とりあえずおやすみなさい。
「そして、ほくは、今ベッドの上にいる、と」
ここは寺院の一室。ぼくがいつも暮らしているベッドの上。身体中がいたい。ぎしぎしいっている。
ぼくはブラックファングとして、ダンジョンコアと生成途中のドラゴンを撃破した。更に、ダンジョンが崩壊し始めたので、中にいた3パーティーを回収して外に出た。そして、普通の姿に戻り、素知らぬ顔をした。と、いうわけだ。
そしてぼくはブラックファングの代償に苦しんでいる。
“今回は、ブラックファングになっていた時間長かったからね”
そう、ブラックファングの代償とは、全身を貫く痛み、筋肉痛である。この痛みは、ブラックファングに変身した時間とうけたダメージに比例する。最初に変身した時は身体中が痛く、動く事さえできなかった。今は身体がなれてきたので、まだ動けるが。
“まだ許容範囲だから安心してね。だけど、ブラックファングは多用できないから、自分のスキルも磨いてね”
そう、ブラックファングは本来人狼。獣としての側面がある。
そして戦いに集中し獣としての本能に呑まれた時、僕は理性を失い、最悪の魔獣が一匹現れるという訳だ。
まあ、ブラックファングに変身するにはアマテラス神の許可が要るし、使うスペックはマジックサーチとゴッドスリープ。直接戦闘しない限り呑まれる事はない。勿論、ブラックファングの能力設定をした時に決めた事だ。
“それに、マジックサーチも、ゴッドスリープも、パワーオブオールも、本能で戦う生き物には使いづらいスペックだからね。魔獣化しても安心”
「まあ、ね」
その上、ぼくの職業は僧兵。精神的修行は専門だ。安全してブラックファングを使える。
“でも、あんなダンジョンはじめてみた。何らかの意図を感じる”
「神さま同士の戦いですか?」
やだよ、そんな面倒くさい事。
“……一応、神さまだから、そんな馬鹿な事はしないと思う。けど。巻き込まれたらお願いね”
……ひどい……
“まあ、ゆっくりお休み。休暇が取れだのでしょう?”
そう、今日と明日は休み。ダンジョン崩壊に巻き込まれた連中はみな事情聴取を受けた。そして情報料として、いくばくかの小銭をもらい、酒場に行っているはずだ。
あと、寺院からはダンジョン崩壊に巻き込まれたということで、大事をとって休養しろ、と言われている。まあ、渡りに船、寝かせてもらおう。もっとも明日からはまた、同じ1日が始まるのだ。
僧兵としての1日が。
“カッコイいね”
アマテラス神が笑いながら言った。
「うるさい」
……僕は毛布をかぶり、ねる。アマテラスさん、ひとを笑いものにして。まあ、感謝しているけどね。
やがて、僕は身体中の痛みを感じながら、快いまどろみに意識をゆだねたのだった。
とりあえず終了。また続きを描くかも。