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嫁が最強スペックすぎて戸惑うんだが。  作者: tetoc
■ 嫁暗躍 編 ■
25/25

【22】俺と嫁とダン兄。

 

 久々に自分の許容範囲を超過した出来事がおきた翌日、レイリアはたった一晩で驚異的な回復を見せたと言う。


 何故、他人事のような話かと言うと、俺は謹慎中の身で自由はない。俺が散々レイリアを避けて、辛く当たったにも関わらず、弟の命を救ってくれた人の看病も出来ないなんてな。せめて看病と思っていたが、それは良しとされなかった。


 それに加え、翌日の朝から夕方まで部屋に居るように王命が下ったのもある。謹慎中で王命に反すれば下手すりゃ追放…色んな理由があってそれだけは避けたくて、俺は従うしかなかった。情けないったらありゃしない。


 たった一晩でレイリアは目を覚まし、起き上がれて、自分で飲み物を摂るくらいは出来るようになったんだと。それに、レイノルも浅くはあるが目を覚ましてはすぐ眠るを繰り返して居るらしい。


 そして、夕刻。レイリアに会うことが許された。

 部屋に入ると、ダン兄と起き上がってベッドに座っているレイリアが俺を迎えた。


 おい、待て。なんでまたメガネをかけてるんだよ。もうバレてるからいいじゃねえか。



「お許しを。先程まで関係のない者がいましたので。」



 …顔に出てたんだろうか?レイリアはそう言ってメガネを外す。すると、外したと同時に美しい容姿へと変わった。



「いや…うむ、すまん。」

「謝る必要はありませんよ。グレイズ殿下。」

「いや、しかし。」

「どうぞ、お気になさらず。」



 微笑まれた…。上品で可憐な様に思わず見とれてしまう。

 しかし、息も荒いでないし、顔色も良くなっているみたいだ。浮き出た血管も、腫れや斑点も随分と良くなっている。



「それはそうと、殿下。ダンより話は伺っておいでですか?」

「あ、ああ。」



 この場合、どんな反応をしたら正解なんだ?

 目の前のこの娘は、俺の妃ではない。殿()()として振る舞えばいいのだろうか。



「…左様でございますか。」



 と言うか、当然だろうが俺の知るレイリアではない。

 容姿も話し方もなにもかも。まるで、別人を連れて来たような感じがする。


 レイリアは、言葉を一旦区切り、ふと何かを考える素振りを見せてから、また俺を見る。



「殿下も私に尋ねたいことがありましょう。王命による重要任務ですので、全てをお話するわけには参りませんが…。」

「それよりもいいのか?そなたは良くなっているとは言え、まだまだ床に伏せる身。無理は禁物であろう。」

「何をおっしゃいます。話すことくらいは可能ですよ。」



 そう言って微笑むレイリア。何故だ、えも言われない雰囲気だ。…齢16とは言え、"D"を背負うだけはあると言うことか?単なる俺の考え過ぎか?

 でも、聞くべきではないだろう。俺に隠して任務をするくらいだ、その大部分は俺に話してはいけないものと推察できる。



「ご安心を。話していいこと、悪いことの分別は出来ますよ。」



 考え込んでいる俺を見て、レイリアから声が掛かる。

 この落ち着きよう…本当に16歳か?



「16歳ですよ。とは言っても、永きにわたり私の魂は父上の懐に抱かれておりましたので、精神的には殿下よりずーっと、おばあちゃんですが。」

「!」



 心を読まれた!?まさかそう言う力も持って?!



「頭は弱ると他の生物の想いに敏感だ。気ぃつけろよ、どんぴしゃで言い当てられっから。」

「え…。」

「こんな風に思っているのかなって程度ですよ。完全には感じられませんから。」



 ダン兄が補足を付け足したけど…。冷静に話したり思ったりするしかないか。

 俺は気を改めた。少しずつ聞いていこう、その方が俺も混乱せずに済む。



「父上とは?」

「…原初の神々を創り、この世を創った祖龍です。」

「…は?」



 創造神、最高神…そんな様々な呼び名が存在する偉大な神龍が…父だと?



「嘘ではありませんよ。私の魂は理の外で創られ、人に宿されましたから。」

「では…そなたは己自身を"神"だと申すのか?」

「"神"とは違います。半神でもありません。」

「と、言うと?」



 何かの宗教なのか?でもダン兄の様子からして、あながち嘘や妄言を並べているように感じられない。



「頭は"祖龍の愛姫"。この世に太平をもたらす者…祖龍様から全ての生き物への()()()だ。」

「"祖龍の愛姫"…!」



 どの説話にもある、祖龍の最期の予言に出て来る娘!

 …待てよ…、16年…16年前…!そうか!



