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嫁が最強スペックすぎて戸惑うんだが。  作者: tetoc
■ 嫁暗躍 編 ■
9/25

【07】俺と嫁と宣言。

 

 ルーリス殿。全12部屋で、各部屋も狭く、かなり小規模な屋敷…いや、殿だ、一応。

 大城の中に、日和の中庭と呼ばれる庭があるんだが、その庭内にルーリス殿が建てることが出来るほど小さい。


 俺とレイリア、執事1人と侍女4人。合計7人で、1ヶ月間、ルーリス殿で生活をするわけだ。

 親父とオフクロが取り決めた3ヶ条の下でな。


 1つ、1日1度は必ず会うこと。

 2つ、1日1度は一緒に食事をすること。

 3つ、喧嘩はしないこと。


 因みに伽だのなんだのとか、一緒に寝ろとか言われたがここは猛反発した。両親も段階をすっ飛ばすのではなく、段階を踏ませることを最優先させたのか、渋ってはいたものの譲歩してくれたわけだ。



 朝。飯。対面にはレイリア。朝の挨拶はした。

 パニーニのような朝食を、ナイフとフォークを使いながら黙々と食べる。



「あ、あの、殿下…。」



 あまり食が進んでいないレイリア。なんだとばかりに彼女を一瞥し、すぐに手元に戻す。



「その…あ…昨日の昼下がりに、ルーリス殿の周りを散策…してみました。」



 俺の様子に気まずそうにしながら話しかけてくる。

 まだ4日とは言え、かなりあからさまな態度をとっているんだが、コイツ…めげねえな。



「木苺が、なっていまして…。その、野生の…。」

「だからどうした?下らん話は好かん。」

「も、申し訳ありません…。木苺を食されるかと…。」

「フローリア次期国王の私にそれを食せと?」

「あ…、申し訳ありません…。」



 そしてまた沈黙が。レイリアは食事の手を完全に止めてしまった。俺の侍女もかなり気まずそうだ。

レイリアを転ばせてしまった一件から、彼女の侍女達の俺への反応は、かなり事務的になっている。まあ、当たり前だろうな。



「もういらないのか。」

「その、…食欲が…。」

「ならば、部屋に戻って休めばどうだ?」

「ですが、殿下はまだお食事を…。」

「辛気臭い顔を眺めながら食事をしたくないと言っているのが分からんのか。」

「……っ。失礼致します、殿下…。」



 レイリアは言葉を詰まらせた後、おずおずと立ち上がってテーブルの脇に立ち、ドレスの裾を持ち上げ、俺にお辞儀をした。

 俺からの返答を待っていたのか、少しの間お辞儀をしたままだったが、侍女に促されて自分の侍女達と共に部屋を出て行った。



「…良かったんですか?殿下。」



 不安気に訪ねてきたのは、執事のルーク。

 流石に公的な所に出たら違うが、昔から知っている為、口調は大体こんなもの。



「構わんさ。飲み物を。」

「ただちに。」



 いいんだ。この数日の間で、考えをまとめることが出来た分、今は顔を見たくない。


 そう、ちゃんと考えた。

 まず、避けていた理由は、先に述べていた通り。あの時点でならやり直せていたのかもしれない。けれど、アイツが俺を謀殺する可能性を見出し、避けると言うよりは、警戒する対象になった。

 元より印象がよくなかった分と、自分を殺す算段を立てている可能性が合わさり、ルーリス殿での生活を命ぜられたあの日…どうしても、自分に媚びているように見えた。


 全てが全て俺の機嫌をとって、とりいろうとしているようにしか見えなくて、警戒する対象と同時に嫌いな者になった。


 アイツに触れられた時、自分でも自覚していなかった、何かを塞き止めていたものが壊れた。そこからは負の感情が湧き上がって仕方がない。

 言っておくが、ここまで誰かを嫌うなんてこと今までなかったんだぞ。


 そりゃ生きてりゃ苦手な者は出てくる、これは仕方がないことだと思う。だが、そう言った者達とも、それなりに上手く付き合って来た。でなければ、王位継承権の第一位を獲ることなんて出来ないんだ。

 ましてや、それらが認められ、次期国王になることなんて出来ない。


 不思議なほど、俺はアイツが嫌いだ。


 そう考えながら食事を終えると、タイミングを見計らい、ルークが俺のそばに来て、小さく耳打ちをする。



「殿下。ダン様が応接間においでです。」

「…分かった、すぐ行く。」



 ヒョルリーナの件を調べに城を出ていたダン兄が帰って来たのか。

 部屋の時計を見ると、8時半を回ったところ…どうやら、帰って来た足でここに来てくれたか。


 俺はダン兄の所へ向かうべく、席を立った。



 ────────

 ──────

 ────



 もうすぐ20時。

 俺は険しい顔をしながら廊下を歩いていた。



「このハンカチの家紋(エンブレム)がローズブレイド家のものだと!?本当なのか、ダン兄!」

「ああ。…しかも、ローズブレイド家を調べたら表向きはしっかりしてるんだが…。お前も聞いたことあるだろ?ゼノブレイドって。」

「ゼノブレイド家…世界的に悪名高い闇の一族…。」

「ああ、ローズブレイドは、ゼノブレイドの隠れ蓑かもしれないんだ。」



 応接間で、そうダン兄から聞いたこと。

 親父とオフクロに進言しようと思ったが、ローズブレイドがゼノブレイドの隠れ蓑と言う確証は得ていない中で、進言するのはかえって危険と判断した。


 アイツは、俺の愛人やその身の回りの者、更に関係のない者の命を奪った者なのか…それとも奪った者と深い関わりがあるのか。しかも、それだけじゃ飽き足らず、俺の命まで狙っているのか…なんて奴なんだ…!


