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そして当日、トイボックスの装備を全部外してビームライフルとビームサーベル、あと一般的なバックパックのみのスサノオをシミュレーターにインストールした。
だったらスサノオのデータ使えばいいじゃんと思われそうだが、トイボックスは俺専用機って扱いになってるから細々としたところが違ってるんだよな。
具体的に言うと可動域と潤滑性、あとシステム面も少し俺好みにカスタマイズしている。
普段はメカニック科や軍属メカニックが思いついたままに作った装備のお試しをしているからフルスペックを発揮する事はほとんどない。
せいぜい俺が本気で動かしても10分は耐えられる頑強製がある程度だ。
なお試作機を使いまくるし、その機密性のためにデータとったらハードごと引っこ抜いて軍に保管させている事と、合わせてメカニックたちのバカ騒ぎの結果黒く塗ってブラックボックスというあだ名をつけたことから昼間は凄く目立つ機体になってしまった。
マージで真っ黒、せめてお洒落にと銀のライン入れているのが無駄にかっこいい。
そんなトイボックスのコックピットを模したシミュレーターの座席を調節していると通信が入った。
『約束通り、私達が勝ったら関わらないで』
「了解、ただし俺が勝ったら交流祭に出てもらう。他の参加者も異論はないな」
異口同音、全員から同意する旨の返事が返ってくる。
「そんじゃ、始めますか」
シミュレートスタート、テンカウントで互いにランダムな場所に配置される。
レーダーを見る限り近場じゃないが……かくれんぼをするわけじゃない、ドローン使いがいる以上すぐに補足されるだろう。
ステージは森林エリア、視界不良で地上での戦闘は不利、右京の得意で東雲が包囲しやすい空での戦闘が基本になって来るな。
だが大した問題はない。
カウント0と同時に変形して空に飛び出す。
レーダーにはまだ映っていないが左舷に見えた光を追う。
あれは間違いなくギアが飛び出した時の噴射、そんなところに配置されてたか。
「っしゃ、先手必勝!」
飛びあがったギアらしき豆粒のような影、その進路上と飛び出してきた箇所目がけて射撃。
ビーム兵器は大気圏内だと威力減衰が発生するが、流石に数km程度ならギアを落とせる威力を保つ。
そう思った瞬間だった。
「うおっ!」
背後からの射撃、ただし威力が低く、その分射出の際に絞られて突破力を上げたそれは間違いなくドローンによるもの。
回避すればその先にはビームが置かれていて、咄嗟にサーベルで切り払う。
包囲するの早いな……よく見れば気がなぎ倒されながらこっちに近づいてきている。
もしかして森を切り裂きながら移動しているのか?
確かにドローンキャリアーからすれば空が見える位置ってのは重要だが……そこまでして自分のフィールドにしたいか?
逆に言えば空からの射撃通し放題って事に……あぁなるほど。
「作戦勝ちというか、そのためのメンバー構成にしてあるのか」
重装甲の盾持ち機体がずらりと一機のギアを囲んで守っているのがカメラで拡大される。
ありゃ安々とは抜けねえな。
「で、そっちに気を取られるとこっちか!」
高速で脇を抜けていくように飛び去る一機のギア、戦闘機形態だ。
その羽がブレードとして機能しており、いつもみたいに紙一重で避けるとざっくり切り裂かれる。
おいおい、確かにあの手の武装も一般的ではないが流通している。
問題は安全面から使う奴がほとんどいないということくらいだ。
ちなみに俺は使う側だけど、少しでもルート間違えると自爆する事になるし、相手が進路かえたら最悪正面衝突からの特効になりかねない。
とりあえず積んでおけ感覚でのせてるけど、普通は絶対に使わない類の装備だ。
デッドウェイトになるしな。
「右京か!」
『うふふ、丹念に切り裂いてあげるわぁ』
……どちらさま?
いや、聞こえる音声は右京のそれだし、シミュレーターと言う事もあって顔も映っている。
紛れもなく本人なんだが、対面した時のおどおどした様子じゃなく、妖艶なお姉さんと言った喋り方と雰囲気だ。
「ってそれどころじゃねえ!」
右京の攻撃を避けながら、ついでのようにばらまいていくミサイルを躱して、ドローンに包囲されつつある現状を打破すべく動く。
と、こちらが移動する先を狙って……いや狙ってねえな。
俺が今いる位置を中心に適当に射撃してやがる。
普通は当たらねえけど下手な回避や逃走を選ぶとうっかり当たりそうになる。
あの取り巻きを全部東雲につけたのはそういう事か。
盾として使いつつ、その本質は移動砲台……厄介な作戦を立ててくれたもんだ。
「だがな!」
穴はある。
奴らの射撃が俺そのものの逃げ道を塞いでいるなら、その銃口を見ればどこに弾が流れるかはすぐわかる。
そして右京の追撃がしにくい方向、つまりは……。
「お前から落ちろ!」
東雲に向かって突撃しながら両手に持ったサーベルでビームの嵐を切り開く。
届く、そう思った時背筋に嫌な感覚が走った。
咄嗟に身を捻れば背後から東雲に当たると思わせる射撃、ドローンによるもの。
自爆覚悟かと思いきや一機のギアが盾で受け止めた。
……下手したら自滅するかもしれない攻撃すら躊躇なく選ぶか、えげつねえ。
「おいおい、不思議ちゃんのやる攻撃じゃねえだろ」
「きゃははっ! ざーんねーん、当たらなかったんだぁ。当たったらざーこって言ってあげたのにー」
……お前もかよ!
