任務
「悪くないな」
あれからタスクやファングと略称をつけた戦艦のテストと、実地試験と言う事で簡単な任務をいくつかこなした。
今はその最後の任務を終えたところである。
足元に転がるインベーダー、今回は中規模のブルーバックスという鳥のような群れを排除する任務だった。
数が多い、速度が速い、ただ攻撃力が低いというインベーダーだが軽装甲機体だと擦り傷が増えて致命的なダメージを受けるし、重装甲だと追いつけないという微妙に厄介な連中だったのだが、クリスは近づいてくる奴らを片っ端から切り伏せていたし、良平は的確な狙撃でその全てを撃ち落としていた。
凜もドローンを上手く使い索敵と周辺警戒だけでなく、ブルーバックスの移動阻害まで行って見せた。
流石にタスクの速度を生かす場面はなく、全員がある程度足を止めての戦闘だったが悪くない形に収まった。
もちろんファングも活躍して、初撃のタスクとドッキングした状態での飽和攻撃と分離後の的確な処理が功を奏して無傷の帰還となる。
俺のトイボックスもなかなか面白い機能がてんこ盛りだったため、全部試すのに複数の任務でスタイルを切り替えて戦う事になった。
この全てがタスクとバックパックに集約されていくと考えると今後が楽しみに思えてくる。
「よーし、引き上げるぞ」
「歯応えの無い相手だったわねぇ」
「確かに、早いけど直線的な動きだったものね。それに凛ちゃんの妨害が上手かったから」
「予測はコンピューターがやってくれたので……」
確かに今回は危なげなく対処できた。
これなら大規模のブルーバックスの群が出てきたとしても対処は可能だろう。
ただ問題があるとすればこの空気だ。
「おいおい、この程度最下級任務だぞ。この程度こなしたからっていい気になるなよ。中級任務になったら今回の非じゃない、それこそベヒモスとワイバーンに混ざってこいつらも出てくるからな」
「うげ……それは面倒かも」
クリスはいつも素直な答えをくれるから助かる。
そう、物凄く面倒くさいのだ。
硬いワイバーンや、一撃が重たいしワイバーンよりも硬くて歩くだけで地震を起こすようなベヒモス、そこにスピードのブルーバックスとなると正面突破は無茶だ。
方法としては良平とファングでブルーバックスかワイバーンを殲滅するまで露払いをしながら、次に残っている方を殲滅。
最後にベヒモスと言う順番になるだろう。
あれは言うなれば戦車、随伴歩兵がいなければどうにでも料理できる相手だからな。
「まぁそうなったら良平に頼むが」
「だよねぇ……責任重大だなぁ」
「なに言ってやがる狙撃手。お前はいつも責任重大だぞ。というかこの面子で責任の軽い奴はいない」
クリスは前衛としてこれ以上なく優秀だ。
囮としてもアタッカーとしても動けるため、前に出しておけば大きな問題は起こらない。
いわゆる回避盾もしてくれている。
おかげで俺は遊撃に専念できるが、必要とあらばその立ち位置を入れ替える事だってできなくはない。
良平は言うまでもなく貴重な長距離攻撃可能な機体だ。
その精密な狙撃、必要なら大火力砲による殲滅と相手を削る事に関しては一級品と言っていい。
最後に凜は観測手であり、オペレーターだ。
常に敵味方の位置を把握しながら適切な指示を出す。
言うは易しというが、やってみると滅茶苦茶難しい。
だというのにここ最近は俺が指示を出すまでもなく、凜が先んじて次の行動予想を立てて指揮を執ってくれる。
ファングで艦長の代わりをやらされているおやっさんは不機嫌だが、その指示も的確。
格納庫に連れて行けと五月蠅いのが難点だが、あれで佐官なだけあると思わせる勤勉さを持って全体の指揮官を担ってくれている。
夜な夜な専門書を読みながら頭を抱えてるのを見ているだけなのが心苦しいくらいだ。
「で、そろそろ交流祭の準備だけどどうするの。予備の機体はどっちを選ぶのかしら」
「そうだな、ツクヨミ改はパワーがありすぎて相手を殺しかねないからそっちを予備にしておく。トイボックスは面白いシステムが多いし、意表を突くにせよ正面から挑むにせよ対人戦向きな性能をしているからな」
戦艦のブラッシュアップに、トイボックスの性能向上、全部終わったので後は待つばかりとなった。
実際の所ツクヨミ改でごり押しと言う戦法も十分に通用するのだが、トイボックスは初見殺しが多い。
対インベーダーでも通用する火力が意表を突いてくる、全てが一撃必殺の十特ナイフみたいなもんだ。
いや、十特どころか百特だな。
組み合わせ次第じゃもっと伸びる。
ただ、エネルギーを馬鹿食いするから使いどころを選ぶ必要があるけどな。
稼働時間の短さだけが問題なんだよ。
タスクと繋げればそれも解消されるんだけど、それもオーバーキルになるから場面を選ぶ必要が出てくる。
要するに短期決戦専用機体ってところだな。
今回の交流祭は個人部門とチーム武門があって、俺達は両方に参加する事になっている。
クリスや良平クラスが出てきたら流石にエネルギーを節約しないといけないけど、こればっかりはリアクターの改良を待つしかないんだよなぁ……。
今はダークマターを使った炉と聞いてたけど、次世代用のブラックホールエンジンとか、反物質炉とかそういうのが台頭してきてくれたらもうちょい使い勝手もよくなるだろう。
ともあれ、俺達は準備をしておこう。
ギアの戦闘に慣れるためにも対人戦を中心に。




