LvMax 後編
「月玉様、ありがとうございました。次に、新・司祭玉並びに、新・陽月教最高司祭の天王寺照姫様より、ご挨拶がございます」
形式ばった口上で、1000人以上のざわめきが一瞬にして鎮まる。
「次は『太陽』か」
「タナト討伐世代に『月』と『太陽』がいるなんて、マジの奇跡だよな〜」
「しかも20歳にしてこの国のトップ。イージス不在以外は非の打ち所がないな!」
そう。
彼らの言うとおり、イージスの後継は未だに空席で、実質的に私とルナを含む国玉たちが国の中心を担っている。
私が司祭玉になるなんて。それも自ら進んで。
なんだか笑えてくる。6年前まではあれだけ『私』の在り方にこだわってたくせに。
でも、アイドルだろうとレッドフレームだろうと、私の根幹には、周りを笑顔にしたいという願望だけで、今もずっと変わらない。
この気持ちに気づけたのは間違いなく。
「あのバカのおかげね」
この私の彼氏のくせに、まだ剣士隊で小隊長にも出世できてない男を思い浮かべると、また笑えてくる。
本当になんなんだろう、あいつ。
あいつを見てると、あいつと一緒にいると、不思議と力が湧いてくる。何かを頑張りたいと思わせられる。
「ご紹介に預かりました」
みんなを見る。
できるだけ多くのみんなと目を合わせる。
『私』に目を輝かせてくれる人たち。
私に感心する人たち。
『太陽』に不安を抱く人たち。
私たちに不満を抱く人たち。
「この度、司祭玉並びに陽月教最高司祭に就任いたしました、『太陽』・天王寺照姫と申します。必ずこの国を、みんなを明るく照らして見せるので、どうかよろしくお願いします!」
3月の空の、雲から抜け出した光。
私みたいな太陽が、図々しく照り輝いた。
△△△
О地区の小さな孤児院。
木漏れ日が差し込む中。
ばぁばが生きていた日々が蘇る。
たぶんここが、かつてレイナの両親が働いていた場所だからではない。
悲しい思い出は、突然ふと蘇るものなのだ。そこには、何のきっかけも何の前触れもない。
こんな思いをするくらいなら、いっそのこと、ばぁばと一緒にあの世に行きたかった。
そしたら、顔の知らないママに会えたかな。
あの人のせいだ。
顔も知らない。話したこともない、知らないおじさん。『光』を扱えること以外、何にも分かんないおじさん。
死にかけてる自分を差し置いて、初対面のレイナを『光』で治癒した変な人。そんな変な人のせいで…おかげで、レイナは生きている。朽ちるはずだった肉体は大人になっている。
「おい菱田! 真面目に掃除しろよ!」
「はいはい」
見るからに神経質そうな先輩はめんどくさいな。無駄に美形なのがもったいない。もう少し落ち着いてたらレイナの男になれたのに。
でもまあ。
「また虫ついてますよ? しかもさっきよりも結構大きめのやつ」
「ひゃっ!! ど、どこだよ!?」
見ていて飽きない人だよね。
クソ雑魚で、思ってることが顔に出やすくて。
「嘘ですよん。ほんと、林野先輩って臆病ですよね」
「はいはい、僕がビビリで悪かったよ。ほら、子供達が足を引っ掛けたら悪いから、早くやってくれ」
何より、
「将来有望な才能が潰れたらどうするんだよ。あの世であのだらしないおっさんに笑われるのが一番ムカつくからな」
自分のプライドを誰かのために我慢できるところが、ちょっぴり気に入ってたりもする。
あの、はた迷惑な『Lv1』クソ雑魚お兄さんと同じ、何か大きな経験を通した心の強さ。
「あーはいはい」
「だから僕の話をちゃんと聞け! 先輩だぞ! …お前たち、笑うな!!」
「またキノミがレイナちゃんにいじめられてる〜」
「おいおいキノミ! 男を見せろー!」
「今日こそ告白するチャンスだぞー!」
「なめやがってガキども…」
小さな子たちの注目を集め、飽きれながらも頭を掻く男の目が泳ぐ。
まつ毛が多く丸い目が、レイナに目を合わせたり、そらしたりを繰り返した。
必殺のグロース—最弱からの急成長―
―完―
これにて、『必殺のグロース—最弱からの急成長―』、完結です。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
今後につきましては、本作のスピンオフや、別作品(たぶん短編)をのんびり書いていこうかなと思ってます。
本作のシステムは個人的に好きだし書きやすかったので、第二部もいつか投稿出来たらいいなと思ってます。
感想や意見なども待ってます。
「このキャラのスピンオフ見せてくれ!」って意見があったら、優先的に書きます。
あらためて、ありがとうございました!
ヒラメキカガヤ




