開会式(聞いてない)
さて開会式、と来たところで問題を思い出した。
戦艦である。
今回の団体戦、戦艦を拠点として敵の全滅か戦艦の撃沈が勝利条件である。
つまり俺達も戦艦を守らなければいけないのだが、そこに備え付けられたタスク。
これがツクヨミ改かスサノオ専用の装備である事を失念していた。
つまり専用機を持ってきた4人には扱えず、ベンチウォーマーの選手たちはタスクを使った訓練をしていない。
あれなぁ、優れた装備なんだけどスピーダー並みの速度を平然と超えてくるから必然的に25Gくらい通常飛行でかかってくるんだよ。
急旋回したらもっと強くなる。
こういう拡張性も今後の課題とするべきなんだが……特に鈍重そうな良平の機体にとって速度はあれば嬉しい程度かもしれないが戦術の幅は大きく広がる。
あいつの機体はなんと三本足、ホバークラフトによる移動で機体重量を無視して動けるから見た目よりは機敏だ。
だけど本当にそれで終わり、変形機構も戦闘機形態ではなく足の収納と装備の展開だけという滅茶苦茶割り切った性能をしている。
つまりどうあがいても俺やクリスと足並み揃えるのは無理だという事。
これはもう戦艦のすぐそばで迎撃と狙撃をしてもらうしかないだろう。
そしてクリスだが、これは別の方向でとんがった機体と言える。
機体名ヘブンズソードと言うらしいが、なんと実体ビーム問わず合計23本のサーベルを装備している。
射撃武器はせいぜい牽制用の頭部バルカンと、申し訳程度に持っている射程の短いビームピストル2丁。
完全に近距離戦闘に特化しており、更には変形機構をオミットして余ったスペースにワイヤーアンカーなどの搦め手も乗せている状態だ。
はっきり言うが……馬鹿の考えた近接戦機体というべきだろうか。
馬鹿と言えば東雲のドローンキャリアーだろう。
両手両足背中全てにドローンを装着しており、合計108機のドローンを射出して操るというもの。
……こいつも戦艦の護衛だな。
一応良平の機体よりはまともで、近接戦もできる仕様になっている。
なっているが本人がヘボなのでそっちには期待していない。
……いや、地獄の特訓でも平均程度までしか伸ばす事が出来なかったんだ。
平均で言うなら右京、あいつは俺の予想を超えてかなり近接戦が上手くなった。
それこそ軍人の平均に届くレベルじゃないかな。
元々当て勘はいい女だったのもあるし、空間把握能力も東雲ほどではないが高い。
というより方向性の違いだな。
東雲は広範囲の空間把握が得意な一方で、右京は絞った範囲……例えば前方だけとか超近距離だけとかの空間把握能力に秀でている。
その分射撃はまだまだ学生レベルを過ぎない所までしか伸びなかったのだが、それは良平がいるからどうにでもなるだろう。
予定としては俺とクリス、そんで右京で敵陣に突撃する戦法が一番かね。
露払いも兼ねて俺がビームぶっ放しながら突撃……いや、面白い方法を見つけたけど、これは奥の手としておこう。
ともかく俺が穴をあけて、クリスが敵をぶった切っている間に右京が戦艦に突撃していく戦法。
多分これで形にはなるだろう。
散開されたとしてその時は良平の狙撃で端から削ってもらい、反対側にクリスを送り付けて各個撃破でいい。
右京はまだ一人で動かすには心配な点が多いからな……。
「異常で開会式を終了します。この後各自機体をマシーンにセットしてください」
おっと、考え事してたら開会式終わってた。
「で、何を考えてたの幸助」
「いや、戦術をどうしたもんかと思ってな。お前ら専用機で来たからタスクを使えないだろ。だから基本的にギアとして戦い、戦艦に取り付けたまま防衛をしてもらう予定で、その護衛に良平とそこのドローン娘東雲を配置。俺が露払いしながらビームで敵陣に穴をあけてクリスと変形娘右京が相手をなます切りにしながら戦艦を潰すっていう方向性で考えてた」
「ふぅん、悪くない作戦だけど……あんたの事だからもっとえげつない手段とか思いついたんじゃないの?」
「実用性があるかはわからんが……こればっかりは良平の機体をもう少し調べるか、教えてもらわないとどうにもならねえな。東雲の機体にも同じことが言えるが、あっちは望み薄だ」
「良平と彼女の機体ね……あぁ、少し見えてきた」
さすがクリス、戦闘に関する勘というか嗅覚はおそるべしだ。
今回問題になるのは機体を固定できるような武装が足についているかどうかだ。
アンカーにせよクローにせよそういうのがついていれば、タスクが傷つくのは多少目を瞑るとして俺が操縦して良平や東雲をのせて敵陣に突撃できるかという問題。
そもそものタスクが並のギアを5機くらい速度落とさず、まとめて運べる能力を持っているからな。
そんな機体の上で連携取りながらドローン専用機や、狙撃特化が都度狙撃していく。
近づこうとしたら俺がタスクで迎撃するし、そもそも直進してこよう物ならいい的になるだけだ。
考えた作戦はこんなもんだが……さてさて、上手くいくかどうかは本当にあいつらの機体次第なんだよな。
「まぁ想像通りだと言っておくよ。で、上手くいくと思うか?」
「正直やられたらブチギレるくらい面倒くさい戦法ね」
「そりゃお褒めに預かりなによりだ」
「褒めて……いるのかしら、この場合」
「戦闘に関してハズレ無しのクリスがそこまで言うんだ。並の学生なら対処不可能だろ?」
「……まぁ、褒めていると受け取っておくわ」
うむ、どっちがどっちを褒めているのかわからなくなった。
ただ一つ言える事は、この話をニコニコした表情で聞いている良平の感情が読めんくて怖いという事くらいだろう。




