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本能寺炎上事件簿 ~多恵子は風の中~  作者: へるきち


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01.本能寺炎上

 もう3年になる。


 私が、この事件の調査を始めてから3年も経つのだ。

 気が付けば、私がこの仕事を続けられるのは後3日しかない。

 何故、こんなにも私は、この事件に拘り続けているのか?

 私自身が、それを説明する言葉を持たない。

 上からは、もう手を引くよう散々勧告を受けているのだが。

 去り行く老害のわがままとして見逃して欲しい。


 事件は、とある大企業で起き続けている。

 すべての事件は、会議室で起きているのだ。

 私達調査班は、この一連の事件を「会議室事件」と呼んでいる。

 現場は常に会議室なんだよ。

 冗談で言っているんじゃないんだ。

 これが落語かコントなら、「青島かい!」で済むんだがな。

 現実は、いつだって冷酷で非情だ。


 事件は一向に解決せぬまま

 糸口すら、掴ませぬまま。

 真実は、壁の向こうでひらひらと踊り、私を笑い続けている。

 とうとう起こってはならぬ事件が起きてしまった。

 ついに、社長である信長が、犠牲者になったのだ。

 もっと早く、強引にでも捜査を進めておけば。

 やらなかった事を悔いても意味がないが……。

 既に起きた事は覆せないのは、特殊相対性理論が証明しているのだから。


「どうかしましたか?」

「いや、なんでもない。現場である会議室へ行こうか」

「そろそろ定時ですけど?」

「ああ、そうだった。じゃあ、明日にしようか」


 我々には、まだ明日がある。

 犠牲者には、無いっていうのにな。


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