「16年前。私が生まれた瞬間、2つの月は紅く染まり、すぐに元の色に戻ったと聞かされています。」

「それを見た世界中の有力者達は、"祖龍の愛姫"を血眼になって探した。愛姫を手に入れ、世界の中心たる存在になるべく。そして、その血脈を己がものにする為。」



 2人の言葉に固唾を飲む。知ってる。知ってるんだ。

 あの時、俺は12歳。城の中が騒然としたこと、我が国も"祖龍の愛姫"捜索に乗り出したんだから。



「それがお前…。」

「ええ。」

「何故、フローリアに?」

「幼い私は、生みの親である父に守られ、各国の手から逃げていました。」

「その父上ってのが、俺の前のお頭ってわけさ。」



 ん?()()()()()



「ダン兄、ちょっといいか?」

「ん?」

「俺の前の頭って?」

「言葉の通りだ。」

「や、そうじゃなく…。」

「ダンは"D"の頭目だったんです。現頭目が私、先代がダン、先々代が私の父なんですよ。」



 レイリアの補足で俺が知りたいことが分かった。なるほど…初耳なんだけど。ダン兄に視線を向けると、眩しいほどのいい笑顔が向けられる。ダン兄、笑って誤魔化したな。


 とりあえず話の先が分かったような気がする。



「父は私を守る為に命を落とし、父の遺言として、ダンの父上…フローリア軍が誇る大将軍だったファルゼンさんに私は預けられました。そして、ファルゼンさんがフローリア国王…殿下のお父上とお母上に私の正体を明かし、両陛下も私を秘密裏に保護して下さったのです。」

「…父や母も…。」

「ええ。私に何も強いることなく、温かく見守って下さいました。ファルゼンさんも、両陛下も…そしてダンも。私にとっては恩人です。」

「そなたの父上のことは残念だったな。母上は?」



 俺の問いに変な空気が流れた。なんだ?この…微妙な雰囲気。もしかして、聞いてはいけないことを聞いたとか?



「母は…命と引き換えに私を。」

「そうだったか…すまない。」

「お気になさらず。…なので、恩人たる両陛下の願いの元、私は貴方様のおそばに今いるのです。」

「…それだ、何故偽りで妃などに?」

「愚か者を排除する為と言っておきましょう。なので、殿下。変わらず私を妃と扱って下さい、あとは私が上手くやりますので。」

「それは…。」



 レイリアの真っ直ぐな目。どうやら反論や御託を並べたとしても突き通されそうだな。


「分かった。そのようにしよう。」

「ありがとうございます。くれぐれもこの事は誰にも気取られぬよう。」



 妃か…あれのこれの後でちゃんと扱えるのか謎なんだが…それに、なんだか申し訳ない。

 そんな俺をよそに、レイリアは瞳を伏せ、背中に立ててある大きな枕に背を預けた。表情は辛そうではないものの、顔色は悪い、無理をさせたか。



「大丈夫か?やはり無理は…。」

「大丈夫です。お腹が空いただけですので。」

「は?」

「本来は1週間かけてゆっくり良くなるんだよ、でも頭もぶっ倒れてらんねぇから、とんでもねえ早さで毒の処理をしたんだ。だから、力を使って腹が減ったのさ。エネルギーって大事だろ?」



 なるほど。解毒に使ってしまったエネルギーを補充しなければならないのか。



「ならば何か用意させよう。何か食べたいものは?」

「えっ…あ、いえ…ダンに用意をして…。」

「ダン兄も今は客人だ。そうだ、ダン兄も食って行くといい。」

「おう。俺はいいけどよ…。」



 ダン兄はレイリアを見る。それにつられて、俺もレイリアの方を見てみると、先程の真剣な様子とはかわって、とても複雑そうな表情をしている。


 …余計なことでも言ってしまったか?



「頭ぁ、腹をくくるこったな。」

「やです。ダンがいいです。」

「ワガママ言うなって。用意してもらえ。」

「むっ…でも…。」



 レイリアと視線があう。



「はははっ!なーんだぁ?牛みてーにえげつねえ量を食いまくるのを気にしてんのか?」

「ちょ、ちょっと!ダン!!」



 は?牛みたいに食べるだと?この娘が?



「牛…みたいに?」

「ち、違います!違いますからね、殿下!そんなに食べません!ただ、ほら、その!力が足りないので特別たくさん食べるだけで…いつもは普通なんです!」



 顔を真っ赤にしながら必死に俺に言い訳をしてくるレイリアがなんだか可愛いんだが…。



「そのめちゃくちゃ食う時がえげつないって話だろ?俺の3人分はかっ食らうじゃねえか、グレイズの前だからって恥ずかしいのかー?」

「ちょっ、ダン!デリカシーがないですよっ!!」



 ダン兄の3人分…え?めちゃくちゃ食わねえか?

 ダン兄がよく食うのは知っている。3kgのステーキをぺろりと平らげたところを見てるから……9kg…?え?食うの?9kgの肉を?レイリアが?



「分かった。ダン兄の3人分を用意させればいいんだな?」

「じゅ、十分すぎます!むしろ減らして…。」

「3人分で足りんのか?頭。」

「ダン!!!」

「ははははっ!」



 これはきっと、いつものやりとりなんだな。

 想像もしなかったが、人間味のある奴じゃないか。よし、そうと決まれば…。



「では、用意してもらえるよう手配をしてこよう。」

「殿下自ら行かれるのですか?」

「ああ、ダン兄もいるし。食事の用意を頼んだらレイノルの様子も見に行きたいからな。食事は2人でとってくれ。」

「分かりました。明日にはもっと良くなっていると思いますので、私もレイノル殿下のところへ参ります。」

「そうしてやってくれ。では…。」



 そう言って俺は座っていた椅子から立ち上がった。


 2人に見送られ、部屋を出て近衛兵達と歩いている中、すれ違ったメイドに食事の用意を頼む。


 …まだ整理が出来ていないが、俺がレイリアにひどい事をして来たのは変わらない。それに対しての謝罪を含めて、これからはもっと彼女を気遣おう。それが、今俺が出来ることなんだから。


 その後、レイノルの所へ出向いた俺は、丁度起きていた弟と軽く会話を済ませて部屋に戻ったのだった。





【22】俺と嫁とダン兄。END.

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