この仲良しコンビ、操縦桿握ったら正確変わるタイプか!
それもおどおど女子が妖艶なお姉さんに、無口で不思議ちゃんなロリがメスガキにとかどんな冗談だ!
「お前は俺を怒らせた」
メスガキ、一部界隈でわからせがいのある存在として人気を博しているキャラ造形の事を指す。
だがな、俺は煽り耐性低いんだよ。
つまり何が言いたいかと言うとメスガキは俺にとって特大の地雷と言う事だ。
「殺す」
口から洩れたのは怨嗟を超えた狂気の言葉、今なら目からハイライト消して無我の境地に辿り着き水の一滴をとらえ機体を金色に光らせる事もできそうだ。
「まずは取り巻きぃ!」
右京の攻撃を無視する事にした。
正しくはこの局面であいつは強気な攻撃ができない。
俺の進路上には東雲と他メンバーがいるからだ。
下手な射撃をしても取り巻きが守るかもしれないが、それを邪魔している俺がいる以上突撃以外の戦法は取れない。
だがそれを実行しようとするなら機体がぶつからない場所、つまりこいつらが作ってきた道を進路にする必要がある。
つまりどこからどう狙うかはある程度絞れるし、タイミングも背面カメラと相手の動きから見て取れる。
だから……。
「大人しくおねロリでもしてやがれ!」
「あぁん!」
突撃してきた右京をバク中で蹴り落とす。
突然進路を変えたことに取り巻きが困惑を見せたのを見逃さず、亜衣も変わらずビームの嵐の中を切り進んで着地する。
同時にサーベルの届く範囲にいた奴を両断、これで2機撃墜。
地面とキスする前にギアに変形して逆噴射した右京はどうにか無事着地できたようだが、これ以上飛ばせはしない。
ドローンから降り注ぐ弾丸の雨を両断した機体からもぎ取った盾で防ぎながら、近くにいた奴を担ぎ上げて投げつける。
「きゃあ! 乱暴ねぇ」
「うっせぇ! そこで潰れてろ!」
さすがにこの距離、サーベルに持ち替えた奴らが突撃してくるがカモだ。
盾を背負うように掲げながら身をかがめて足元から救い上げる。
そしてそのまま投げ飛ばし、時に躱してショルダータックル。
その全てが右京の機体に倒れ込むように誘導してやった。
「この雑魚! もっとちゃんと動きなさいよ! ざーこざーこ!」
「うるせえぞ6位! てめえは一番役に立ってねえだろうが!」
「えー、打って本気出すの疲れるじゃーん。雑魚にはこの程度でじゅうぶーん」
「見えてんだよ!」
木に隠したドローンによる飽和射撃、ご丁寧に上空にも設置しており回避が困難なオールレンジ攻撃だ。
サーベルで切り倒せる程度の樹木なら遮蔽物にはなりえない。
だが……。
「てめえは無防備&安全だろうが!」
東雲の懐、そこだけは安全地帯になっている。
「やーい、引っかかった引っかかった」
「だから見えてるって言っただろ!」
東雲の機体を押し倒したところで四方八方から射撃を受ける。
その全てが精密で、トイボックスには当たっても東雲の機体には当たらない角度だ。
それが致命的、機体の姿勢をぴったり重ねてやれば上空からの射撃には対処できる。
じゃあ正面や背後からの低空射撃はどうかと言えば、これまた手足の角度を調整しながら飛び上がる事で全部躱し切れる。
そうしないと上空からの射撃が当たるから角度かえるために動かしたんだが、これ案外いいポジションに収まったな。
「おら! わからせてやるよ!」
ビームライフルを突きつければライフルを狙ったドローンの射撃、残念それを待ってました。
撃ち抜かれたライフルを未だ団子状態で転がってた右京達に投げつけて爆発するのを見守る。
当たり所にもよるが一撃でギアを沈められるだけのエネルギーを乱射できるライフルだ、それが行き場を無くして爆散すればギアもタダじゃすまない。
少なくとも持っていたら腕を持っていかれる爆発力があるそれが、団子の中に放り込まれて他のビームサーベルやライフルを巻き込んで誘爆していく。
一瞬の隙、ビームサーベルを構える時間すら惜しい。
コックピット目がけてフライングニーキック!
「そん……」
「どっちが雑魚か思い知ったか……ふぅ、わからせ完了!」
今夜はいい夢見られそうだ!




