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LV.7 最低最悪

藤井カナトが学内の荒くれチーム『イエロースパーク』に入隊した1週間後、チームに入った新人の戦闘力をテストする模擬戦闘が行われた。


「ぎいいやああああああ!!!」


そうやって、悲鳴を上げながら、テストを受けている藤井カナトは全力で逃げていた。


レベル3の魔物、ラージブル1匹から。



△△△



俺はボロボロになって、フロアに戻った。


「カナト、散々だったみたいだな、ヒビキさん聞いたぜ」


汚いフロアでも、少しは整頓されている机から声が聞こえた。


飽田(あきた)ヨウジ。2年生。黒髪のストレートで、メガネをかけており、その見た目通り、頭のキレるやつでイエロースパークの頭脳らしい。

整った顔をしていて、機転が利くため、女子からも人気があるらしい。死ね。


だが、こいつは。


「レベル1の雑魚のクセして戦い方がヘタクソ、基本的にバカなんだよ。スライムより弱えんだからちゃんと頭使え、バカ。お前なんかよりその辺の羽虫の方が役に立つな」


非常に口が悪い。


「うるせえ! あんた先輩だろ! 入って間もない後輩に慈悲もねえのかよ!」


「ねえよ、バーカ」


俺もこいつが大嫌いだから、呼び捨てにしてタメ口を遣う。



△△△



飽田が、同じく2年の岩城(いわしろ)ゴウシ先輩と任務に帰って来た日、俺とこいつは初めて顔を合わせた。


そして、こいつは頭の上の数字を見て、爆笑した。


「っはははは!! お前、マジかよ!!」


フロア中に、いや、他のチームに聞こえるくらい大きな笑い声で俺を罵った。


「ヒビキさん、どこで拾ったんすか、こんなスライムの擬人化みたいなやつ!! ネタでしょ!! はははは!!」


呼吸困難で死にそうなくらいに笑われた。涙が出るほど大笑いする人間を初めて見た。


「…こりゃあ、運命だぜ」と妙に感慨ありげな顔で皮肉を言われた。



今も、模擬戦闘でボロボロの後輩を励ますどころか、プライドまでもボロボロにする勢いで口撃する。


「その辺にしておけ、ヨウジ」


ゴウシさんが彼を諌める。大柄な体躯に角刈り。濃い顔にヒビキさんのような迫力を感じる人だけど、このチームで唯一まともな先輩に見える。


だが…。


「頭が悪くてもレベルが弱くても、己の筋肉を鍛えれば問題なーし!!! 腕立て2千かーい!! おいっちにーさんしー!!!」


ど天然の筋肉バカだった。


「ほら!! カナトもやるぞー!!」


「ははは! 相変わらず面白えなゴウシ! ほら、誘われてんぞ、スライム人間」


「誰がスライム人間だよ! お前は絶対ブッ飛ばす!!」


俺は直剣を抜いて飽田に襲いかかる。それを回避するレベル25の飽田。ただでさえ汚い部屋が避けられた直剣に荒らされていく。


ゴウシさんも、アクロバットの練習だ! とかなんとか言いながら暴れ回る。


こんなやり取りを、こいつと出会ってから今までずっと、やっている。



「おめえら、なに部屋散らかしてんの?」


ドアを開けて、出て来たのはヒビキさんだった。


いつも余裕綽々な飽田も、さすがにヒビキさんには頭が上がらない。やっべー、とバツが悪そうに苦笑している。


俺も、珍しくチビりそうだった。


今にも殺されるんじゃないかと、恐怖を煽るような剣幕で俺を見る。


ていうか、なんで俺のことしかみないんだよおお!!!


「カナト」


「な、なんすかぁ!?」


と、珍しく情けない声が出てしまった。隣で笑う飽田。マジでブン殴りてえこいつ。


「模擬戦闘、お疲れさん」


「はい」


暴れたのを咎められると思ったので、ひとまずホッとする。

ヒビキさんが続けた。


「さっきの様子だと、お前は1人じゃ戦えない。急所を狙ったり攻撃を回避するセンスはちょっとはあるみたいだが、戦略的な戦い方はまるでダメだ。レベル3の魔物もろくに倒せない。これじゃあ、この先の任務には出られないだろうな」


先刻の戦闘についての評価で、期待されてないことを知った。褒められたもんじゃないと、最初から分かっていたけど、実際に言われると予想以上にへこんでしまう。「はい…」としか言えなかった。


「だから…」


ヒビキさんが俺から目線を外す。そして。


「飽田!」


はい? と、飽田がキョトンとした顔で自分の顔に右手の人差し指を向けている。


「役所から任務が来た。A地区東部、魔物の討伐だ。」


にやりと笑うヒビキさん。


と同時に、とんでもない発言を言い放った。


「こいつと組んでみろ」


あまりにも想定外な発言に、俺も飽田も、しばらくの間、ポカンと口を開いたままだった。



最低最悪のコンビが、生まれようとしていた。


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