サキュバスさんグルメ!:ピロートーク
「しょれ〜めすぶたしゃんいくの〜」
「ぷぎぃぃぃぃぃ!!」
マリーさんの雌豚の名演技とアカリ嬢の楽しそうな声、トーヤのため息が響く食堂。
そして、店に来るお客さんの楽しそうな声。
「だっはははは! お嬢ちゃん楽しそうだなぁ!」
「うん! たのしいの!」
マリーさんは四つん這いで店内を駆け回る。そしてそれを見て時に笑い、時に助平な顔を見せる漁師や冒険者の荒くれども。
「こんなはずじゃなかったんだけど……」
彼らが食べているのは、トーヤの新作料理だ。
材料は秘密だが、当てたらタダにするとマリーさんが宣言してから結構な人数がやって来るようになった。未だに当てられたことはなく、材料を知っているアーノルドやゼペッド爺が渋い顔を見せるぐらいか。
先の作戦もそうだけど、マリーさん目当てのお客さんも多い。まぁマリーさんは接客半分アカリ嬢のお世話半分だというのに、よくも来るものだと思う。
「マリーさん、これ上がった。3番のテーブルにお願い」
「あ、はーいはい。アカリちゃん、お仕事だからちょっと待っててね」
「はーいなの!」
元気に返事をして私の背中から降りるアカリ嬢に手を振り、マリーさんは給仕として料理を運ぶ。
以前とは比べるまでもなく、新品のテーブルはピカピカでちゃんと料理屋らしくなっている。まぁ、マリーさんマネーでどうにかしたんだけど。
出世払いと料理払いでトーヤに押し付けたのだ。アカリ嬢のためにも必要だぞってね。
「アカリの世話をしてくれるのはいいんだけどさ。あんまり変な真似はしないでくれよ。アカリの教育に悪い……」
「むぅ、サキュバス教育の何が悪いかわかりませんね」
「全部だよ」
解せぬ。
そんな感じで日常が過ぎていく。サキュバスさんのグルメな日常は、今日も日々過ぎていく。