 アイツの部屋の前で足を止め、腰に携えて来た剣の柄を強く握った後、ドアを5回ノックした。すぐさまドアが開かれ、リリーと呼ばれていた侍女が顔を見せる。



「グレイズ殿下…!」

「レイリアに話があるのだが。」

「少々お待ちを…。」



 驚いた表情をされたが、構わず淡々と要件を告げた。

 ドアは一度閉められたが、すぐにまた開かれる。



「お入りください。」



 室内に入ると夕食を終え、食後の茶でも飲んでいた様子のレイリアがいた。この部屋には、レイリアとリリーの2人だけ…もう1人の侍女は湯浴みの準備か何かか。

 俺の入室と同時に立ち上がり、お辞儀をするレイリアを見た後、ドアを閉め、傍らに佇むリリーを見る。そして、すぐにレイリアの方を見た。

 まあ、侍女の存在は別段気にしなくていいだろう。



「このままで結構。すぐに終わる話だ。」

「なんでしょう…?」

「何、これからのことを考え、そなたに宣言しておこうと思ってな。」

「宣言、ですか…?」



 瓶底メガネのおかげで、少々分かりづらくはあるが、不安と緊張が混ざったような声色のレイリア。

 そんな彼女に構うことなく、口を開く。



「レイリア。私はそなたを妻と認めぬ。」



 簡潔に述べると、彼女はショックを受けたのか言葉すら出ないようだ。そんな彼女に構わず、俺は言葉を続ける。



「ルーリス殿で、そなたと共に過ごすことは我慢しよう。だが、それ以降は私の好きにさせてもらう。それに対しての口出し受け付けぬ故、腹にすえておけ。」

「し、しかし…私は…。」

「分からぬか?私の妃の座は、妃候補の者達から選ばれた者のもの。湧いて出て来たようなそなたを妻として認めたくない。」

「で、でも…!私は殿下の妃です…!」



 ほう、俺に食い下がってくる根性は認めてやる。



「そうだ、妃として好き振る舞え。だが、王家の名を傷付けたり、俺の妻として振る舞うことは決して許さぬ。」

「そん、な…。」

「残念だな、レイリア。俺はそなたの()()()()()()()()()。話はそれだけだ、失礼する。」

「殿下…!!」



 そう言って、侍女が反応する前にドアの方を向き、自分でドアを開け、部屋を出た。


 お前の思い通りになんてならない。絶対に。




 ────────

 ──────

 ────



「"思い通りにならない"…思いっきりなってるじゃないですか。」

「リリー。」

「すみません、お頭。」



 グレイズが部屋を出て数分、何もなかったかのようにお茶を飲むレイリアとリリー。

 レイリアはリリーが放った言葉に肩を竦めさせた。



「リリー。」

「なんです?」

「ギルメキアのゾディアス陛下に連絡を。」

「珍しいですね。なんて連絡するんですか?」



 もったいぶるように、紅茶を数口飲んでからレイリアはリリーを見て、くすりと笑った。



「1ヶ月後に()()()()()()と。」

「あの方なら喜んで飛んで来ますよ。」

「そう、飛んで来て欲しいんです。ここ、フローリアまで。」

「……へ…?」





【07】俺と嫁と宣言。 END.

※私的メモ その1。

独自の世界観を出す為に、呼び名や常識などなど、様々なもを、伝わる範囲で、この作品用に作り替えたりしています。あえての設定です。ネタバレはないように書いています。



■ 呼び方のあれや仕事のこれ。


▶︎フローリア王大国 王家の敬称。

国王⇒国王陛下、陛下。

王妃⇒王妃陛下、王妃様。(王がいない時女王陛下)

王子⇒王太子、殿下、王子様。

王女⇒王女、殿下、姫様。

フローリアでは、その他王族に関して、様や陛下を用いられるのが一般的とされている。

フローリア王家のみ特別視され、その他の一族への敬称は、結構雑なのかも知れません。



▶︎グレイズのお仕事。

王位継承権利者としての仕事とはガラリと変わり、今は次期国王として、勉強もかねて様々な仕事をしています。別邸に逃げているだけでなく、国内の情勢や他国の情勢、帝王学の再教育、国王になった時の役割等々。

今はかつて習ったことも含めて、お勉強期間。これが済むと、各国や自国領の訪問や、政治に関わっていきます。

現在は、王位継承権利者の時からのお仕事である、軍関係の執務も、次期国王としての教育を優先させる為に緩和中。



▶︎紅銀の月"D"のあれこれ。

実は、どこの国にも属さず、活動している部隊です。こう見えて長く続いていて、400年近くの歴史をもっています。世界各国にアジトはありますが、地図に載っていない島を本拠地としています。

元はなんでも屋に近い戦闘集団。首領、頭目やお頭などの呼称は、昔の名残り。因みにレイリアの前の頭はダンです。

現在は、レイリア自身の役割の為に各自奮闘中。

そんな彼らが何故フローリアにいるかは、たまたま紅銀の月が出来た地であり、たまたま本拠地にも近く、レイリアが現在フローリアで仕事をしている為です。

本来、レイリア自身もあちこち飛び回っている身です。


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