、足を止めた。


 風の音の中に、別の音が混じっている。

 低い唸り声。

 複数。


「……来るか」

 呟いた瞬間、岩陰からそれが飛び出した。

 犬だった。

 だが、普通の犬ではない。

 体毛はまだらに抜け落ち、露出した皮膚は黒くただれている。牙は異様に長く、目は濁っている。


 ——魔犬。


 五匹。

 間を置かず、後ろから人影が現れる。

 三人。

 痩せているが、目つきだけは鋭い。


「そこまでだ」

「いいもん持ってるじゃねぇか」

「全部置いてけ」


 女は剣の柄に手をかけた。

 ゆっくりと、しかし迷いなく。


 魔犬が一斉に飛びかかる。

 速い。

 だが——

 女の動きはもっと速かった。


 踏み込み。

 一閃。


 最初の一匹の首が、胴とずれた。

 止まらない。

 二匹目。三匹目。

 斬るというより、“流れで切れている”ような動き。


 四匹目の牙が腕に届く。

 布が裂ける。

 ほんのわずかに、血が滲む。

 だが、女は止まらない。

 五匹目を斬り伏せたところで、初めて動きが止まった。


 静寂。

 砂の上に、犬だったものが転がる。

「……は?」

 男の一人が、間抜けな声を出した。

「んな……バカな……」

 女は軽く腕を見る。

 噛まれた場所は、浅い。

 すぐに目を切り離す。

 気にするほどでもない、という風に。


「次は、お前ら?」

 静かな声だった。

 挑発でもない。

 ただ事実を確認しているだけ。


 男たちの顔色が変わる。

 そのうちの一人が、すぐに懐へ手を突っ込んだ。

 取り出したのは——

 黒い筒。

 鉄と木でできた、異物。


「これでも同じこと言えんのかよ」

 女の視線が、それに向いた。

 ほんのわずか、興味の色が混じる。


「……それ、まだ動くのか」

「死ね!」

 乾いた破裂音。

 空気が震える。


 だが——

 弾は、当たらない。

 女の身体が、わずかにずれただけで外れていた。

 二発目。

 三発目。

 距離が消える。

 気づいたときには、目の前にいる。


「え——」

 剣が振り抜かれる。

 金属が悲鳴を上げて砕ける。

 筒が真っ二つになり、砂の上に落ちた。

 次の瞬間、男は地面に叩き伏せられていた。


 喉元に切っ先。

「……遺物は大事に使え」

 女が言う。

 男は声も出せない。

 女は剣を引いた。


 背を向け、そのまま歩き出す。

 振り返らない。

 ただ一度だけ、空を見る。

 何かを思い出そうとして——やめたような顔だった。


「……」

 言葉は出ない。

 そもそも、思い出せるものが少なすぎる。

 親も、どこで生まれたのかも

 行き先も。

 理由も。


 だが——

 どこかに、行かなくてはならない。

 その確信だけがある。

 風が、また吹いた。


 遠くに、町の影が見える。

 高い壁。

 門。

 人の気配。

 女は目を細めた。

「……人が、いる」

 呟きは小さかった。

 それがどういう意味を持つのか、自分でも分からないまま。

 ただ、足は自然とそちらへ向かっていた。


はじめての投稿です。このあとしばらく頑張って出していきます。

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