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嫁が最強スペックすぎて戸惑うんだが。  作者: tetoc
■ 嫁暗躍 編 ■
10/25

【08】ダンと双子と変態野郎。

 

 ヒョルリーナ公国とフローリア王大国の国境に位置する、切り立った崖の上にダンの姿があった。高さが70mを超える崖にも関わらず、ダンは崖から足を放り出して座っている。

 この崖を下りた先がヒョルリーナ、今ダンがいるのはフローリア領内だ。


 辺りは暗く、2つの月明かりが煌々と夜の森を照らしていた。



「父さん、あれが…。」



 フローリア側の森の中から1人の少年が足音も立てず出て来て、父親でもあるダンの隣に腰掛けた。

 言葉と共に少年の目は、少し離れた位置に見える、人工の明かりを捉えている。



「ヒョルリーナの国境警備の詰所だな。丁度あの辺りに川が流れてて、そこから向こうがヒョルリーナ領だ。」



 息子の言葉に腕を挙げ、話しながら国境を描くように指を動かして見せた。

 息子は静かに頷くだけで、言葉を発さない。その様子にダンは、ふっと笑みを浮かべて息子に語りかける。



「どうだ?アヴィ、国境は。」

「…思ってたより寒い、かな。フローリアのすぐ隣の国なのに寒いんだね。」

氷結竜(アイスドラゴン)が渡りをするこの時期は仕方がねえさ。ヒョルリーナは、氷結竜達がワタリをする経路のど真ん中、しかも合流地点だから、どうしても気温が低くなる。」

「ドラゴンってそんなに影響力があるんだね。」

「そうだ。上位のドラゴンともなりゃ、簡単に地形を変えるほどの力を持ってる。」

「すごいよね。でも、父さんは戦ったことあるんでしょ?上位のドラゴンと…名前なんだっけ。」



 息子であるアヴィからの言葉に、過去の記憶が浮かび、ダンは苦い笑いを浮かべる。



「ラフィティトゥ。戦ったっつーより、その姿を見ただけだ。ただでさえ、希少でバカ強い上、名前持ち(ネームド)の天空龍だ。天空龍のことは覚えたか?」

「うん。」

「言ってみな。」



 ダンの言葉に、アヴィは眉間にしわを寄せ、次の瞬間には、何かを諦めたのか渋々と言った様子で口を開いた。



「えっと。確認されている個体数は6体。数千年生きると言われていて…雌雄一体。それから死ぬ間際に卵を1つだけ産んで死ぬから数は増えないし、減らないと考えられていて。んと…あとは…。」

「全長約120m。幼体の時は地上で生活するが、成熟する頃には、飛行能力を得て、雲の上を飛んで生活する。それ以降、地上に降りてくるのは、一生を通して産卵時と死亡時のみ。」



 アヴィのあとを続けるような説明が背後から聞こえた。2人が振り返ると、そこには1人の少女の姿があり、彼女は説明を続けながら2人に歩み寄って、ダンの空いている側に腰掛ける。



「天候を操ると言われていて、攻撃手段も風や雷、どれもとても強力。…中でも名前持ちは氷も扱うこともでき、かなり手強い相手。天空龍を討伐した記録は、世界でも3件しかあがっていない。…だっけ?」

「流石だな、ラヴィ。」

「これくらい出来て当然よ、父さん。」

「ラヴィ!俺が説明してたのに!」

「だったらスラッと言いなさいよねー。」

「なっ!?妹のくせに生意気だぞ!」

「だったら妹に負けないように頑張ったらー?()()()()()。」



 自分を挟んで口論する子供達に、ダンはやらやれと言った様子だ。

 ほんの数秒、ダンは子供達を見守り、両手を挙げ、拳をつくった次の瞬間。



「「いっっ!!!」」



 子供達の頭にゲンコツが落とされた。

 子供達は、ほぼ同時に頭をおさえ、涙目になっている。



「お前らな、おててを握って優しく"喧嘩しちゃいけませんよ"って言われてえのか。"D"になりたいんだろ?その為に任務中は他の隊員みたく、厳しくしろって言ったのはどこの誰だ?んん?」

