戦艦完成
急ピッチで製造を進めても、訓練はそうもいかない。
それが現実なのだが、慣れるのは案外早いものでクリスト良平は早々にそれなりの動きができるようになってきた。
一方で凜はまだタスクの挙動に四苦八苦しているが、装備の扱いだけならそれなりの物になっている。
索敵用ドローンの扱いなんかは俺達の中で一番うまい。
いや、俺とクリスは攻撃用のファンネルとかビッドって言われるタイプのドローンはガンガン使えるんだよ。
だけど索敵用をこっそりしのばせたりとかそういうのは苦手分野なんだ。
良平はそつなくこなすんだけど、それでも総合的には凜の方が広範囲をカバーできる。
ちなみに良平は攻撃用の方も使えるけど、扱い方は敵を包囲して射撃ではなく自分の周囲に展開して固定砲台にするという使い方が多い。
曰く、自分に向いているのは砲台だからとのこと。
ならもういっそ有線でいいだろと良平用タスクの仕様変更が即効で入った。
凜の方はタスクよりも機体の方と言う事で脳波コントロール装置の感度を上げたりする程度に収まった。
一番仕様変更入れたのは多分クリスの機体。
まずスサノオからしてクリスのは近接特化だったので、持っていた大型実態剣をモチーフにタスクにも金属製の爪を取り付けて、ビームサーベルになるはずだった部位はギラギラとした爪に換装してから別途射撃用のライフルを取り付けた。
ライフルと言っても戦艦の主砲に匹敵する火力だけどな。
更にブースター以外の姿勢制御用スラスターの数を増やして細かな動きを可能にしつつ、いざという時は切り離して脳はコントロールでタスクを動かせるようにした。
この切り離し機能は全機体に取り付けて、最悪の場合捨て駒にするという案が上がりメカニックの頭を抱えさせることになったが……おやっさん曰く、大した改造じゃないとのこと。
結果的に早々に仕上がったタスクと戦艦に使い古しのリアクターをのせて試運転させ、システム面の問題を洗い出す事になった。
その際に、まぁ素人仕事ゆえかトラブルが多くてな……。
ともあれ色々あったけど、どうにかこうにか動かせるものが出来上がるまでにひと月かかったわけだ。
そして残り半月でブラッシュアップ、という所で予算申請を出してリアクターを搬入してもらった。
超厳重な警備付きで搬送されてきたリアクターにみんな目を輝かせつつ、それを戦艦に押し込み、タスクに積み込み、一応の完成を見せた。
まだ塗装すらされていない鈍色の戦艦、ハリネズミのようにタスクと本体に取り付けられた砲塔があらゆる角度から襲い来る敵を薙ぎ払う。
一騎当千は無理でも敵陣に突撃できる性能になっており、制圧力が高いのが特徴だ。
同時にタスクをジョイントしている間は速度も殲滅力も馬鹿高いので、使いどころを間違えなければ強力な武器になるだろう。
ただしめっちゃ金のかかった船なので、量産は絶対に不可能と言える。
専用機なら好き放題やっていいよね、と言う理由から無茶な注文投げまくった結果だな。
搭載機は俺のツクヨミ改に、クリス、良平、凛のスサノオ。
そしてクリスと良平が自前で持ってきた専用機もある。
要するにタスク前提のスサノオを使うか、専用機を使うかを選べる状況にしてある。
クリスのは別としてスサノオは変形合体機能があるからそんなに場所を取らねえんだよな。
予備パーツも含めると結構幅とるけど。
「で、こちらベッドルームです」
「あら、悪くないわね」
そう言って部屋の中を見渡すクリス。
悪くないというけど二人一部屋の、ベッドと机が備え付けられただけの部屋なんだよな……。
実際マットレスとかは空気圧で膨らませてる風船と同じなので柔らかくも硬くもできるけど、パイロット用の部屋としては一般的な物と大差ない。
ついでに言うとメカニック用の部屋も同じ作りになっている。
「それから食堂。貯蔵してある乾物だけでも乗組員全員が3年くらい暮らせるようにしてある。水は主に海水か、宇宙だと氷漬けになった小惑星からろ過する方式だな」
「なるほどね、ありきたりだけど一番単純な方法でもあるから万が一の時は対処できると」
「あぁ、それにタスク含めて心臓が複数あるからな。完全に動けなくなることはほぼないだろうし」
あり得るとしたらタスクを使い潰して脱出したはいいが、戦艦のリアクターまでトラブル発生で動かなくなった時くらいだろう。
元々宇宙での仕事は正式に軍に入ってからと言う事なのでそこまで心配する必要はないが。
「あとバッテリーを用意してあるから、いざとなったら複数のギアから充電もできるし、日頃から蓄電しておくこともできる。その辺の安全性考慮した結果居住スペースが少し狭くなってるんだけどな」
「いいんじゃないかな、生存性重視という事で」
良平はこの辺り生き残るという一点に特化させてるなぁ。
クリスなんかは主砲や火力に大はしゃぎしているが……男女逆じゃねえかなと思ったけどいいや。
凜は物珍し気に中を見回している。
まぁ普通戦艦の中とか入らないもんな。
金持ちか軍人くらいな物だ。
「お兄ちゃんはやけに落ち着いてるね」
「そりゃ設計に関わってたからな。どうなるかは頭の中で組み立てられてた」
「なるほど……」
「ついでに言えば内装の一部は俺が口出しした。壁の緩衝材とか」
戦闘中にぶつかる事もあり得るからな。
机やテーブルの角なんかも気を使って緩衝材取り付けてるし、椅子だってレール上に固定して動かせるけど吹っ飛ばないようにしている。
食器類も基本的に割れないよう金属製をコーティングして陶器っぽく見せているだけだ。
「で、あの一角にあるのは?」
食堂の角を指さしたクリスがいぶかしげにたずねる。
「鉢植えに見せかけた空気清浄機。あれ一つで空気の循環がっつりやってくれるからリアクターが生きてる限り呼吸できなくなることは無いぞ」
「なんで鉢植え……?」
「無機質より良いだろ。安全性も性能もチェック済みだ」
小さなこだわりというやつだな。
まぁ難にせよ戦艦は完成した。
今はその事を悦ぼう。