「俺達です…。」

「私達です…。」

「だったら、副長である父さんの手を煩わせるな。」



 ぐうの音も出ないらしい子供達にため息をついた。


 そもそも、隊の新人達からすると副長であるダンと一緒に任務につけることは、とんでもなく光栄なことであり、恐縮なことなのだ。

 そんな中、息子と娘を任務に同行させるあたり、ある意味甘やかしていると言う事実に、ダン自身気付いているのか、なんだか心中複雑な様子である。



「アヴィくんとラヴィちゃんが?」

「連れてけってうるさいんだよなぁ。」

「連れて行ってあげたらいいじゃないですか。」

「でも、あいつらまだ12歳だぜ…?」

「私は13歳で天空龍を単独で相手にしましたが。」

「いやいやいや。頭と一緒にしちゃなんねえって。」

「12歳は確かに子供です。でも、頼りないながらも、12歳なりに考えて行動が出来きます、ましてや、それらが出来ない大人だっているくらいです。色んな経験をして、色んな壁にぶつかって悩んだり、挫折したり。克服したり。…2人にはいい経験になるんじゃないんですか?頼りになるお父さんもいますしね。」



 レイリアにそう言われたことを思い出す。

 あの人と自分の子供達を一緒に考えてはいけないと考えるものの、ダンは子供達の考えを尊重して同行を許したが、やはり不安は残っているようだ。



「ねえ、父さん。レイリア姉ちゃ。」

「レイリア姉ちゃんじゃなくて、お頭だよ。アヴィ。」

「あ、お頭って天空龍を倒したんだよね。」

「…正確には倒しちゃいない。天空龍は倒しちゃいけないからな。宥めて、空に帰したんだ。」



 ダンの脳裏に、その時の光景が浮かんだ。

 新たな伝説として語り継がれたであろう、あの事件は1人の少女の意向で歴史に刻まれることはなかった。


 どこまでも青い空。大森林の半分以上の木々がなぎ倒され、所々火がたっていた。

 その中心地に静かに根を下ろしていた黒神木の上に佇み、目の前の純白の巨大な龍に手を差し伸べている姿。

 天空龍が暴れていると言う情報に、各国が軍を進め始めた頃。少女は、天空龍を空へと帰した。

 軍が到着した頃には、少女と龍の姿もなく、各国は天空龍の気まぐれで事が起こり、終息したと結論づける結果となった。


 ダンはあの光景を忘れない。いや、忘れられない。

そんな中、娘のラヴィが言葉を発する。



「ねえ、父さん。どうしてヒョルリーナの国境付近に来ているの?」

「ん?簡単だ、そろそろ変態が来るんだよ。」

「変態…?」

「そら、来たぞ。」



 一瞬、空に流れ星のような閃光が走ったかと思えば、空から人が降って来た。

 その人物は、結構な速度で落ちてきたものの、ダン達の背後に華麗に着地し、何事もなかったかのように立ち上がった。



「レナートさんだ!こんばんは!」

「お久しぶりです!」

「お?双子ちゃん達じゃん、久しぶりー。どれぐらいぶりだっけ?」

「もう1年くらいですよ。」

「マジ?どーりで背が伸びてるわけだわー。」



 子供達はすぐに立ち上がり、各々挨拶をする。レナートと子供達の会話は、近所に住まうお兄さんと、それを慕う子供達と言った感じで和気藹々としている。

 ダンも立ち上がって、子供達と会話する同僚を出迎えた。



「よお、レナート。」

「うっす。ダン先輩。」

「ちょくちょくやり取りしてたが、会うのは久しぶりだな。」

「そうっすね。どれぐらいぶりっすか?」

「俺がギルメキアに行く前に一度会ってるから…軽く3ヶ月ぶりだな。」

「うへぇ…もうそんな経つんすか。」



 彼の名前はレナート・ゼノブレイド。

 世界一の暗殺者一族と名高い、ゼノブレイド家の跡取りである。その実力は諸国の王を震え上がらせ、名だたる将達を不安に陥れる程度。

 金髪の髪に青い目、甘いマスク、グレイズに負けず劣らずのイケメン、顔面偏差値が高い部類だ。



「お前達、先にベースキャンプへ戻っていなさい。」

「「はーい。」」

「返事は短く。」

「「はい。」」



 ダンの申し付けに子供達は、ベースキャンプがある素直に森の中に入って行った。その様子を見届けた後、ダンはレナートの方を見る。



「で、クィナリスの様子はどうだった?」

「あー…どうやらヒョルリーナの事を嗅ぎつけたみたいっすよ。軍の上層部が連日会議を。」

「攻め込む気配は?」

「ないっすね。なんの才覚も持たないあのヘタレ王国がヒョルリーナを落とすなんて無理でしょう。例え、ヒョルリーナが弱体していたとしても。」



 レナートはベルトに取り付けていた水筒を手に取り、蓋を開けて水を飲む。その様子を見ていたダンは、ため息にも似た短めの息を漏らした。



「じゃあ、頭の描いた通りに…。」

「っすね、お頭が言っていた通りになりそうっす。このままじゃ、クィナリスも弱体化っすね。」

「その為にギルメキアやルミナと密にやりとりしてるってか、うちの頭は怖いもんだ。」

「たった3年でコレっすもんね。」

「頭には頭が上がんねえわ。」

「お?ダジャレっすか?」



 そんな気が全くなかったダンは、レナートの指摘に先程よりも明確なため息をついた。そして、レナートの臀部をまあまあな勢いで蹴る。

 完全に気を抜いていて、すっ飛んだレナートは、地面に四つん這いになって、右手で蹴られた部分をおさえている。



「っーー…なにするんすか!!」

「気ィ抜いてんなよ、レナート。」

「ケツ、ケツが…割れる…俺のプリケツが。」

「尻はハナっから割れてんだよ、バカタレ。」

「痛いのは嫌いっす…。」

「嘘つけ。頭にぶっ飛ばされていつも喜んでるじゃねえか。」



 レナートが勢いよく立ち上がって、すごい勢いで振り返る。



「オッサンの蹴りはスイッチが入らねぇっす!お頭に叩かれたり蹴られたり、踏まれたりするのが快感なんすよ!!!」

「…ドMクソ変態野郎だな、お前…。」

「あわよくばお頭にピンヒールをはいてもらって、グリグリ踏まれたいっす!!」

「……なんかムカつくし、なにより教育的指導の為に、もう一発蹴るか殴る。」

「ちょっ…!?」



 間髪入れず、ダンは懐に潜り込むように姿勢を低くして、レナートとの距離をつめた。

顎に向かいハイキックを繰り出すが、レナートはギリギリで反応し、体を反らせてダンの繰り出した蹴りを回避した。

 それを予想していたダンは、身を回転させレナートの胸部めがけて蹴りを入れるものの、スイッチが入ったレナートはそれをいなし、身を反転させ勢いを乗せた裏拳をダンの頬に躊躇いなく振るった。


 裏拳はヒットしたように思えたが、ダンはレナートの手首を掴み、動きを拘束した上で、初手よりもはるかに速く、レナートの脳天に手刀を叩き込んだ。


 1秒程度の時間での攻防に、地面に落ちていた落ち葉が巻き上がって、再び宙を舞い落ちていた。



「あで…っ!!」

「腕が落ちたか?ゼノブレイドの()()()()。」



 拘束していた手首を離し、ダンは勝ち誇った様子でレナートを見た。レナートは手刀をくらった部分を撫でながら恨めしそうにダンを見る。



「あのね、10人の偉大なる達人(グレート・マスター)に数えられてるダン先輩を相手に闘ったら、みんなこんなもんっすよ!」

「んなこたねーよ。頭が相手だったら、1秒足らずで負ける自信があるわ。」

「つーか、お頭に勝つことが出来たら神名乗っていいと思います。」

「お前、10秒間好きに攻撃させてもらって1発もかすりもしねえで、頭が反撃を開始して0.5秒で地面とキスしてたもんな。」

「……あの時のお頭の顔面にめり込む蹴りのお陰で、新たな扉を開けたんすよねえ。蹴り飛ばして、空中で一回転させて、顔面が地面に打ちつけられるのを計算するお頭のドS具合、最高っす。」

「……お前…あの時、本当は頭打ったんじゃねえのか…?」



 毎度のことながらレナートの変態具合を心配するダンだったのであった。




【08】ダンと双子と変態野郎。END.

■ アヴィ&ラヴィ 12歳

ダンの所の男女の双子ちゃんです。アヴィがお兄ちゃん、ラヴィが妹。2人共、レイリアに憧れてDの一員になることを決意。ダンから英才教育を受けているので、やっと見習いになれたみたいです。

アヴィはちょっと甘えん坊で少し頼りないですが、心根は優しい子。

ラヴィは優等生、しっかり者ですがちょっぴり頭でっかちなところがあります。



■レナート・ゼノブレイド 27歳

世界的に有名なゼノブレイド本家の嫡男。美形なお兄さんで、黙っていたらイケメン。

誰かの下に下ることをしない孤高の一族ですが、彼は違うらしく、レイリアの為にDへ入隊。

レイリア命ですが、彼にとってレイリアは恋愛対象ではなく、アイドルのような者。むしろ崇め奉り、レイリアの素晴らしさを世に広める為に生きています。

嫁さんもいるのですが、夫婦揃ってレイリア熱狂者。

変態と呼ばれていますが、実力はかなりの者。


彼が国内にいると聞いた有力者は、不安や恐怖で普段の生活が送れないとか。



■偉大なる達人(グランドマスター)

世界的な武芸の達人が名を挙げられています。

ゼアル国王やダンもその中に名を連ねていて、ダンが一番若いです。

それぞれ、一騎当千の力を誇っていますし、大勢の弟子をとるものも。彼らを手に入れようとする国もあるらしいです。

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